ファウストの劫罰[全4部]ベルリオーズ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

H. Berlioz, La Damnation de Faust 1844~1846

ファウストの劫罰[全4部]ベルリオーズ作曲


登場人物❖

マルグリート(Ms、S) ファウスト(T) メフィストフェレス(BrB) ブランデル(B) 天使の声(S)


概説

 ベルリオーズはゲーテの「ファウスト」を知るとすぐに作曲を試みたが、のちに構想を新たにして作曲されたのがこの作品である。作曲中の一八四五年ハンガリー演奏旅行に際して書いた「ラコッツィ行進曲」(「ハンガリー行進曲」)は、もとは独立した曲だったが、好評だったためにあえて原作の設定を変更して冒頭場面に挿入した。

 なお、この作品は演奏会用の劇的物語として書かれたが、オペラとしても上演される。

第一部

 

 ハンガリーの平原。年老いたファウストは一人はるかに広がる平原の丘に佇(たたず)んで、過ぎ去った年や自然に思いを馳せている(モノローグ「冬が去り、春が巡り来れば」)。若い村人たちが歌や踊りに興じるが、ファウストは彼らの若さに嫉妬する。遠くからハンガリー兵士たちの出征の行進曲の音が聞えてくる。


第二部

 

 ファウストの書斎。人生に絶望したファウストは毒を仰いで死のうとしているが、その勇気もなく躊躇(ちゅうちょ)している。その時教会の美しい鐘の音がして、復活祭の合唱が聞こえるので、ファウストは再び生きる喜びを取り戻す。

 そこに突然飼い犬に導かれて悪魔メフィストフェレスが現れる。ファウストは言葉巧みにファウストに語りかけ、彼が望む通りの若者の人生を楽しむことをかなえる契約を結ばせて彼を外に連れ出す。

 場面はライプツィヒのアウエルバッハの地下酒場に変わる。学生たちは馬鹿騒ぎをしている。仲間に誘われてブランデルが毒を盛られて死んだ「鼠の歌」を歌い、皆もそれにつられて歌う。ファウストも「のみの歌」を歌ってそれに続くが、気が滅入った彼はこの雰囲気に溶け込めずに、メフィストフェレスとともにその場を去る。

 場面はエルベ河のほとりの森と野原に変わり、ファウストはバラ園に若者姿でまどろんでいる。メフィストフェレスは妖精たちに愛の歌を歌わせ、夢の中でファウストにマルグリートの幻を見せる。妖精たちは美しい「妖精の踊り」を踊る。

 目を覚ましたファウストは、メフィストフェレスに夢に見た彼女に会いたいと言う。メフィストフェレスは、彼は悪魔の術中に落ちたとほくそ笑み、彼女が住む町に案内しようと言う。そこに通りかかった学生たちと兵士たちの合唱が聞こえる。

第三部

 

 マルグリートの部屋。マルグリートの留守中に、メフィストフェレスの手引きでマルグリートの部屋に忍び込んだファウストは、その清楚な部屋に感動して歌う(「ありがとう、黄昏よ」)。人の気配がするので、二人は物陰に隠れる。

 ランプを手にしたマルグリートが戻って来て、昨夜夢で見た恋人に切ない恋を予感しながらバラードを歌って心地よい眠りにつく(「トゥーレの王」)。メフィストフェレスが姿を現し、鬼火たちを招集してマルグリートの家の中庭で踊らせる(「鬼火のメヌエット」)。メフィストフェレスは自らセレナードを歌って姿を消す。

 ふと目を覚ましたマルグリートは夢で見た恋人のファウストが立っているのに驚き、二人はたちまち恋に落ちて高らかに愛の二重唱を歌う。そこにメフィストフェレスが割り込んで来て、夜が明けるのでもうここから立ち去らなければならないと告げてファウストを連れ去る。しかし時すでに遅く、近所の人にマルグリートが男を連れ込んだことを目撃される。


第四部

 

 マルグリートの部屋。マルグリートは紡ぎ車を回しながら、ファウストのことが忘れられずに想いにふけっている(ロマンス「燃える恋の思いに」)。学生たちと兵士たちが通り過ぎる。

 場面は変わって、森と洞窟のある荒涼とした風景となる。ファウストは一人歌う(「自然への祈り」)。そこにメフィストフェレスが現れて、マルグリートが絶望のあまり母親に多量の睡眠薬を飲ませて殺してしまった罪で死刑になったと伝える。

 ファウストはメフィストフェレスに彼女を助けるように頼む。すると彼はその見返りとして、ファウストの魂をメフィストフェレスに売り渡して死後も自分に仕えることを求めるので、ファウストはその契約書に署名する。メフィストフェレスはただちに馬を召喚し、二人はそれぞれ馬に乗って地獄へと馳せる(「地獄への騎行」)。そこでは妖怪たちがうごめき騒いでいて、そのグロテスクな風景にファウストは恐怖心が湧き起こる。ファウストの恐怖の悲鳴とは対照的に、メフィストフェレスと悪魔たちの勝ち誇った声が響く。

 最後の場面は再び地上に戻る。天上からの美しい天使たちの声が聞え、マルグリートの魂は祝福されて昇天する。

 

Reference Materials



初演
1846
12月6日 パリ・オペラ・コミック座

原作
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/「ファウスト」のド・ネルヴァルのフランス語訳本

台本
エクトル・ベルリオーズ/フランス語

演奏時間
第1部15分、第2部42分、第3部35分、第4部29分(ミュンシュ盤CDによる)

参考CD
● ダンコ、ポレリ、サンゲル、グラム/ミュンシュ指揮/ボストン響、ハーヴァード・グリークラブ(RCA

● ユーイング、グヤーシュ、ロイド、フォルツ/インバル指揮/フランクフルト放送響、ケルン放送唱(DEN

参考DVD
● カサロヴァ、グローヴズ、ホワイト、マッコ/カンブルラン指揮/ベルリン国立歌劇場管・聖セバスティアン・ドノスティアーラ(Art


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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