ユダヤの女[全5幕]アレヴィ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J-F-F-E. Halévy, La Juive 1833~34

ユダヤの女[全5幕]アレヴィ作曲


登場人物❖

ラシェル(S) 王女ウドクシー(S) エレアザル(T) レオポール(T) 枢機卿ブロニ(B) ルジェーロ(Br)他


概説

 アレヴィはマイアベーアと並んで十九世紀中葉のフランス・グランド・オペラ全盛期を代表する作曲家だった。

 30曲以上のオペラを作曲したが、その中でも「ユダヤの女」はヨーロッパ中を熱狂させた名作であり、今日に伝わるアレヴィの唯一のオペラとしてしばしば上演される。

 
ユダヤの女.png
「ユダヤの女」

第一幕

 

 1414年のコンスタンスの町の広場。レオポール王子が率いる軍隊が異教のフス教徒を倒した祝日に人々は教会に集まっている。しかしユダヤ人の金細工師エレアザルは祝いに反抗して仕事を続けているので、エレアザルとその娘ラシェルは刑場に連行されて司祭ルジェーロから死刑を宣告される。かつてローマの元首だった枢機卿ブロニは、その宣告を破棄してエレアザルの反発心をなだめようとするが、彼はかえってブロニ卿を憎む。

 一方レオポールは、王女ウドクシーと婚約しているにも拘わらず、サムエルと名乗るユダヤの若者を装ってラシェルに恋している。エレアザルとラシェルを見つけた人々は、エレアザルを湖に投げ込もうとするが、レオポールがそれを止めさせる。ラシェルはサムエルがなぜ群衆を服従させる権力があるのかと訝(いぶか)る。皇帝が現れるので、変装が露見するのを恐れたレオポールは姿を消す。

 

第二幕

 

 エレアザルの家。過越節の祝いで人々が集まっている。聖なるパンが配られると、サムエルがそっとそれを捨てるのにラシェルは気づく。その時皇帝の名のもとに扉が開けられるので儀式は中止され、皆は仕事をしているふりをする。

 王女ウドクシーが現れ、婚約者レオポールに贈るためにお忍びで素晴らしい宝石を買いに来たと言う。背を向けて仕事をしているサムエルは、ウドクシーの愛情の深さを知る。サムエルが一人になると、ラシェルは彼に何者であるかを問うので、今夜二人で会った時に明かすと言う。

 エレアザルが寝た後、ラシェルは一人サムエルを待つ。現れたサムエルは、自分がキリスト教徒であることを告白する。ユダヤ教徒とキリスト教徒が愛し合うことは禁止されている。サムエルはラシェルと一緒に逃げようと言う。

第三幕

 

 第一場 ウドクシーの居間。ラシェルが謁見を求めてやって来て、今日一日召使に使って欲しいと言うので、ウドクシーはその願いを聞き入れる。そこに現れたレオポールが落ち着かない様子なので、元気づけようとウドクシーは歌う(「わが愛しい殿」)。彼がすべてを告白してウドクシーの赦しを乞おうとした時、祝宴のラッパが鳴る。

 第二場 皇帝の豪華な祝宴の庭園。ウドクシーが買い上げた立派な宝石を持参したエレアザルが現れる。ウドクシーはそれをレオポールの胸に掛ける。そこにラシェルが飛び出してレオポールを告発し、この男はウドクシーの夫になる資格はないと言い、自分が共犯者だと明かす。枢機卿ブロニはレオポールを破門し、ラシェル、エレアザル、レオポールの三人は捕らえられる。


第四幕

 

 宗教裁判室の前の部屋。ウドクシーは牢獄に捕らえられているラシェルに面会し、レオポールの罪を打ち消して彼の命を救ってくれるよう懇願する。はじめは絶対に聞き入れなかった彼女も、ウドクシーの熱意に負けて自分一人で罪を負ってレオポールを救う決心をする。

 それを見ていた枢機卿ブロニは心を動かされて、エレアザル父娘に改宗を勧める。しかし復讐に凝り固まったエレアザルは、昔ローマで妻と娘を失った枢機卿ブロニに向かい、実は彼の娘はユダヤ人によって助けられたのだが、その真相は自分が死ねば永遠に知ることはないだろうと歌う(「ラシェルよ、主がお前の揺籃を私に与えた時に」)。外からは異教徒たちの断罪を求める声が聞こえる。

第五幕

 

 湖の前。釜茹の刑を見ようと人々が集まって来る。レオポールは赦されて追放され、エレアザルとラシェルが悔悟僧に導かれて来る。ラシェルはレオポールの無実を明かすが、キリスト教への改宗は拒否する。エレアザルは処刑されるラシェルを指差し、枢機卿ブロニに向かってラシェルこそ卿の娘だったと叫ぶ。枢機卿ブロニはその場に崩れ落ちる。

Reference Materials



初演 1835年2月23日 パリ・オペラ座

台本 ウジェーヌ・スクリーブ/フランス語

演奏時間
第1幕45分、第2幕44分、第3幕43分、第4幕35分、第5幕15分(下記CDによる)

参考CD
● ヴァラディ、アンダーソン、カレーラス、ゴンザレス、フルラネット/アルメイダ指揮/フィルハーモニア管、アンブロジアン唱(PH


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



 


◀︎◀︎◀︎ アフリカの女            ファウストの劫罰 ▶︎▶︎▶︎



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