アフリカの女[全5幕]マイアベーア作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

G. Meyerbeer, LÅfAfricaine 1865

アフリカの女[全5幕]マイアベーア作曲


登場人物❖

ヴァスコ・ダ・ガマ(T) ドン・ディエゴ(B) イネス(S) アンナ(Ms) ドン・ペドロ(B) ドン・アルヴァーロ(T) セリカ(S) ネルスコ(Br) ブラーマ教の大司祭(B) 宗教裁判長(B)

概説

 マイアベーア最後のオペラであり、グランド・マナーらしいスケールの大きさが特徴的である。作曲された当時のアジアに対する異国趣味が反映されているが、今日的な感覚からすると時代がかっている。とはいえ情緒豊かな作品として、海外では上演されることも少なくない。

 

第一幕

 

 15世紀を迎える直前頃のリスボン王宮内の広間。海軍提督の娘イネスが、探検に出かけている恋人ヴァスコ・ダ・ガマを想っている(「さらば故郷の岸辺よ」)。そこに父親の海軍提督ドン・ディエゴが現れ、娘のイネスにポルトガル長官ドン・ペドロと結婚するように申し渡す。ドン・ペドロもやって来て、インド航路発見のためにヴァスコなど一行が乗っていた船が難破して全員が行方不明になったと伝えるので、彼を愛するイネスは悲嘆にくれる。

 国王は議会を召集して、行方不明になった探検隊を捜索するための第二次探検隊の派遣を検討させる。そこにヴァスコがただ一人生き残って帰還したので、証人として召喚される。

 彼は遭難の模様を語り、アフリカの喜望峰を回っても新大陸に到達できる可能性を力説する。そして、アフリカで買った奴隷のセリカ(実はマダガスカルの女王)とネルスコがアジア人であることが証拠だと言う。地図を見た提督は、これさえあれば新大陸を発見できるとつぶやく。

 しかし議会は、宗教裁判長の主導によってその案を却下する。ヴァスコは頑迷な議会を批判するので、宗教裁判長は彼を不敬罪で逮捕する。


第二幕

 

 牢獄。ヴァスコが寝言でイネスの名を呼ぶのに嫉妬しながらも、セリカは静かに彼への愛を歌う(「ひざまずく私の前の太陽の子よ」)。そこにセリカに恋するネルスコが入って来て、寝ているヴァスコを刺そうとするので、彼女はヴァスコこそ命の恩人だと言ってそれを妨げる。

 不意に起こされたヴァスコは不機嫌に海図を見ているが、セリカはヴァスコが考えているよりも安全な海路を指し示すので、喜んだヴァスコは彼女を抱きしめる。ドン・ペドロとイネスが牢にやって来る。ドン・ペドロは、自分が探険隊の捜索隊長に任命されたと告げ、二人の奴隷を水先案内人に貰い受ける。そして、イネスがヴァスコを救うためにドン・ペドロと結婚したことを打ち明ける。


第三幕

 

 船の上。高官のアルヴァーロは水先案内人のネルスコの挙動に不審を抱くが、ドン・ペドロはそれに取り合わず、ネルスコの言うままに北に進路を変えて威勢よく海の伝説を歌う(「アダマストル、深海の王」)。そこにボートで近寄ってきたヴァスコが船に乗り移り、この航路は野蛮人が襲撃して来るから危険だと進言するが、ドン・ペドロはヴァスコを信用せずに、逆に妻となったイネスとヴァスコとの関係を邪推する。そして怒ったドン・ペドロは、ヴァスコをマストにくくりつけて殺そうとする。

 その騒ぎに船室からイネスとセリカが出て来る。セリカはイネスに短剣を突きつけてヴァスコを自由にする。その時ネルスコの合図でカヌーに乗った蛮族が乱入して、逃げ惑う白人を皆殺しにする。

第四幕

 

 マダガスカル島の海岸の神殿の前。セリカが女王としての戴冠を受け、ブラーマ神の掟に従うことを宣言する。ただ一人生きのびて捕らえられたヴァスコは、夢のように美しい島に感嘆する(「おお、美しいパラダイス」)。神殿から戻った大司祭たちは、白人でただ一人残っているヴァスコを殺そうとするが、神殿から出て来たセリカは彼の命乞いをして、命の恩人であるヴァスコと結婚することを誓い、もう外国人ではないから彼を自由にするように言う。

 証人を頼まれたネルスコは絶望するが、皆の前で二人の結婚を認める。ヴァスコとセリカの二人は愛を確かめ合い、祝いのバレエが繰り広げられている時、死んでしまったと思っていたイネスの歌声が遠くから聞こえ、ヴァスコは自分の耳を疑う。


第五幕

 

 第一場 マダガスカル島の王宮の庭園。辛うじて九死に一生を得たイネスが浜に着いて、駆けつけたヴァスコと再会を喜び合っていると、セリカが現れて裏切り者としてヴァスコを逮捕させる。イネスはセリカに、彼があなたの夫になったと打ち明けられていたところだと釈明して彼の助命を願う。セリカは二人の深い愛を知って帰国するよう命じ、ネルスコには二人の出帆を確認したら岬の断崖の上に来るように言う。

 第二場 海の見渡せる断崖の上。セリカは愛する人の船を見送りながら毒の花の香りを吸う(「憎しみを越えて」)。ネルスコが駆けつけるが、時すでに遅く彼女は静かに息絶え、彼も毒花の香りを吸ってその後を追う。

Reference Materials



初演
1865年4月28日 パリ・オペラ座

台本
ウージェーヌ・スクリーブ/フランス語

演奏時間
第1幕43分、第2幕35分、第3幕23分、第4幕40分、第5幕39分(アレーナ盤DVDによる)

参考CD
● ノーマン、ルケッティ、グェルフィ/ムーティ指揮/フィレンツェ5月音楽祭管・唱(OPD

参考DVD
● ヴァーレット、ドミンゴ、スウェンソン、ディアス/アレーナ指揮/サンフランシスコ歌劇場管・唱(Kultur

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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