軍人たち[全4幕]ツィンマーマン作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > 軍人たち[全4幕]ツィンマーマン作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

B. A. Zimmermann, Die Soldaten  1957~1960軍人たち[全4幕]ツィンマーマン作曲

登場人物❖

ヴェーゼナー(B) マリー(S) シャルロッテ(Ms) マリーの祖母(ヴェーゼナーの老母)(A) シュトルツィウス(Br) シュトルツィウスの母(A) フォン・シュパンハイム伯爵(B) デポルト男爵(T) ピルツェル大尉(T) アイゼンハルト(Br) オディー大尉(Br) マリ大尉(Br) 他

概説

 原作者のレンツはベルクの「ヴォツェック」の作者ビュヒナーに大きな影響を与えた。ビュヒナーが書いた「ヴォツェック」はベルクやグルリットによってオペラ化されるなど、18世紀後半以降のドイツの文学界が20世紀前半のドイツ・オペラ界に与えた影響は計り知れないものがある。

 この「軍人たち」は、20世紀オペラの重要作のひとつで、電子音楽やジャズなどさまざまな技法が取り入れられ、映像も駆使される。原作の全五幕35場からオペラでは四幕15場にまとめられている。フランドル地方フランス語圏のリールを舞台に、時代設定は「昨日、今日、明日」となっていて、いつの時代にも起こり得る物語であることを暗示している。



第一幕

 

 第一場 リールの小間物商ヴェーゼナー家の室内。この家の娘マリーは姉のシャルロッテに文字の綴りを尋ねながら、恋人のシュトルツィウスの母親宛てに手紙を書いている。

 第二場 アルマンティエールの呉服商シュトルツィウス家の室内。シュトルツィウスはマリーにぞっこん惚れ込んでいる。マリーから来た手紙を見せられて喜ぶが、母親は二人の交際に乗り気ではない。

 第三場 ヴェーゼナー家の室内。マリーが手紙を書いていると、フランス軍人のデポルト男爵が芝居に誘いに来る。父親のヴェーゼナーは品行の良くない軍人と大切な娘が出かけるのを許さないので、マリーはもう子供ではないと不満顔である。

 第四場 アルマンティエールの広場。若い軍人や従軍牧師たちが芝居を見に行くことの是非を論じている。娼婦に生まれついた女は娼婦にしかならないとオディー大尉が言うのに対して、牧師アイゼンハルトは女は仕向けられなければ娼婦にならないと反論する。

 第五場 マリーの部屋。父親のヴェーゼナーがマリーにデポルト男爵との関係を問いただす。彼は商人の娘が貴族の玉の輿に乗るのも悪くないと思うが、正式な求婚まではシュトルツィウスとの関係を切らぬように言うので、マリーの心は揺れる。


第二幕

 

 第一場 アルマンティエールのカフェ。軍人たちが酒を飲んで騒いでいる。すでにマリーとデポルト男爵の関係は知れ渡っていて、現れたシュトルツィウスは皆にからかわれて立ち去る。

 第二場 ヴェーゼナー家の室内。マリーがシュトルツィウスから来た非難の手紙を読んでいると、現れたデポルト男爵はシュトルツィウスとの断交を勧めて二人は愛撫を交わす。マリーの祖母が孫娘の運命を予感して古謡を歌う。一方マリーからの返事に打ちのめされたシュトルツィウスは、マリーを堕落させた男に復讐を誓う。

 

第三幕

 

 第一場 アルマンティエールの外堀を埋めた大通り。牧師アイゼンハルトはピルツェル大尉に、なぜマリ大尉がリールに移動したのかを問い、二人で兵士と女の関係の議論をする。

 第二場 マリ大尉の家。シュトルツィウスが訪ねて来て従卒に採用される。

 第三場 ヴェーゼナー家の室内。マリーの姉シャルロッテは、デポルト男爵からマリ大尉に男を乗り換えた妹を非難する。マリ大尉がやって来て、マリーは母親と三人で出かけるが、大尉の従卒がシュトルツィウスにそっくりなのに気がつく。

 第四場 リールのド・ラ・ロッシュ伯爵夫人の館。伯爵夫人は評判の悪いマリーと交際している息子マリ大尉を非難する。そして、マリーを更生させるからお前は旅立つようにと言う。

 第五場 ヴェーゼナー家の室内。今のマリーの関心はド・ラ・ロッシュ伯爵にある。伯爵夫人が訪れて来て、マリーを自邸に引き取って名誉を回復させてあげると伝える。

第四幕

 

 第一場 アルマンティエールのカフェ。マリーが転落していく様子が映し出される。マリーは伯爵夫人の家に引き取られてからもマリ大尉とデポルト男爵に翻弄され、ついに娼婦に転落してしまう。それを知ったシュトルツィウスは、デポルト男爵を殺害しようと毒薬を買う。

 第二場 マリ大尉の家。デポルト男爵を招いてマリ大尉は食事をしている。給仕をしているシュトルツィウスはデポルト男爵のスープに毒薬を入れ、苦しむデポルト男爵の耳にマリーの名を連呼して自分も毒を仰ぐ。

 第三場 リス川のほとり。落ちぶれて女乞食になっているマリーに、父親は娘とも気づかずに施しを与える。スクリーンには軍人たちが行進する映像が映し出される。

 

Reference Materials



初演
1965
年2月15日 ケルン市立歌劇場

原作
ヤーコプ・ミヒャエル・レンツの同名戯曲

台本
ベルント・アロイス・ツィンマーマン/ドイツ語

演奏時間
第1幕33分、第2幕26分、第3幕31分、第4幕16分(コンタルスキー盤CDによる)

参考CD
● ケレメン、ギャブリー、モレイラ、ニコライ/ギーレン指揮/ケルン・ギュルツェニヒ管(Wergo

● ムンキトリック、シェイド、ヴァルガス、エベッチ/コンタルスキー指揮/シュトゥットガルト歌劇場管・唱(T

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止



 
◀︎◀︎◀︎ マハゴニー市の興亡         ユグノー教徒 ▶︎▶︎▶︎



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE