三文オペラ[プロローグと全3幕]ヴァイル作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

K. Weill, Die Dreigroschenoper 1928

三文オペラ[プロローグと全3幕]ヴァイル作曲

 

登場人物❖

メッキース(T) ピーチャム(B) ピーチャム夫人(Ms) ポリー・ピーチャム(S) タイガー・ブラウン(Br) ルーシー(S) ジェニー(Ms) 大道芸人(口上役)他

概説

 オペラというよりはミュージカルに近い作品であるが、第一次大戦後の混乱したブルジョア社会を風刺した作品である。初演は大成功を収め、一九三一年に早くも映画化されてますます評判になったが、ナチ時代のドイツでは上演禁止になった。

 ジャズの技法こそ今となっては古いが、それだけに古典としての価値を持っている。全曲は三時間以上かかるので、適宜カットして上演するのが普通である。

 
プロローグ

 ソーホーの歳の市。盗賊や乞食(こじき)や売春婦などが雑踏の中を行き交う広場で、一人の大道芸人が進み出て、このオペラの主人公である盗賊の首領メッキースの犯罪歴や人物像について紹介する(モリタートの歌「メック・メッサーの歌」)。


第一幕

 

 第一場 ピーチャムの乞食衣裳店。乞食の親分ピーチャムが毎朝の日課になっている店の掃除をしながら、腐敗したキリスト教徒を茶化して歌っていると(「朝の聖歌」)、昨日ピーチャムの許可なしで乞食をしたためにリンチを受けたフィンチが現れる。

 フィンチはピーチャムにショバ代を払う約束をすると、ピーチャムは彼に乞食衣裳を貸して仕事を世話してやる。次にピーチャム夫人が来て、娘のポリーが昨夜外泊して帰らなかったと夫に報告する。娘の恋の相手が仇敵(きゅうてき)のメッキースであるのに気づいた夫婦は、大変なことになったと騒ぐ。

 第二場 空っぽの馬小屋。ポリーは結婚衣裳を着て来たが、見すぼらしい馬小屋なのにびっくりする。けれどもメッキースの手下たちが、盗品でたちまちのうちに豪華な邸宅に模様替えしてしまう。ポリーはそのお礼に歌う(「海賊ジェニー」)。

 そこにメッキースの友人の警視総監ブラウンが個人の資格で婚礼の祝いにやって来る。二人の戦友は昔を思い出して歌うと(「大砲ソング」)、ブラウンは翌日の女王の戴冠式の準備のために帰る。メッキースの手下たちは隠してあったベッドを親分に見せて退散するので、メッキースはポリーと床に入る(「愛の歌」)。

 第三場 ピーチャムの乞食衣裳店。ピーチャム夫婦は娘が盗賊と結婚したのを知り、驚き悲しんでいる。娘ポリーは両親に結婚を報告するが(「バルバラ・ソング」)、両親はメッキースには多勢の情婦がいると言って娘に別れるよう説得する。そしてメッキースの居場所を警察に密告して、彼が逮捕されるように仕向ける以外には娘を救う方法がないことを悟る。

第二幕

 

 第一場 馬小屋。ポリーはメッキースに、自分の両親が彼を陥れて逮捕させようとしていると教える。そこでメッキースは高飛びする決心をして、手下たちに自分の不在の間の代理人にポリーを指名したと告げて逃げる。ポリーは一人寂しげに歌う。

 幕間劇 ピーチャム夫人は、メッキースの情婦の一人であった酒場女のジェニーを金で釣って、彼を密告するように唆(そそのか)し、メッキースの女狂いを歌う(「セックスのとりこのバラード」)。

 第二場 タウンブリッジの売春宿。メッキースは何も知らずに元の情婦ジェニーのところに来る。そして昔ジェニーのヒモだったころを思い出して歌うが(「ヒモのバラード」)、そこに踏み込んで来た警官に逮捕されて連行される。

 第三場 オールドベイリー刑務所の独房。ブラウンは友人を逮捕したことを悩み、メッキースに話しかけるが相手にされない。メッキースは歌って自分を力づける(「楽しい生活の歌」)。そこに彼の情婦の一人である警視総監ブラウンの娘ルーシーが面会に訪れ、彼がポリーと結婚したことを責める。メッキースは否定するが、ポリーもやって来てルーシーと鉢合わせする。二人の女は互いに嫉妬(しっと)して言い争いになるが、純情なポリーが負けて母親に連れ戻される。メッキースはルーシーの手引きで脱獄し、後から来たブラウンはメッキースの逃亡にほっとする。

第三幕

 

 第一場 ピーチャムの乞食衣裳店。乞食たちはメッキースを再逮捕しないのなら女王の戴冠式にプラカードを掲げてデモ行進し、パレードの妨害をしようと準備している。メッキースの情婦たちが来て分け前を要求するが、ピーチャムに拒否されると、ジェニーは腹いせにまたもメッキースの居場所を警察に密告する。乞食たちを逮捕しようとしていたブラウンは、しかたなしにメッキースの逮捕にむかう。

 幕間劇 ジェニーが現れ、賢者ソロモン王でさえ陥落した例にメッキースをなぞらえる(「ソロモン・ソング」)。

 第二場 オールドベイリーのルーシーの居間。メッキースがここにいるのではないかと疑ってポリーがルーシーの家を探し尋ねるが、別の女のところにいるとわかって二人は和解する。そこにメッキース逮捕の知らせが入るので、二人はショックを受ける。

 第三場 死刑囚の独房。投獄されたメッキースは、さすがに今度は逃げられないと悟って看守を買収しようとするが、金の調達も思うにまかせない。別れの面会に来たポリー、ピーチャム夫人、ジェニーらに許しを請い(「人々に赦しを求める歌」)、死刑台に向かう。

 その時、突然女王の戴冠式の恩赦が出て、女王の使者としてブラウンが登場する。釈放されるだけではなく、メッキースは貴族にも列せられ、年金まで支給されると知らされる。皆の喜びのハッピーエンドの中に幕となる。

Reference Materials



初演

1928年8月31日 シフバウアダム劇場(ベルリン)

原作
ジョン・ゲイ/バラード・オペラ「乞食オペラ」(ペープシュ作曲)

台本
ベルトルト・ブレヒト/ドイツ語

演奏時間
プロローグ5分、第1幕23分、第2幕28分、第3幕18分(マウチェリ盤CDによる)

参考CD
● レンパー、デルネシュ、ミルバ、コロ、アドルフ、ボイゼン/マウチェリ指揮/RIASベルリン・シンフォニエッタ、RIAS室内唱(T

● コチアン、ヴォルフベルク、レーニャ、トレンク=トレビチュ、ヘスターベルク/ブリュックナー=リュッゲベルク指揮/自由ベルリン放送管、ギュンター・アルント唱(SONY

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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