死の都[全3幕]コルンゴルト作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

E. W. Korngold, Die tote Stadt 1920

死の都[全3幕]コルンゴルト作曲

 

登場人物❖

パウル(T) マリエッタ/パウルの亡き妻マリーの幽霊(S) フランク(Br) ブリギッタ(Ms) フリッツ(Br) ユリエッテ(S) ルチエンヌ(S) ガストン(T)他

概説

 コルンゴルトはモーツァルトにも匹敵する神童といわれ、早くからウィーンでは新進オペラ作曲家として名声を確立した。この「死の都」の初演をめぐっては、ドイツの歌劇場で熾烈な競争さえ行われ、ケルンとハンブルクで同時上演という異常事態になった。音楽は後期ロマン派的な甘美さにあふれていて、彼の人気をさらに高めた。

 

第一幕

 

 ベルギーのブリュージュに住むパウルの家。パウルは先ごろ亡くなった妻マリーが忘れられずに「思い出の部屋」を設けて彼女の肖像画や遺髪を飾って追憶に浸っている。家政婦のブリギッタが、来訪した彼の友人フランクを案内して、昨日からパウルが死んだ妻が戻って来たといって急に元気を取り戻したと説明する。

 フランクはマリーの肖像画を見てその美しさに見とれるが、そこにパウルが帰って来る。パウルはいつも神に彼女を返してほしいと祈っていたところ、昨日ブリュージュの町でマリーにそっくりの女性に出会ったので、彼女を自宅に招いたと言う。そしてブリギッタに花を買って来るように頼む。

 間もなく快活で若い踊り子のマリエッタがやって来る。パウルは彼女の中に亡き妻マリーの面影を見出し、ついにマリエッタをマリーと混同して、夢心地の中で錯乱状態になる。そのような彼の奇妙な振る舞いに彼女は戸惑う。そして彼の気を惹こうと、リュートを持って魅惑的な歌や踊りを披露するので、恍惚の中にパウルは思わず「マリー」と叫ぶ(「マリエッタの歌」)。

 その時、外からマリエッタの友人ガストンたちの歌声がすると、彼女は窓辺に駆け寄るので、パウルは彼女を引き戻す。ますますパウルはマリエッタと亡き妻との区別がつかなくなるが、マリエッタは踊っているうちに肖像画の前のカーテンに足を引っかける。彼女はその絵があまりにも自分にそっくりなのに驚くが、パウルはそれを見ないでくれと言う。その時再びガストンの歌が聞え、マリエッタはマイアベーアのオペラ「悪魔のロベール」のバレエの練習があるからと言って立ち去る。

 呆然として彼女を見送ったパウルは、マリーへの追憶とマリエッタの現実の間に挟まれて幻覚に陥り、思わず「マリエッタ」と叫んでソファーの中に身を沈める。すると肖像画の中からマリーの亡霊が動き出て来て、パウルと呼びかける。二人は過去も未来もずっと忠誠だったと愛を語り合う。マリーの亡霊は、「あなたは生きていることにとらわれていて、あの女があなたを誘惑しようとしているから自分を見失わないように」と言うと、再び肖像画の中に戻る。パウルは幻想の中にまたマリエッタが激しく踊る姿を見て、ソファーの中に崩れ落ちる。

 

第二幕

 

 ブリュージュの町の広場。パウルの幻想は続く。彼はマリエッタの家の前の運河の岸にいる。彼は彼女の家に近づいて歌う(モノローグ「いったい私に何が起きたのだろう」)。忠実な家政婦だったブリギッタも、パウルが亡きマリーへの忠誠心を失って現実の女性に惹かれたために彼のもとを去ってしまった。パウルは修道女の列の中にいる彼女を見つけて問いただす。彼女はパウルの気持ちを理解できないと言うと、教会のほうに立ち去る。そこに突然フランクが現れ、もうパウルとは友人ではないと言い、マリエッタをめぐって喧嘩になる。

 運河にマリエッタの舞台仲間一座の乗った船が近づいて来て、陽気に騒ぎ歌うのでパウルは身を隠す。マリエッタはここに上陸して「悪魔のロベール」の練習をしましょうと提案する。彼女は姦淫(かんいん)で死んだ尼僧エレーヌの役になり、起き上がってガストンを誘惑しようと踊り出す。それを見たパウルはたまらなくなって飛び出すので、仲間たちは彼を取り押さえる。マリエッタは皆を帰らせて、パウルと二人きりになる。パウルはマリエッタとフランクとの関係を非難するが、自制心を失ったパウルはついにマリエッタの誘惑に屈する。彼女はパウルの家に行って、永遠に彼の亡き妻の亡霊を追い払うために一夜を過ごしましょうと言う。

 

第三幕

 

 第一幕と同じパウルの家。彼の幻想はまだ続いている。翌朝マリエッタはマリーの肖像画の前で絵に語りかける。外からは聖人の祝日に集まった子供たちの声が聞こえる。パウルは窓から外を眺めているマリエッタをなじるが、マリエッタは相変らず幻想にふけって、奇行に走る彼にもう愛想を尽かしている。二人は言い争いになり、怒ったパウルはマリーの遺髪を引っ張り出してマリエッタの首に巻きつけて絞め殺す。

 舞台が一瞬暗くなった後、パウルはようやく夢の世界から覚める。家政婦が入って来て昨日のご婦人が来訪していることを取り次ぐ。マリエッタは昨日忘れた傘を取りに来たと言い、にこやかな様子で帰って行く。フランクもやって来て、自分はブリュージュの町から出て行くつもりだと言い、パウルにもこの死の町から立ち去ることを勧める。彼は友人の助言に従って、この町を離れて生き続けると歌う。

Reference Materials



初演
1920
12月4日 ハンブルクおよびケルン

原作
ジョルジュ・ローデンバッハ/「死の都市ブリュージュ」

台本
パウル・ショット/ドイツ語

演奏時間
第1幕46分、第2幕49分、第3幕43分(ラインスドルフ盤CDによる)

参考CD
● コロ、ネブレット、ラクソン、ヴァーゲマン/ラインスドルフ指揮/ミュンヘン放送管、バイエルン放送唱(RCA

● ケルル、デノケ、スコウフス、デンシュラ/ラニクルズ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(Orf

参考DVD
● ケルル、デノケ、バツコフ、スヴェンデン/レイサム=ケーニック指揮/ストラスブール・フィル、ライン歌劇場唱(Art

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  

 



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