賢い女[1幕]オルフ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

C. Orff, Die Kluge 1941~42

賢い女[1幕]オルフ作曲

 

登場人物❖

王様(Br) 農夫(B) 農夫の賢い娘(S) 牢番(B) ロバを飼う男(T) ラバを飼う男(Br) 他

概説
 劇場育ちともいえるオルフの作品のほとんどは舞台との関連を持つが、幼児教育の重要性も認識しており、多数の教育用作品も作曲した。

 彼は1937年に初演された舞台形式によるカンタータ「カルミナ・ブラーナ」より前に書かれた作品をすべて破棄してしまったので、この「賢い女」はオルフの第三作となる。強烈な原始的なリズムの反復を基調にした彼の音楽はこのオペラの中にも貫かれていて、楽器編成にも弦楽器は用いられず、さまざまな打楽器が活躍する。

賢い女.png

「賢い女」


 第一場 前舞台に牢がある王様の館。牢には一人の農夫が入れられていて、娘の言う通りにしなかったことを悔いている。というのも、畑の中から純金の臼を掘り出した農夫はこれを王様に献上しようとする。農夫の賢い娘は、そんなことをすれば杵もあるに違いないと追及されるから川に捨ててしまうのがよいと言う。しかし農夫は娘の忠告を聞かずに臼を献上するので、娘の言う通り牢に入れられてしまったのである。

 農夫の嘆きを耳にした王様は、農夫から経緯を聞き出すと、その賢い娘に感心して牢番に娘を連れて来るよう命じる。

 第二場 前舞台の路上。三人の浮浪者が出て来て、泥棒稼業も楽ではないとぼやき、社会を風刺している。そこに農夫とその賢い娘が牢番に引かれて通りかかるので、浮浪者たちは隠れる。

 第三場 主舞台の王様の食卓。王様が食事をしているところに、農夫とその賢い娘が連れられて来る。王様はさっそく賢い娘の智恵を試そうと三つの謎を出す。たちまちのうちに賢い娘は謎を解いてしまうので、王様はすっかり感心して農夫を牢から解放し、賢い娘を自分の妻に娶(めと)る。

 第四場 前舞台。再び三人の浮浪者が、王様は妻を娶ったがいったい何日も持つことやらと、王権への反発と庶民の感覚をコミカルに歌う。

 第五場 王宮の庭の前。王様と賢い女が将棋を指していると、ラバ飼いとロバ飼いが三人の浮浪者とともに歌い踊りながらやって来て公正な裁きを求める。

 王様が何事かと尋ねるとロバ飼いが進み出て、ある旅籠屋に泊まった時、自分の牝ロバをラバ飼いの雄ラバと一緒の小屋に入れておいたところ、翌日になって自分の牝ロバが子を産んだ。ラバ飼いはそれが自分のラバの子だと主張していると言う。ラバ飼いと浮浪者たちは、自分の土地に落ちていたリンゴは自分の持ち物であるとの例を引き合いに一歩も引こうとはしない。

 将棋に負けて裁判などどうでも良い王様は、ラバの持ち主に子ロバを与えると面倒くさそうに判決を言い渡し、すばやくカーテンを閉める。ラバ飼いと浮浪者たちは面白そうに囃(はや)し立てる。

 第六場 黄昏の路上。正義が捻じ曲げられたと嘆いているロバ飼いの前に、ヴェールで顔を隠した賢い女が現れ、私の言う通りにすれば今日中に自分の使いを出して、子ロバはお前のものに戻ることを伝えると言って姿を消す。

 第七場 暗い舞台。三人の浮浪者が秘密のドアをノックすると牢番が出て来る。彼らは牢番に金を握らせて王様の酒蔵から酒を盗み出し、酔っ払って騒ぐ。夜が明けかかって浮浪者たちが家路につこうとすると、ロバ飼いが漁網を持って路上で魚を獲る恰好をしているので冷やかす。

 第八場 ロバ飼いが漁をしている路上。王様が通りかかり、何をしているのかと尋ねる。するとロバ飼いは、ラバがロバの子を産むならば、陸で魚が獲れるでしょうと答えるので、王様はすぐに賢い女の入れ知恵だと察して烈火のごとく怒り、ロバ飼いを捕らえて牢に入れる。

 第九場 主舞台の王様の部屋。食事のスープを持って来た賢い女に、王様は彼女の悪智恵を非難し、長持ちをくれてやるから一番大切な物を入れてとっとと出て行けと言う。賢い女はせめて食事をしてからにしてほしいと言って、王様の食事に眠り薬を入れる。

 第十場 前舞台。浮浪者たちが盗んで来た包みから金貨を取り出しているところを、賢い女が長持ちを運ばせて通り過ぎる。

 第十一場 牢の前。牢番がロバ飼いにロバの子はお前のものだと言い、お金を持たせて釈放する。ロバ飼いはあの女のお陰だと喜ぶ。

 第十二場 花をつけた樹の下。長持ちの中で眠っていた王様は目を覚ます。ここはどこだという問いに、賢い女はお前の一番大切なものを長持ちに入れて出て行けと言われたので、王様を入れて来たと答える。王様は彼女の賢さを褒めるが、彼女は賢さと愛とは両立しないと言う。父親の農夫は、あの娘もとうとう杵を見つけたなと嬉しそうにつぶやく。

Reference Materials



初演
1943
年2月20日 フランクフルト(ドイツ)

原作
グリム童話集/「智恵のある百姓娘」

台本
カール・オルフ/ドイツ語

演奏時間
79
分(アイヒホルン盤CDによる)

参考CD
● コルデス、フリック、シュヴァルツコップ、クリスト、クッシェ/サヴァリッシュ指揮/フィルハーモニア管(EMI

● ステュアート、フリック、ポップ、コーゲル/アイヒホルン指揮/バイエルン放送管(RCA

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  


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