ルル[プロローグと全3幕]ベルク作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

A. Berg, Lulu 1929~35

ルル[プロローグと全3幕]ベルク作曲

 

登場人物❖

ルル(S) ゲシュヴィッツ伯爵令嬢(Ms) 劇場の衣裳係(A) ギムナジウムの学生(A) 医事顧問(語り役) 画家(T) シェーン博士(Br) アルヴァ(T) ロドリーゴ(B) シゴルヒ(B) 猛獣使い(B) 公爵(T)他

概説

 十二音技法によるオペラの最高傑作としてこのオペラは不滅の光を放っているが、第三幕の途中までのオーケストレーションを済ませた時点でベルクは世を去った。

 ところが一九七六年に未亡人が死去した後、フリードリヒ・チェルハによって補筆が完成し、全三幕版として一九七九年二月二十四日パリ・オペラ座においてピエール・ブーレーズの指揮、パトリス・シェローの演出により初演されてセンセーションを巻き起こした。以後この版で上演されるのが普通になった。

 

プロローグ

 

サーカスの猛獣使いが幕の陰から現れ、これから始まる芝居の主な登場人物を、魂のない動物に見立てて紹介する。そして、あの蛇を持って来いと言うと、ピエロの衣裳を着けたルルが運び込まれ、ルルの性格を説明する。

 

第一幕

 

 第一場 画家のアトリエ。新聞社の編集長シェーン博士はルルを愛人にしているが、彼女の魔性から逃れるためにルルを医事顧問と結婚させた。彼女の周囲には常に男たちが群がっていて、シェーン博士の注文でルルの肖像画を描いている画家もその中の一人である。絵の出来具合を博士が見ているところに、博士の息子で作曲家のアルヴァが父に練習を見てもらおうと迎えに来る。画家は同性愛者だが、ルルの魅力だけは別である。博士が息子と立ち去ると、画家はルルを追い回すが、その時ルルの夫がドアをノックする。彼は鍵を壊して入って来るが、心臓発作であえなく倒れて死亡する。ルルは転がり込む遺産を考え、画家に外出着の背中のホックをかけてもらう。

 第二場 きわめて優雅なサロン。ルルは画家の妻になってここに住んでいる。そこにシェーン博士の婚約通知が届く。画家が出て行くと、ルルの父親と称する見すぼらしいシゴルヒ老人が金の無心に現れる。老人と入れ違いに博士が訪れて、結婚の邪魔(じゃま)になるから自分の家を二度と訪れないでくれとルルに頼み、ルルと言い争いになる。そこに画家が戻って来て、博士からルルの過去を聞いて、あまりの衝撃的な話に自室に入って自殺する。ルルはこれで博士と結婚できると喜ぶ。

 第三場 劇場の楽屋。ルルは劇場の踊り子としてアルヴァの作曲した音楽の舞台に立つようになった。ルルはお祝いに訪れたアルヴァを迎え、また彼女への求愛のために日参するアフリカ探検家の公爵を接待してから舞台に出る。アルヴァと公爵が話をしていると、ルルが運び込まれて来る。舞台に出演中、客席に若い婚約者と一緒の博士を見て、失神の発作が起きたふりをしたのである。駆けつけた博士はルルに釈明を求めるが、ルルは逆に博士に婚約者への離縁状を書かせてしまう。

 

第二幕

 

 第一場 シェーン家の豪華な部屋。今では博士の妻になったルルを、同性愛の相手ゲシュヴィッツ伯爵令嬢が訪問する。彼女は博士の機嫌が悪いので帰るが、ルルは娼婦のように博士にまとわりついて寝室に入る。今日は博士が取引所に出かける日で、シゴルヒやサーカスの力技者ロドリーゴ、ギムナジウムの学生たちが集まって飲み食いしている。そこに博士が現れるというので皆は立ち去るが、アルヴァが入って来てルルに情熱的な愛の告白を始める。それを博士は見とがめて激昂し、ルルにピストルを渡して自殺するように迫るが、ヒステリックになったルルは博士を撃ち殺す。ルルはアルヴァに助けを求めるが、その時警官が入って来る。

 第二場 前場と同じ部屋。ルルは既に一年間獄中にいる。彼女の崇拝者たちが集まってルルの逃亡計画を相談している。コレラを装って病院に隔離されているルルの身代わりにはゲシュヴィッツがなることになり、シゴルヒに連れられて病院に行く。かかった費用のすべては彼女が負担する。ロドリーゴはルルをサーカスに利用しようと待ち構えている。ルルは戻って来るが、ロドリーゴは仮病でやつれた姿のルルに愛想を尽かして出て行く。するとルルは急に元気になってアルヴァと情熱的なキスを交わし、パリへ逃げようと言う。

 

第三幕

 

 第一場 パリにあるルルの広い屋敷。ルルとアルヴァは新しくぜいたくな生活を始め、華やかなパーティを開いている。鉄道株に全財産を注ぎ込んで大もうけしたルルがお尋ね者の身であるのを知るロドリーゴや、売春斡旋人の侯爵などは、金目当てにルルを脅迫して警察に訴えると言う。ゲシュヴィッツもルルが冷たくなったのを非難する。そこに鉄道株が暴落したとのニュースが伝えられ、会場の人々は色を失う。この騒ぎの間に、ルルはと服装を交換して裏から逃げる。入れ替わりに警官が入って来て、ルルの姿の下僕を逮捕しようとするが、人違いとわかる。

 第二場 ロンドンの屋根裏部屋。間一髪でパリを逃れたルルは、アルヴァ、シゴルヒとともにここに住むようになった。ルルは売春婦になって一人の老学者を最初の客にする。老学者が帰った後、ゲシュヴィッツがかつて画家が描いたルルの肖像画を持って訪れると、アルヴァはその絵を壁にかける。

 しばらくしてルルは再び仕事に戻り、一人の黒人客を連れて来る。ルルが客に抵抗すると、それを助けようとしたアルヴァは客に殺され、ルルも客の連続娼婦殺人魔の切り裂きジャックに殺される。ジャックはさらに傍らのゲシュヴィッツも刺す。彼女はルルへの愛を口走りながらこと切れる。

Reference Materials



初演

1937年6月2日 チューリヒ市立劇場(2幕版)

原作
フランク・ヴェーデキント/「地霊」「パンドラの箱」

台本
アルバン・ベルク/ドイツ語

演奏時間
プロローグ4分、第1幕59分、第2幕54分、第3幕63分(ブーレーズ盤DVDによる)

参考CD
● ミゲネス、ファスベンダー、カルチコフスキー、アダム、ホッター/マゼール指揮/ウィーン国立歌劇場管・唱(RCA

参考DVD
● ストラータス、ミントン、リーゲル、マツーラ、ブランケンハイム/ブーレーズ指揮/パリ・オペラ座管・唱(NMC

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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