チャルダーシュ侯爵夫人[全3幕]カールマン作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

E. Kálmán, Die Csardasfürstin 1914~15

チャルダーシュ侯爵夫人[全3幕]カールマン作曲

 

登場人物❖

レオポルト・マリア侯爵(語り役) エドウィン・ロナルト(T) 伯爵令嬢シュタージ(アナスタージア・エッゲンベルク)(S) オイゲン・ローンスドルフ男爵(語り役) ボニ・カンチャヌ伯爵(T) フェリ・フォン・ケレケス伯爵(Br) シルヴァ・ヴァレスク(S)他

概説

 ウィンナ・オペレッタの「白銀時代」を代表する名作のひとつ。オペレッタ史上画期的な成功を収めた作品で、日本でも1985年のウィーン・フォルクスオーパーの来日公演で上演されて以来、その魅力が広く知られるようになった。なお、「チャルダーシュの女王」という訳題もしばしば用いられる。



第一幕

 

 ブダペストにあるキャバレー「オルフェウム」。時は第一次大戦の始まる直前。アメリカ巡業に旅立つ人気歌手シルヴァのお別れ公演兼送別会が開かれている。シルヴァは情熱的な恋唄をチャルダーシュのリズムに乗せて歌うと(「ハイア、ハイア、山こそわが故郷」)、踊り子たちもそれに従い、観客は熱狂する。シルヴァの挨拶が終わって、彼女の熱烈なファンであるボニとフェリが彼女に話しかけ、皆も取り囲んでひと騒ぎする。

 オルフェウムのロビーでは、次の公演の準備のためにシルヴァの絵看板を下ろしている。そこにシルヴァとは相思相愛の仲であるウィーンの金持ちの侯爵の息子エドウィンが到着し、絵看板に向かって彼女を讃美する(「素敵な女性よ」)。そして一人楽屋で待っているシルヴァを訪れる。二人は固く抱き合って激しく恋の火花を燃え上がらせる(「好きになるのはよくあるが」)。ノックの音がしてボニとフェリが入って来る。三人の男にシルヴァが加わって愛をたたえ合ってから、彼女は着替えに去る。

 その時エドウィンの許へ、父親マリア侯爵の使者としてウィーンから従兄弟のローンスドルフ男爵がやって来る。息子が歌姫などと結婚するのはもってのほかだと思う父親は、エドウィンの知らぬ間にまだ会ったこともない伯爵令嬢シュタージとの結婚話を進め、息子をウィーンへ連れ戻そうと男爵をブダペストに遣わしたのである。

 男爵はエドウィンに、翌朝ウィーンの陸軍司令部へ出頭せよとの召集命令を伝える。そこでエドウィンはシルヴァにアメリカ行きを断念させ、劇場に居合わせた公証人の立ち会いのもと、皆の前で二人の婚約を発表する。

 エドウィンが男爵とともにウィーンへ発った後、シルヴァはエドウィンとシュタージとの婚約通知を見せられる。エドウィンに騙(だま)されたと思ったシルヴァは、憤然としてボニを伴い、当初の予定通りアメリカへ旅立つ。

 

第二幕

 

 ウィーンにあるリッペルト・ヴァイラースハイムを治めるマリア侯爵家の館。老侯爵が息子エドウィンとシュタージとの婚約発表のために華やかにパーティを開いている。軍服姿のエドウィンと純白のドレスを着たシュタージが仲睦まじげに現れる。エドウィンはアメリカにいるはずのシルヴァに何度も電報を打ったのに、なしのつぶてなのが合点が行かない。そしてシュタージに、彼女から何らかの連絡があるまでは婚約しないと告げるが、結局二人は打ち解けて別々に去る(「燕にあやかって」)。

 そうするうちに、アメリカから戻ったシルヴァがボニと連れ立ってパーティに姿を現す。彼女はエドウィンに復讐するために、ボニ夫人になりすましている。ところがエドウィンとシルヴァは、久し振りの再会に懐かしさが込み上げて来る(「まだ覚えているかい」)。シルヴァがなおエドウィンを愛していると知ったボニも、話をしているうちにシルヴァよりもシュタージの方が気に入ってしまう(「それが恋」)。エドウィンはボニにシルヴァを手放すように迫り、ボニも納得するので、エドウィンは喜びいっぱいにシルヴァと歌い踊る(「踊りたい」)。

 そんなこととは露知らず、老侯爵はパーティの参加者たちに、エドウィンとシュタージとの婚約を発表しようとするが、シュタージは途中で発表を遮る。エドウィンはシルヴァとの結婚を宣言する。ボニ夫人として彼女が伯爵夫人になったものとばかり思い込んでいたエドウィンに向かって、シルヴァは一度も伯爵夫人になったことはないと言い出す。そして八週間前にブダペストのオルフェウムで作った婚約証明書を見せる。貴族でもないチャルダーシュの女王に息子をやれないと言う老侯爵だけでなく、エドウィン自身も相変わらずシルヴァの身分にこだわっている。それを知ったシルヴァは、婚約証明書を破り捨てて彼を自由にすると、自ら自分はただの歌姫だと言って立ち去る。

 

第三幕

 

 ウィーンのとあるホテル。ボニとシルヴァが投宿しているが、他にウィーンのアポロ劇場に出演中のオルフェウムの踊り子たちや、フェリも泊まり合わせている。

 ボニがシルヴァを慰めているところにフェリが来て、事情を聞くとフェリも彼女を勇気づける。三人はジプシー楽団の伴奏で「ああ世界を買い占めてしまえヤイ・ママン」を激しく歌い踊る。そこにシルヴァを追ってエドウィンが現れるので、フェリはシルヴァを別室に連れ去る。

 エドウィンがボニに食ってかかっていると、老侯爵も駈けつける。ボニから彼とシュタージの仲を知らされた老侯爵は、しかたなしに二人の結婚を認める。喜んで立ち去るボニに替わってフェリが現れる。彼はエドウィンの親友だと名乗り、伯爵の自分もかつて歌手と結婚したことがあると過去を語る。

 困惑している老侯爵を探して夫人が現れる。フェリは彼女を見て驚き、この女性こそその歌手だと言うので、老侯爵ははじめて自分の妻が歌手だったと知る。そしてエドウィンとシルヴァの結婚に同意する。ボニとシュタージは喜び、憔悴(しょうすい)のエドウィンも現れたシルヴァと結ばれて、二組のカップルがそろう。全員幸せそうな「人生は一度だけ」の歌と踊りの中に舞台の明かりが消えて行く。

Reference Materials



初演

19151117日 ヨハン・シュトラウス劇場(ウィーン)

 

台本

レオ・シュタイン、ベラ・イェンバッハ/ドイツ語

演奏時間

第1幕52分、第2幕56分、第3幕19分(ビーブル盤CDによる)

参考CD

● ローテンベルガー、ミリャコヴィチ、ゲッダ、ブロクマイアー/マッテス指揮/グラウンケ響、バイエルン国立歌劇場唱(EMI

● ルディフェリア、カーレス、ヴェヒター、ポッペル、ネーメト/ビーブル指揮/ウィーン・フォルクスオーパー管・唱(DEN

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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