ほほえみの国[全3幕]レハール作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

F. Lehár, Das Land des Lächelns 1929

ほほえみの国[全3幕]

登場人物❖
リーザ(S) グステル(グスタフ)・フォン・ポッテンシュタイン伯爵(Br) スー・ホン王子(T) ミー(S) チャン(Br) フェルディナント・リヒテンフェルス伯爵(語り役)他

概説
 この曲はレハールが一九二三年にウィーンで初演した「黄色いジャケット」の全面的な改作で、当時人気のあったリヒャルト・タウバーに合わせた新曲「君こそわが心のすべて」などを加えて大成功を収めた。

 オペレッタには珍しくハッピー・エンドで終わらない作品であるが、これは第一次大戦後のオペレッタのひとつの特徴である。

第一幕

  ウィーンのリヒテンフェルス伯爵邸の大広間。伯爵令嬢リーザが乗馬競技で優勝したので、その祝賀会に皆が集まっている。やがてリーザが帰宅すると、皆はお祝いの言葉を彼女にかける。リーザはお礼を述べ、今度は恋がしたいと言う(「ちょっとした浮気なら」)。リーザの幼なじみで、かねてから彼女に想いを寄せている陸軍士官グステルがリーザを呼び止めて、陸軍省に結婚保証金を納めて来たと言う。しかし中国の若い外交官スー・ホン王子に心を奪われている彼女は、グステルを友達以上の関係には認めようとせず結婚を断る。

 やがて王子が祝宴に現れる。彼は東洋人らしく絶えずみ、その奥に感情を押し隠している(「いつも微笑みを」)。リーザは王子のためにお茶を入れて二人で語り合っていると(「二人でお茶を」)、皆も集まって来て王子に東洋の話をせがむ。彼はリンゴの花で作った冠を恋人の窓辺に置いて恋の告白をする習慣を語り(「リンゴの花の冠」)、その歌にリーザへの想いを託す。そこに中国の大使館が本国からの電報を届けに来る。それは、王子が中国の首相に任命されたのですぐに帰国せよという知らせであった。リーザは王子に愛を告白し、父伯爵の懸念を押し切って、王子の妻として一緒に中国に行くことにする。

第二幕

 

 北京のスー・ホン王子の宮殿。王子の首相就任式が行われ、王子は伯父チャンから栄誉ある黄色の上衣を授けられる。保守的なチャンは西洋人を軽蔑し、テニスウェアを着て来た王子の妹ミーを見てあきれる。そして王子には、伝統に従って四人の中国人妻をめとるよう説得して立ち去る。

 リーザは妻が一人前の存在として認められない中国の習慣や結婚生活に不満を訴えるが、王子は彼女を優しく慰める。中国服に着替えたミーは保守的な伯父を皮肉って明るく歌い(「青い塔のサロンでは」)、彼女はいつも姉リーザの味方になる。

 そこにリーザを忘れられないグステルが大使館付武官として北京に赴任して来るが、今日テニスの相手をしたばかりのミーに出会って親しみを抱く。二人が去ったところに王子とチャンが現れる。チャンは四人の中国人妻と結婚するよう厳命するので、王子は形式的に応じることを了承する。

 やがてグステルとミーの前を通りかかったリーザは、王子が四人の中国娘と結婚すると聞かされて、グステルに会ったことから望郷の念に駆られる(「今一度ふるさとを」)。リーザは王子に中国娘たちとの結婚の真偽を確かめると、王子はそれは本当だが愛するのは君だけだと答える。リーザは形式的でもそんなことは認められないと言い、帰国する決意を告げる。王子は部下にリーザを宮殿から出さないよう命じ、失われゆく愛を嘆く(「君こそわが心のすべて」)。


第三幕

 

 スー・ホン王子の後宮。軟禁されたリーザは王子を憎み、グステルとともにウィーンへ逃げる用意をしている。ミーは兄を思い、またグステルとの別れを残念に思いながらリーザの逃亡の手助けをしつつ明るく振るまう(「ツィク、ツィク」)。いよいよリーザの支度ができてミーは秘密の戸口を教えるが、出口に鍵がかかっていて出られない。そこで別の逃げ道を教えたところに王子と部下が現れ、リーザとグステルは捕らえられてしまう。

 しかし王子は、リーザにとって中国が異国であるのを認めて彼女を自由の身にして、彼女が無事ウィーンに戻れるようグステルに保護を頼む。二人を見送りながら王子はミーを優しく抱いて、苦しくても悲しくてもいつも微笑んでいるのだと言う。

Reference Materials



初演
1929
1010日 メトロポール劇場(ベルリン)

原作
ヴィクトール・レオンの台本によるレハールのオペレッタ「黄色いジャケット」

台本
ルートヴィヒ・ヘルツァー、フリッツ・レーナー=ペダ/ドイツ語

演奏時間
第1幕38分、第2幕44分、第3幕5分(マッテス盤CDによる)

参考CD
● シュヴァルツコップ、クンツ、ゲッダ、ローゼ、クラウス/アッカーマン指揮/フィルハーモニア管・唱(EMI

● ローテンベルガー、フリーダウアー、ゲッダ、ホルム/マッテス指揮/グラウンケ響、バイエルン放送唱(EMI

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止



◀︎◀︎◀︎ メリー・ウィドウ              モーゼとアロン ▶︎▶︎▶︎



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