カプリッチョ[1幕]R.シュトラウス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Strauss, Capriccio 1940~41

カプリッチョ[1幕]R.シュトラウス作曲


登場人物❖

伯爵令嬢(S) 伯爵(Br) フラマン(T) オリヴィエ(Br) ラ・ローシュ(B) クレーロン(Ms) ムッシュー・トープ(T) イタリアの歌手(S) イタリアの歌手(B) 家令(B)

概説

 オペラにおいて音楽が先か、言葉が先かという問題は永遠の課題であり、先人がこれをテーマにオペラを書いているが、シュトラウスは最後のオペラでこの問題を扱った。彼の晩年の澄みきった心境を反映した美しい音楽である。物語はパリ郊外のロココ風城館のサロンで繰り広げられる。

 

 第一景 音楽家フラマンが作曲した弦楽六重奏が聞こえて来るなか、フラマンと詩人オリヴィエは美しい伯爵令嬢(未亡人になった伯爵家の令嬢)に恋心を抱いている。フラマンは詩人オリヴィエへのライバル心を意識する。伯爵令嬢とフラマンとの間で、音楽と詩のどちらを取るかについての話が始まる。さらに劇場支配人のラ・ローシュも加わったオペラ談義となり、話はかつてのブッフォン論争にまで発展する。

 第二景 フラマンの音楽にまだ陶然としている伯爵令嬢を兄の伯爵が冷やかす。一方伯爵令嬢は、兄が女優クレーロンに心を惹かれ、その関係で詩人オリヴィエの肩を持っているとやり返す。

 第三景 そこにラ・ローシュ、フラマン、オリヴィエが入って来る。皆で伯爵令嬢の誕生祝いのプログラムを相談しながら言い争っているところに、女優クレーロンが馬車でやって来るのが庭越しに見えるので、伯爵は慌てて彼女を出迎えに行く。

 第四景 クレーロンが現れる。彼女はオリヴィエが書いた愛のソネットの一部を音楽の伴奏なしに朗読し、彼の才能を賞賛する。ラ・ローシュはこれを舞台でやってみるためにクレーロンと伯爵を伴って劇場に向かう。それを見送ったオリヴィエは、もう一度自作のソネットを伯爵令嬢の前で朗読するので、彼女はうっとりする。途中からフラマンがクラヴサンの伴奏をつける。朗読が終わると、詩に感動したフラマンは紙を取り上げて隣室のサロンに走り作曲を始める。オリヴィエはせっかくの自分の詩に何をするのだと声を上げる。

 第五景 伯爵令嬢はオリヴィエに、フラマンの好きなようにしてあげなさいと言う。オリヴィエは二人きりになった機会を逃さず、伯爵令嬢に愛を告白するが軽くあしらわれる。

 第六景 フラマンが戻って来て、作曲の終わったソネットを歌う。伯爵令嬢はその歌の素晴らしさを賞賛するが、オリヴィエは自分の詩が台なしになったと嘆く。そこに支配人ラ・ローシュが入って来て、芝居をカットするために原作者の了解が必要だとオリヴィエを連れ出す。

 第七景 オリヴィエが劇場に向かった後、フラマンと伯爵令嬢の二人になる。フラマンは伯爵令嬢に向かって恋心を打ち明け、彼とオリヴィエのどちらを選ぶかと返事を迫る。戸惑う彼女は明日の昼十一時に書庫に来るようにとだけ言う。フラマンは彼女の腕に口づけをして走り去り、物思いに沈む伯爵令嬢は、コーヒータイムのために皆を集める。

 第八景 お茶の時間になる。クレーロンとの愛の成り行きに気をよくした伯爵が、彼女の魅力をたたえながら元気よく戻って来る。伯爵令嬢は伯爵に、オリヴィエとフラマンの二人から愛を告白されたことを話し、妥協案としてオペラを作ってみたらどうかしらなどと言ったりする。伯爵は妹を冷やかした後に、自分なら詩人を選ぶと言う。

 第九景 皆がサロンに集まって、劇場での練習の様子などが語られる。伯爵令嬢の合図でコーヒーが配られる。お茶の時間の間ラ・ローシュは踊り子たちにパスピエ、ジーグ、ガヴォットなどのバレエを踊らせ,伯爵に踊り子についての説明をする。オリヴィエはクレーロンの朗読を褒めるが、詩人にはもう興味を失っている彼女は取り合わない。そのあと「言葉か音楽か」というテーマについてしばし激しい論争が繰り広げられる。伯爵令嬢の提案により、気分転換にイタリア人歌手たちの歌を聴いてみようということになり、メタスタジオの歌詞による「さらば、わが生命よ」の二重唱が歌われる。歌が終わると、伯爵がクレーロンをパリまで送って行く話が決まる。

 やがてラ・ローシュは、計画している奉献祝典劇についての説明を始める。一つは寓話劇「パラス・アテネの誕生」だが、彼の奇想天外なアイディアに皆が笑いころげて愉快な「笑いの八重唱」となる。途中からフラマンとオリヴィエが滑稽すぎると批判すると、ラ・ローシュはもう一つのアイディアである「カルタゴの没落」について説明する。これは皆の反発を買い、「口論の八重唱」となる。そこでラ・ローシュはそれを制し、劇場支配人の権威について演説するので、皆は感動する。伯爵令嬢が進み出て、オペラの制作を依頼して最後には皆は和解する。伯爵の提案で、今日ここで起こったことをオペラのテーマにすることが決まる。

 第十景 夜もふけて帰り支度の時間になる。パリ公演に向かうクレーロンは伯爵の腕を取って馬車で去り、他の人々も次々に去って行く。

 第十一景 召使たちが現れて、今まで騒がしかったサロンの様子を噂しながら後片付けをしている。家令が出て来て、片付けが終わり夕食の支度ができたら休んでよいと言う。

 第十二景 一人になった家令が燭台に火をつけていると、プロンプターのムッシュー・トープが飛び込んで来るので、びっくりする。彼もパリ公演に行かねばならないのだが、練習のあと眠り込んでしまったので、皆に忘れ去られてしまったのである。家令は彼に馬車を調達してやる。

 第十三景 月明かりの中、盛装した伯爵令嬢が物思いに沈んでいる。そこに家令が夕食の準備ができたことを知らせ、詩人オリヴィエの伝言を伝える。それは明日の昼十一時に書庫でお会いしてオペラの結末をどうするか相談したいというものだった。同じ時間に同じ場所でフラマンと会う約束をしていた伯爵令嬢は、結論を出せないままにソネットを口ずさみながら食堂へ向かう。

Reference Materials



初演
1942
1028日 バイエルン国立歌劇場

原作
サリエリによりオペラ化されたカスティ/「まずは音楽、次が言葉」にヒントを得る

台本
クレメンス・クラウス/ドイツ語

演奏時間
142
分(ベーム盤CDによる)

参考CD
● シュヴァルツコップ、ルートヴィヒ、ゲッダ、ヴェヒター、フィッシャー=ディースカウ、ホッター/サヴァリッシュ指揮/フィルハーモニア管(EMI

● ヤノヴィッツ、トロヤノス、シュライアー、フィッシャー=ディースカウ、プライ/ベーム指揮/バイエルン放送響(DG

参考DVD
●フレミング、ヘンシェル、トロスト、フォン・オッター/シルマー指揮/パリ・オペラ座管(DEN

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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