ダフネ[1幕]R.シュトラウス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Strauss, Daphne 1936~37

ダフネ[1幕]R.シュトラウス作曲


登場人物❖

ダフネ(S) アポロ(T) ゲーア(A) ペナイオス(B) ロイキッポス(T) 四人の羊飼い(Br、T、B2人) 二人の乙女(S2人)


概説
 長年コンビを組んだ台本作家ホフマンスタールが世を去った後、文豪シュテファン・ツヴァイクがシュトラウスの台本作家として協力関係を結ぶことになった。しかしヒトラーが政権を握ると、ユダヤ人であるツヴァイクはイギリスへ逃れ、代わりにヨーゼフ・グレゴールを推薦した。この両者のコンビによる作品の中で、「ダフネ」は最も美しい作品である。

 グレゴールはたび重なるシュトラウスの要求を受け入れて台本を書き直し、これは第三稿にあたる。ダフネというのは、ギリシャ語で月桂樹のことで、アポロの求愛を逃れるために身を月桂樹に変えた妖精の物語である。

 ダフネ.png


 川岸にあるオリーブの木が群生した漁師ペナイオスの家の近く。遠くにオリンポスの山が見える。夕暮れ時、羊飼いが遠くから聞こえる角笛の音を耳にする。それはディオニソスの祭りを知らせる合図で、生けるものは万物交わる結婚の祭りだと言い、それぞれ羊を追って去って行く。そこに漁師の美しい娘ダフネが家から出て来て、沈んでゆく太陽を惜しみながら一人歌う(「ああ留まって愛する太陽よ」)。彼女は人一倍樹々や花や泉などの自然を愛し、一本の樹にさえ親しみを感じている。

 彼女が太陽神アポロをたたえてそばにある一本の樹を抱くと、その陰から羊飼いのロイキッポスが姿を見せる。子供の頃の二人は兄妹のように仲の良い友だちだったが、成長した今はロイキッポスはダフネを恋人という眼で見るようになっていて、彼女をディオニソスの祭りに誘う。しかしダフネは彼がすっかり変わってしまったことに嘆き悲しみ、彼の誘いを断る。そこでロイキッポスは、昔子供の頃一緒に笛を吹いて遊んだことを思い出させようとするが、彼女は彼の愛を拒絶する。

 家からダフネの母親ゲーアが出て来るので失望したロイキッポスは物陰に隠れる。彼女は娘がいつまでも子供っぽいなりをしているのを心配して、ディオニソスの祭りについて説明して、ダフネに着飾って祭りに行くよう促す。母親の言うことにも耳を貸そうとしないダフネは家に入ってしまう。ダフネのために衣裳を運んで来た二人の乙女はその美しさにみとれ、物陰に隠れていたロイキッポスにダフネに近づくためと称し、はじめは嫌がっていたロイキッポスに女性用の衣裳を着せてしまう。三人が笑いながら立ち去る。

 あたりが暗くなりかけた頃、漁師ペナイオスは妻ゲーアや羊飼いを連れて現れる。ペナイオスは、オリンポスの山の頂上がいつまでも光り輝いているのは太陽神アポロが降臨した証拠だと言い、アポロを迎えるために祭壇を用意させる。人々はそれを信じようとしないが、オリーブの森が一瞬赤い光に包まれると、羊飼いの粗末な衣裳をまとったアポロが姿を見せる。人々は彼を嘲笑するが、ペナイオスはこの男にうやうやしく挨拶して、彼を接待するために娘を呼びに行かせる。

 アポロはダフネが自分の妹アルテミスによく似ていると親しそうに話しかけるので、ダフネはアポロの素性についての警戒心を解く。しかし徐々に気持をあらわにしたアポロが愛を告白してディオニソスの祭りに誘うので、ダフネは不安に逡巡する。

 ディオニソスの祭りが始まり、若い男と娘たちは二手に分かれて踊り出す。女装したロイキッポスは娘の組に紛れ込んでダフネに近づくと、自ら女装を脱いで正体を現わし、アポロから離れて自分とともに踊ろうと言う。それを見たアポロは、「神々への裏切りだ」と言って怒り狂う。アポロの正体を知らない羊飼いたちは祭りをぶち壊しにしたアポロを怒り、ロイキッポスはダフネに対する愛にかけてアポロに身分を明らかにするよう迫る。

 怒ったアポロは自分が太陽神アポロであることを明かすが、ロイキッポスはなおアポロの言葉を信用しようとせずに、彼に呪いの言葉を投げる。すると怒ったアポロは、弓を張って天空に矢を放ち、電光と雷鳴が轟いてロイキッポスは射殺される。ダフネは彼の亡骸の上に身を投げかけ、彼を守れなかった自分の罪を悔いて死を望む(「ああ私にロイキッポス」)。

 ダフネの悲しむ姿を見たアポロも、怒りにまかせてロイキッポスを殺したことを後悔する。アポロはディオニソスの神に対して祭りをぶち壊しにしたことを詫び、ゼウスの神にはダフネを月桂樹にして自分に与えてくれるよう祈って、その場を立ち去る。恍惚の中にダフネは「来ましたよ」と歌い、徐々にその姿を月桂樹に変えていく。

Reference Materials



初演
1938
1015日 ドレスデン国立歌劇場

台本
ヨーゼフ・グレゴール/ドイツ語

演奏時間
94
分(ベーム盤CDによる)

参考CD
● フレミング、ヨン、ラーソン、シャーデ、ボータ/ビシュコフ指揮/ケルン放送響・唱(D

● ギューデン、リトル、キング、ヴンダーリヒ、シェフラー/ベーム指揮/ウィーン響、ウィーン国立歌劇場唱(DG

● ポップ、ゴールドベルク、ヴェンケル、モル、シュライアー/ハイティンク指揮/バイエルン放送響・唱(EMI

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ アラベラ             カプリッチョ ▶︎▶︎▶︎



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