アラベラ[全3幕]R.シュトラウス作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > アラベラ[全3幕]R.シュトラウス作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Strauss, Arabella 1929~32

アラベラ[全3幕]R.シュトラウス作曲


登場人物❖

ヴァルトナー伯爵(B) アデライーデ(Ms) アラベラ(S) ズデンカ(S) マンドリーカ(Br) マッテオ(T) エレマー伯爵(T) ドミニク伯爵(Br) ラモーラル伯爵(B) フィアケルミリ(S)他

概説

 ホフマンスタールとシュトラウスのコンビによる最後のオペラで、ホフマンスタールは台本完成数日後に世を去った。「ばらの騎士」の延長線上にある抒情的な美しいオペラである。ドレスデンの演出家ロイッカーと指揮者ブッシュに捧げられたが、二人はナチの支配を避けて亡命し、クレメンス・クラウスの指揮による初演は大成功を収めた。

 

第一幕

 

 ウィーンのホテルの一室。退役大尉ヴァルトナー伯爵は、妻アデライーデ、二人の娘とともに一流ホテル住まいをしているが、賭け事好きのために財産を失い、破産寸前の状態にある。アデライーデは占い女に運勢を占ってもらうと、娘アラベラに金持ちの求婚者が現れるが、もう一人の娘が邪魔(じゃま)をすると言う。占い女はもう一人娘がいるのかと問うので、アデライーデは、実は下の娘ズデンカは、社交界に披露するお金がないので男子として育てていると告白する。

 士官マッテオがやって来て、ズデンカにアラベラとの取り持ちを依頼するが、密かにマッテオに恋しているズデンカは、アラベラが彼を愛していると嘘を言ってしまう。マッテオが帰ると、アラベラが求婚者の一人に送られてホテルに帰って来る。ズデンカはさっそくマッテオのことを話すが、彼に関心のないアラベラは、マッテオは自分にふさわしい人ではないと言う(「あの人は私に適した人ではない」)。本当に好きな人が現れるのを夢見ているアラベラは、その時外に見知らぬ人影を見て心をときめかせ、ズデンカと美しい二重唱を歌う(「もし私に本当にふさわしい人があらわれたら」)。そりの鈴の音とともに求婚者の一人エレマー伯爵がやって来て、今夜の謝肉祭の舞踏会に誘うので、半時間後に出かけることを約束して自室に退く。

 ヴァルトナー夫妻が現れ、窮状を訴える手紙をアラベラの写真とともに旧友のマンドリーカに出したと話している。そこにマンドリーカと名乗る男が訪ねて来る。彼は旧友の甥で、手紙に同封されたアラベラの写真に魅せられて、求婚するためにやって来たと言う。旧友の財産を引き継いだというマンドリーカの話を聞いて、ヴァルトナーは今晩の舞踏会でアラベラに会わせることを約束する。舞踏会に出かける支度をして出て来たアラベラは、エレマー伯爵に場違いな気持ちを覚え(「私のエレマー」)、彼よりも今日見かけた見知らぬ人の方が気になると言い、ズデンカとともに舞踏会場へ向かう。

 

第二幕

 

 舞踏会場。ヴァルトナーとマンドリーカの待つところに、母親に伴われたアラベラが中央階段を下りて来る。初めて会うマンドリーカは、今日窓から見かけた人だった。アラベラとマンドリーカはたちまち愛を感じ、アラベラは彼の求婚を受け入れる(「そしてあなたは私の主人となり」)。独身時代最後の舞踏会となるので、アラベラはマンドリーカの許可を得て、三人の求婚者たちと次々に楽しく踊って別れを告げる。舞踏会の人気者フィアケルミリがアラベラの美しさをたたえて歌う(「ウィーンの殿方は心得ていらっしゃる」)。幸せ一杯のマンドリーカは、人々にシャンパンを振る舞って別室に引き揚げる。

 ズデンカは絶望に打ちひしがれたマッテオを見かねて、姉からと偽って、手紙と自分の部屋の鍵を渡すと、十五分後に待っていると伝える。これを立ち聞きしたマンドリーカのところに、アラベラから明日からあなたのものというメモが届くので、アラベラに対する疑念が渦巻く。

 自暴自棄になったマンドリーカは、フィアケルミリと踊って彼女にキスをする。そしてアラベラを揶揄(やゆ)するので、アデライーデは夫を呼ぶ。ヴァルトナーもアラベラがいないので心配になり、ホテルへ行ってアラベラが一人でいるかどうか確かめようと、夫婦そろってホテルに戻ることにする。

第三幕

 

 ホテルのホール。舞踏会場から一人でホテルに戻って来たアラベラは、ホールでマッテオに出会う。マッテオはたった今彼女の部屋でベッドをともにしたばかりのはずなのに、もう着替えているアラベラを目の前に見てびっくりする。彼はベッドの中の女性が実はズデンカだったとは知る由もない。二人はお互いの態度を不審がり言い争いになる。そこに舞踏会場からヴァルトナー夫妻、マンドリーカ、友人たちが戻って来る。マンドリーカはアラベラとマッテオが思った通り一緒にいるので彼女をなじるが、何のことかわからない無実のアラベラは、深く心を傷つけられる。こうなっては娘の名誉に係わると、ヴァルトナーはマンドリーカに決闘を申し込む。

 マンドリーカの話からこれはズデンカのしわざとわかりかけた時、二階からズデンカの声がして、彼女が寝巻きを着た女性の姿で現れるので一同は驚く。ズデンカがすべてを告白するので、彼女のマッテオへの愛から始まったことと知って、その真情に打たれたマッテオは、ズデンカへの愛情が芽生える。マンドリーカもアラベラを疑ったことを恥じて、彼女に許しを請う。アラベラはズデンカを優しくいたわり、マンドリーカはマッテオの手を取ってヴァルトナーに近づくと、ズデンカと結ばれるように取りなす。

 皆が去ると、アラベラはマンドリーカの召使にコップ一杯の水を持って来るように頼んで部屋に入る。アラベラは届けられたコップをマンドリーカに捧げると(「本当によかったわ、マンドリーカ」)、彼は水を飲み干してそのコップを床に叩きつけて砕く(「私だけがあなたのもの」)。これがこの国の結婚の風習で、二人は固く抱き合って永遠の愛を誓う。

Reference Materials



初演
1932
年7月1日 ドレスデン国立歌劇場

原作
フーゴー・フォン・ホフマンスタール/「ルチドール」「伯爵になった馭者」

台本
フーゴー・フォン・ホフマンスタール/ドイツ語

演奏時間
第1幕64分、第2幕54分、第3幕41分(カイルベルト盤CDによる)

参考CD
● ヴァラディ、ドナート、ダラポッツァ、フィッシャー=ディースカウ、ベリー/サヴァリッシュ指揮/バイエルン国立歌劇場管・唱(Orf

● デラ・カーザ、ローテンベルガー、コーン、フィッシャー=ディースカウ/カイルベルト指揮/バイエルン国立歌劇場管・唱(DG

参考DVD
● テ・カナワ、マクローリン、デセイ、ブレンデル、マッキンタイア/ティーレマン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




◀︎◀︎◀︎ エジプトのヘレナ           ダフネ ▶︎▶︎▶︎



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE