ナクソス島のアリアドネ[序劇と1幕]R.シュトラウス作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > ナクソス島のアリアドネ[序劇と1幕]R.シュトラウス作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Strauss, Ariadne anf Naxos 1911~12 and 1916 (改訂オペラ版)

ナクソス島のアリアドネ[序劇と1幕]R.シュトラウス作曲


登場人物❖

プリマ・ドンナ/アリアドネ(S) 作曲家(S、Ms) ツェルビネッタ(S) テノール歌手/バッカス(T) 音楽教師(Br) 執事長(語り役) 士官(T) 舞踏教師(T) かつら師(B) スカラムッチョ(T) ハルレキン(Br) トルファルディン(B) ブリゲルラ(T) エコー(S)他

概説

 モリエールの喜劇「町人貴族」の劇中劇としてベルリンのドイツ劇場のために作曲されたが、劇場機構の都合上シュトゥットガルトで初演された。

 これが「オペラ」の部分であるが、初演の失敗から、改めて「プロローグ(序劇)」をつけ加えて独立したオペラに改訂、ウィーン初演は大成功を収めた。オーケストラはわずか36人の編成ながら、その色彩効果と雄弁な表現力には驚くべきものがある。


序劇

 

 ウィーンのある富豪の邸宅の一室。今夜開かれる祝宴の余興に、邸内の劇場でオペラ・セリア「アリアドネ」が上演されることになっていて、人々は忙しく立ち働いている。舞台監督を務める音楽教師は、執事長からこのオペラの後に茶番劇が上演されると聞いて彼に抗議するが、十分な報酬を払ってあるのだから主人の意向に従うようにと言われ、抗議はぴしゃりとはねつけられる。

 舞台裏は上演の準備でごった返している。音楽教師の弟子である今宵のオペラの作曲家は下僕(げぼく)たちに馬鹿にされ、テノール歌手はかつらのできぐあいに文句をつけてビンタを食わせたりしている。喜劇に出演する踊り子ツェルビネッタがネグリジェ姿で出て来て、士官と話をしている。そのうちオペラでアリアドネ役を歌うプリマ・ドンナが喜劇役者たちを見下したような発言をするので、オペラ側と喜劇側の出演者たちの間で言い争いになる。こんな人たちとは仕事ができないと言う作曲家を音楽教師がなだめていると、再び執事長が現れて、主人の命令としてオペラと喜劇を同時に舞台上で演じるように告げるので、一同はびっくりする。

 喜劇側の舞踏教師やツェルビネッタは何でもないことだと言うのに対して、作曲家は絶望して中止したいと言う。音楽教師と舞踏教師は、オペラを短縮してバレエを挿入することで妥協するよう勧めるので、作曲家もその気になるが、今度はプリマ・ドンナとテノール歌手が互いに相手の歌を削るように言い張る。ツェルビネッタが甘い言葉で世の中の道理を説くので、作曲家もついに妥協を受け入れる。

 やがて上演直前になって、ふざけた喜劇役者が舞台に上がるのを見ると、作曲家はツェルビネッタに騙されたと知り、神聖な芸術が汚されるような気がしてたまらず走り去る。

 

オペラ

 

 ギリシャの孤島ナクソス島の洞窟(どうくつ)の入口。クレタのミノス王の娘アリアドネは、夫テシウスに一人置き去りにされて毎日孤独を嘆いている。三人のニンフが慰めようとするが、目を覚ましたアリアドネは過去を思い出して、死を望むだけだと言う(「すべてのものが清らかな国がある」)。

 四人の道化師にツェルビネッタも加わって、陽気な歌や踊りで彼女を元気づけようとしている。ツェルビネッタがアリアドネに新しい恋を説いても効き目はなく(「偉大なる王女さま」)、アリアドネは洞窟に入ってしまう。代わりにツェルビネッタの魅力に真っ先に惹かれたのは道化師のハルレキンである。他の三人の道化師も同様に彼女に言い寄るが、ツェルビネッタはハルレキンの手を取って逃げ去ってしまう。

 そこに三人のニンフが慌ただしく現れ、島に一隻の船が着いて若い神バッカスが到着したとアリアドネに知らせると、彼女は洞窟から出て来る。バッカスは魔女チルチェから逃れてこの島に来たのだが、美しいアリアドネをチルチェと見誤る。一方、アリアドネは若くて美しいバッカスを死の神と思い、進んでその腕に抱かれる。

 二人の死への憧れはやがて甘美で官能的な愛に変わり、バッカスは自分は酒の神だと名乗る。バッカスがアリアドネに接吻すると、彼女の悲しみは消え去り、再び生きる喜びを取り戻す。ツェルビネッタが現れ、新しい神がやって来たら自分たちは黙るだけだと言い、アリアドネとバッカスは愛に身をゆだねたまま、天蓋の幕の中に消えて行く。

 

Reference Materials



初演
1912
1025日 シュトゥットガルト宮廷劇場(改訂オペラ版)191610月4日 ウィーン宮廷歌劇場

台本
フーゴー・フォン・ホフマンスタール/ドイツ語

演奏時間
序劇40分、オペラ85分(レヴァイン盤CDによる)

参考CD
● ヴォイト、デセイ、フォン・オッター、ヘップナー/シノーポリ指揮/ドレスデン国立歌劇場(DG

● トモワ=シントウ、バトル、バルツァ、レイクス、プライ/レヴァイン指揮/ウィーン・フィル(DG

● プライス、グルベローヴァ、トロヤノス、コロ、ベリー/ショルティ指揮/ロンドン・フィル(D

参考DVD
● ヒレブレヒト、グリスト、ユリナッチ、トーマス/ベーム指揮/ウィーン・フィル(DEN

● ノーマン、バトル、トロヤノス、キング/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管(DG

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ ばらの騎士           影のない女 ▶︎▶︎▶︎



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE