ウィーン気質[全3幕]J.シュトラウス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

J. StraussII, Wiener Blut 1899

ウィーン気質[全3幕]J.シュトラウス作曲


登場人物❖

イプスハイム=ギンデルバッハ侯爵(Br) ツェドラウ伯爵バルドゥイン(T) 伯爵夫人ガブリエーレ(S) ヨーゼフ(T、Br) フランツィ(フランツィスカ)・カリアリ(S) ペピ・プライニンガー(S) カグラー(B) ビトヴスキー伯爵(語り役)他

概説

 シュトラウスが多忙のため、彼の既成の作品を接ぎ合わせたオペレッタを作るアイデアを提案したのは、カール劇場支配人のヤウナーであったが、作曲の途中でシュトラウスは病死した。そこでアン・デア・ウィーン劇場の指揮者アドルフ・ミュラーが後を引き継いで完成させたのがこの曲である。

第一幕

 

 ウィーンのデーブリングにあるツェドラウ伯爵の別荘。伯爵の従僕ヨーゼフが、国家の一大事だとツェドラウ伯爵に会いにやって来る。伯爵はロイス=グライス=シュライツというドイツのある小国の大使としてウィーン会議に派遣されて来ているが、滞在が長いので、この別荘にフランツィ(フランツィスカの愛称)・カリアリという踊り子を二号として囲っている。

 出て来たフランツィは、自分も伯爵に五日間ごぶさただと不満を言い、フランツィの父親カグラーも、ちっとも未来の花婿に会えないとぼやく。そこに伯爵がやって来てフランツィをなだめるので、彼女は機嫌を直して奥へ去る。

 ヨーゼフは大事な仕事の話をしようとするが、伯爵は昔とは変わった自分を回顧する(「結婚した頃は」)。そして、今日会ったお針子が気に入ったと言い、ヨーゼフに恋文の代筆をさせる。そのお針子とは実はヨーゼフの恋人ペピのことだが、二人は互いにそうとは知らない。伯爵が中に入るのと入れ違いに、フランツィの衣裳を届けにペピがやって来る。ペピは折からそこにいるヨーゼフに、今夜ヒーツィングに来るよう言って立ち去る。

 今度はシュライツ国の首相ギルデンバッハ侯爵がやって来る。首相はてっきりフランツィを伯爵夫人と思い込んで、今朝伯爵がカリアリという踊り子と一緒に散歩していたと伯爵を非難する。皮肉を言われたと思ったフランツィが怒って行ってしまうと、そこに本物の伯爵夫人ガブリエーレが近頃の夫の素行を怪しんで馬車に乗ってやって来る(「愛しき愛の巣よ、ご機嫌いかが」)。首相は今度は伯爵夫人をカリアリと勘違いして、こんなところまで来るとは厚かましいと言うので、夫人は怒る。

 伯爵が出て来て、首相に困ったことになったと言っているところにフランツィも現れる。そこで首相はとっさに伯爵夫人の手を取って、自分の家内だとフランツィに紹介する。一同はあっけにとられ、伯爵夫人は事の成り行きを怪しんで真相を突き止めようと決心する。

第二幕

 

 ビトヴスキー伯爵邸の舞踏会。伯爵夫人は伯爵に今朝別荘で起きたことを尋ねると、伯爵はあの女性は首相の愛人で、彼女と別れる口実に君を奥さんとして紹介したのだと言い訳するので、夫人も嘘と知りつつ納得したふりをして二人で歌う(「ウィーン気質」)。

 今度はフランツィが別荘に来た女性のことを問うので、伯爵は自分の妻だと言うが、フランツィは別の愛人だと勘違いしたままその場を離れる。ようやく伯爵はヒーツィングでの逢い引きを誘う手紙をペピに渡す。そこにヨーゼフが来て、ペピに今夜ヒーツィングに行けなくなったと言うので、気分を害した彼女は伯爵の誘いに乗ることにする。

 伯爵夫人も伯爵に今夜ヒーツィングへ行こうと誘うが、伯爵は今夜は首相と会議があるという口実で断るので、夫人は夫が別の女性と行くのではないかと怪しみ、首相をヒーツィングへ誘う。首相は伯爵の恋人に手出しできると喜んでその誘いを受ける。そこにフランツィが来るので、首相はフランツィを伯爵夫人、伯爵夫人をカリアリとして二人を紹介する。伯爵夫人は自分はカリアリではないと言い、ペピを指差して彼女がカリアリではないかと言うので、ペピは否定する。

 一同が混乱する中で、伯爵夫人はヨーゼフに誰が本当のカリアリか明かすよう迫るが、真相が明らかになっては困ることになると判断したヨーゼフは、ここにはカリアリはいないととぼける。やがてビトヴスキー伯爵が伯爵夫人に挨拶するので、誰が伯爵夫人か明らかになって一同はびっくりし、首相は伯爵夫人に誤りを陳謝する。皆は伯爵が歌い始めるのをきっかけに(「ウィーンの都の象徴は」)、にぎやかに歌ってヒーツィングへと繰り出す。

 

第三幕

 

 ヒーツィングのカジノの庭園。ランナーの楽団が演奏して二人の女が歌っている。そこにそれぞれ思惑を秘めた三組の男女、すなわち首相と伯爵夫人、ヨーゼフとフランツィ、伯爵とペピがやって来る。伯爵夫人は首相を誘ってあずまやへ入る。伯爵もペピを見つけてあずまやに入り、彼女を口説きにかかる。

 その声を聞きつけたヨーゼフは、恋人を口説いているところを伯爵夫人に見つかったら大騒ぎになると従僕として伯爵に忠告して、そっと伯爵を立ち去らせる。するとそこに残った女性がペピなのでヨーゼフは驚く。伯爵の恋文の相手がペピとわかり、恋人の裏切りを知ってヨーゼフとペピは大げんかとなる。

 そこに伯爵夫人が現れて、フランツィとばったり出会う。フランツィは自分でカリアリと名乗る。二人とも今まで伯爵とは一緒ではなかったと言うので、伯爵に第三の女性がいることが明らかになる。伯爵夫人とフランツィは、力を合わせてその女性を突き止めようとする。

 そうするうちに結局第三の女性はペピとわかるが、ペピの求めで伯爵は彼女が潔白であると誓ってやる。伯爵は伯爵夫人とよりを戻し、ヨーゼフはペピと仲直りする。万事丸く収まったが、酒の酔いで寝ぼけの首相は何が何やらわからない。伯爵が「すべてシャンパンのせいだ」と言うと、首相は「ウィーン気質のせいだ」と言い、皆でにぎやかにウィーン気質をたたえる中に幕は下りる。

 

Reference Materials



初演
1899
1025日(26日という説もある) カール劇場(ウィーン)

台本
ヴィクトール・レオン、レオ・シュタイン/ドイツ語

演奏時間
第1幕37分、第2幕38分、第3幕19分(シュトルツ盤CDによる)

参考CD
ギューデン、シュラム、リップ、ショック、グルーバー/シュトルツ指揮/ウィーン響、ウィーン国立歌劇場唱(DEN

ローテンベルガー、ホルム、ゲッダ、ヒルテ、ツェドニク/ボスコフスキー指揮/フィルハーモニア・フンガリカ、ケルン市立歌劇場唱(EMI

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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