こうもり[全3幕]J.シュトラウス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

J. StraussII, Die Fledermaus 1873~74

こうもり[全3幕]J.シュトラウス作曲


登場人物❖

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン(T、Br) ロザリンデ(S) フランク(Br) オルロフスキー公爵(MsC-T) アルフレード(T) ファルケ博士(Br) アデーレ(S) イーダ(S) ブリント(T) フロッシュ(語り役)他

概説

 ワルツ王ヨハン・シュトラウスが50歳近くになって書いた三作目のオペレッタ。初演こそ不入りだったというが、この曲の成功によってウィーン・オペレッタの黄金時代が始まった。物語が大晦日の話なので、ドイツ、オーストリアでは年末に上演されることが多い。

第一幕

 

 アイゼンシュタイン家の居間。大晦日。金持ちの銀行家アイゼンシュタインは、役人に軽い暴行を働いた罪で、今晩中に刑務所に入ることになっている。夕方、外からアイゼンシュタインの妻ロザリンデのかつての恋人アルフレードの歌う甘いセレナードが聞こえる。女中のアデーレが一通の手紙を手に、妹イーダから今夜のオルロフスキー公爵の舞踏会への招待状が来たけど、女中の身分では自由にならないと嘆く。ロザリンデが現れるので、アデーレは伯母が病気になったと嘘をついて休暇を申し出るが、相手にされないので泣きながら退出する。

 そこにアルフレードが忍んで来て、ロザリンデにまとわりつく。彼女は夫が刑務所に入ったらまた会おうと約束し、アルフレードは出て行く。そこにアイゼンシュタインが弁護士ブリントに不手際の文句を言いながら現れる。ロザリンデも加わって三人で言い合いをした後、ブリントは立ち去る。

 今夜の舞踏会で司会を務めるファルケ博士が現れ、ロザリンデが席を外したすきを狙ってアイゼンシュタインを舞踏会に誘う。それがファルケの企みとも知らずにアイゼンシュタインは陽気になって、二人は手を取って踊り出す。戻って来たロザリンデは、夫が刑務所に入るのに礼服に着替えるのを不審に思いながらアデーレに休暇を与える。アイゼンシュタインは大げさに悲しそうな様子をして、妻に別れを告げて出て行く。

 そこにアルフレードが入って来る。彼はアイゼンシュタインのナイトガウンを着て主人気取りになってくつろぎ、酒の歌を歌う(「飲め恋人よ、急いで」)。その時、突然刑務所長フランクが入って来て、アルフレードをアイゼンシュタインだと思って連行する。

第二幕

 

 オルロフスキー公爵邸の広間。舞踏会に集まった人たちの華やいだ合唱が繰り広げられている。金と暇を持て余して退屈しているロシア貴族オルロフスキー公爵に対し、ファルケはこれから「こうもりの復讐(ふくしゅう)」と題する面白い茶番劇をお目にかけると話す。というのは、四年前の仮装舞踏会の帰途、アイゼンシュタインはこうもりに扮装したままのファルケを道端に置き去りにしたので、翌朝目を覚ましたファルケは黒山の人だかりの物笑いの種になってしまい、以来、復讐の機会を狙っていたのだった。

 舞踏会の客の中には、こっそりロザリンデの衣裳を借りて来たアデーレが、女優オルガという触れ込みでイーダとともに参加している。ファルケはまずアイゼンシュタインを、フランス貴族ルナール侯爵としてオルロフスキーに紹介する。オルロフスキーは皆自由に振る舞って楽しく過ごしてくださいと言う(「僕はお客を呼ぶのが好き」)。

 アイゼンシュタインはアデーレを見つけて、自分の女中にそっくりだと言うので、自ら女優と称するアデーレに笑われ(「侯爵さま、あなたのようなお方は」)、皆にからかわれる。次いでフランクが騎士シャグランとしてオルロフスキーに紹介される。ファルケは彼をアイゼンシュタインに引き合わせるが、フランス人同士なのにフランス語を話せない二人は珍問答を交わす。

 そこにハンガリーの貴婦人として仮面をつけたロザリンデが麗々しく現れる。妻とも知らずにアイゼンシュタインは彼女を口説きにかかり、口説きの小道具の時計をまんまと取られてしまう。客たちは貴婦人の顔を見たいと言うが、彼女はハンガリー人の証明にチャールダッシュを歌う(「故郷のしらべをきけば」)。やがてオルロフスキーがシャンパンの歌を歌って宴たけなわとなり(「さあ、みなさん」)、ファルケは皆で仲間になろうと音頭を取る頃、時計が真夜中を打つ。アイゼンシュタインは慌てて刑務所に出頭し、フランクも急いで刑務所に帰る。

第三幕

 

 刑務所長フランクの部屋。看守のフロッシュが朝から酒を飲んでくだを巻いている。獄内からは囚人アルフレードの歌が聞こえる。千鳥足のフランクが戻って来て、舞踏会の興奮の酔いが覚めやらぬまま眠り込む。そこにアデーレがイーダを連れて現れ、本当は女中だけれど女優になりたいから応援して欲しいとフランクに頼み、歌の才能を披露する(「田舎娘をやる時には」)。

 さらにアイゼンシュタインが弁護士ブリントを連れて現れ、本名を白状して収監を求めるが、フランクからはもう入獄済みだと聞いてびっくりする。彼は法衣を着て弁護士ブリントになりすまし、自分の名を語る男の正体を知ろうとする。ロザリンデが駆けつけて、から出されたアルフレードとともに主人に見つからないで助かる方法はないものかと弁護士にありのままの経緯を話して相談する。やがて怒りを抑え切れなくなったアイゼンシュタインは、弁護士の法衣を脱ぎ捨てて正体を現し、妻の浮気を責め立てる。そこでロザリンデは舞踏会で取り上げた時計を夫の浮気の証拠と突き出すので、アイゼンシュタインは立場が逆転する。そこにファルケがオルロフスキーをはじめ一同を連れて現れ、「こうもりの復讐劇」の仕掛けが打ち明けられる。ロザリンデが「すべてシャンパンのせいね」と言うと、皆もそれに和してすべてを水に流し、陽気に幕を閉じる。

Reference Materials



初演
1874
年4月5日 アン・デア・ウィーン劇場

原作
アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ/喜劇「真夜中の晩餐」(ベネディクス/「監獄」による)

台本
カール・ハフナー、リヒャルト・ジュネ/ドイツ語

演奏時間
第1幕40分、第2幕41分、第3幕25分(クライバー盤CDによる)

参考CD
●ヴァラディ、ポップ、コロ、プライ、ヴァイクル/クライバー指揮/バイエルン国立歌劇場管・唱(DG


参考DVD
●ヤノヴィッツ、ホルム、クメント、ヴィントガッセン/ベーム指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(NMC

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



 

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