ボッカチオ[全3幕]スッペ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

F. v. Suppe, Boccaccio 1876

ボッカチオ[全3幕]スッペ作曲

登場人物❖

ジョヴァンニ・ボッカチオ(Br) ピエトロ(T) スカルツァ(B) ベアトリーチェ(S) ロッテリンギ(T) イザベルラ(S) ランベルトゥッチオ(T) ペロネラ(A) フィアメッタ(S) レオネット(B) フラテーリ(T) 他

概説

 ヨハン・シュトラウス出現直前のウィーンで活躍したスッペは、パリのオッフェンバックと並ぶオペレッタの作曲家として人気があった。彼の残したオペレッタには今日では序曲だけが演奏される作品が多いが、この「ボッカチオ」は浅草オペラ時代から日本でもよく上演された名作である。

 原作となった「デカメロン」は、作者ボッカチオが自身の体験を風刺的に扱った喜劇である。

ボッカチオ.png

第一幕

 

 14世紀イタリア・フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会前の広場。今日はフィレンツェの守護神ヨハネの祭日でにぎわっている。本屋フラテーリがボッカチオの新刊書を車に積んで現れ、女たちは競ってその本を求めるが、男どもはどうせ自分たちの醜聞が書かれているに違いないからボッカチオを町から追放しようと騒ぎになる。

 騒動をよそに、ボッカチオは友人の学生レオネットとともに床屋スカルツァの妻ベアトリーチェの寝室で浮気の最中である。床屋の前では、ボッカチオ追放の急先鋒である桶屋のロッテリンギ、雑貨商ランベルトゥッチオがボッカチオを罵っている。床屋が予定より早く旅から戻って来てそれに加わる。ところが家の戸が開かないので、彼は雨傘をギターに見立ててセレナードを歌う(三重唱「ベアトリねえちゃん、まだ寝んねかい」)。そこでベアトリーチェは一芝居打つことにして、「大変だ誰か来て、決闘だ」と悲鳴をあげると、仮面をつけたボッカチオとレオネットの二人は争いながらどさくさに紛れて逃げ去る。仮面を外したボッカチオは、また自分の小説の題材ができたと上機嫌に講釈する。

 祭日のミサをあげるために人々は教会へ向かい、雑貨商夫妻は養女フィアメッタとともに教会に行く。彼女はいつも教会で出会う若者の姿(ボッカチオ)を探す(「恋はやさし、野辺の花よ」)。実は彼女はある大公の落とし子で、母は雑貨商の妻ペロネラであり、パレルモの王子ピエトロの許婚である。

 結婚のためにフィレンツェにやって来た王子は、ボッカチオの小説のようなアヴァンチュールを楽しもうと偽名を名乗ってボッカチオに弟子入りを申し入れる。王子はボッカチオに変装し、レオネットから桶屋の妻イザベルラを紹介されて恋の体験に励むが、通りかかった桶屋と雑貨商からボッカチオに勘違いされて追いかけられる。一方ボッカチオは、乞食に変装してフィアメッタにそっと近づく。二人は愛を互いに打ち明ける。

 その頃ボッカチオに変装した王子は、桶屋、雑貨商、床屋などに捕まってなぶりものにされるが、旅に同行した床屋は彼が王子であることを明言するので、人違いがわかり一同平謝りする。そこに本屋がやって来るので、怒った人々はボッカチオの本を焼き始めるが、学生たちは永遠の真理をたたえてボッカチオの自由な表現を支持する。

 

第二幕

 

 桶屋と雑貨商の前。ボッカチオ、レオネット、王子の三人が現れる。ボッカチオは融通のきかない夫たちを題材にする小説を考えている。彼ら三人はセレナードやコミカルな歌を歌い、それぞれの亭主のすきを狙って逢い引きの相手と情事を楽しむ。王子も約束通り桶屋の妻イザベルラに会いに来る。亭主が戻って来るのでイザベルラはとっさに王子をお客と偽り、夫に樽の中の点検をさせ、その間に王子との逢瀬を楽しむ。床屋がボッカチオが農夫に変装して来ていると通報するために駆けつけるので大騒ぎとなり、折しも通りかかった見知らぬ男が誤って取り押さえられてひどい目に遭う。

 ところが雑貨商が、この男がいつも養女のフィアメッタに養育費を届けに来る人物であることに気づく。その男は実は自分は王子の従者でフィアメッタを連れに来たので、彼女は今日限りでここを出て行くことになったと告げる。はじめ彼女はそれを拒むが、ボッカチオに耳打ちされると、しぶしぶ迎えの籠に乗って大公の城に向かう。一同は突然の不思議な別れを惜しむ。

 

第三幕

 

 大公の宮殿の広間。イザベルラに夢中になってしまった王子は、フィアメッタとの結婚式を前にこの婚礼に気が進まないとボッカチオに打ち明ける。フィアメッタもボッカチオが忘れられない。ボッカチオを町から追放しようとする男たちが大公の宮殿に向かっている。雑貨商夫妻も婚礼に招かれ、フィアメッタが実は公女であり、いつも来る見知らぬ男が侍従長であったのを知ってびっくりする。そこにフィアメッタが現れて、乞食姿の若者の正体がボッカチオであると知って驚くが、愛の二重唱となる(「わが麗しき花よ、胸の悩みを知り給うか」)。雑貨商は、フィアメッタを立派に育てた功績で大公から勲章を授けられて宮廷人として扱われることになり、床屋も桶屋も表彰されるので、ボッカチオ追放運動も尻つぼみになる。

 王子は人々の前で、フィアメッタをボッカチオに譲ることを宣言するので二人は結ばれ、人々はこれを祝福する。

 

Reference Materials



初演
1879
年2月1日 カール劇場(ウィーン)

原作
ボッカチオ/「デカメロン」

台本
リヒャルト・ジュネー、カミロ・ヴァルツェル(別名ツェル)/ドイツ語

演奏時間
第1幕47分、第2幕41分、第3幕17分(下記CDによる)

参考CD
●プライ、ブロックマイアー、ベーメ、モーザー、ダラポッツァ/ボスコフスキー指揮/バイエルン放送響、バイエルン国立歌劇場唱(EMI

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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