パルジファル[全4幕]ワーグナー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Wagner, Parsifal 1877~82

パルジファル[全3幕]ワーグナー作曲


登場人物

アンフォルタス(Br) ティトゥレル(B) グルネマンツ(B) パルジファル(T) クリングゾル(B) クントリー(S)他

 

概説

 ワーグナー最後の作品であるこのオペラは、舞台神聖祝典劇と名づけられた。ワーグナーはこの曲をバイロイト祝祭劇場でのみ完全に上演される作品として、彼の死後30年間(1913年まで)同劇場に独占上演権を与えた。

 初演は1ヶ月間に16回行われた。最終公演の8月29日、第三幕の〈場面転換音楽〉の途中で病気不調の指揮者レヴィに代わって、ワーグナー自ら指揮をして大成功を収めたが、これがワーグナーにとって自作オペラ最後の指揮となった。

第一幕

 

 第一場 中世スペインのモンサルヴァートの聖杯城に近い森の中。聖杯守護の騎士団の長老グルネマンツと二人の小姓は木の下で目を覚まし、朝の祈りを捧げる。二人の騎士が現れて、アンフォルタス王が傷の痛みを和らげるために、今日も間もなく近くの湖に水浴びに来ると告げる。

 そこに荒馬に乗った魔性の女クントリーが現れ、はるばるアラビアから王の傷に効く塗り薬バルサムを持って来たと言って、グルネマンツに薬を渡す。やがて神輿(みこし)に乗った王がやって来て、彼女に礼を言って薬を受け取るが、二人の小姓はクントリーを異教徒の魔法使いだと言う。王の一行が水浴場へ向かった後、グルネマンツは二人の小姓に次のような話を語る(グルネマンツの物語)。「敬虔なる先王ティトゥレルは天の使者に聖杯と聖槍を授けられ、それを守る聖杯城をモンサルヴァートに建てると、王座を息子のアンフォルタスに譲った。しかし邪悪なクリングゾルは、魔性の美女を使って王を罠にはめた。それ以来王は不治の傷に苦しんでいるが、同情によって智を得る清らかな愚か者の出現を待てという神託があった」。

 その時、湖の方から誰かが白鳥を射落としたという叫び声が聞こえ、若者が騎士たちに連れられて来る。彼はパルジファルという名前なのだが、自分の名前も何もかも答えられない。するとクントリーが彼の素姓や生い立ちを語るので、グルネマンツはあるいはこの若者が神託で告げられた愚か者かも知れないと思い、聖杯城へ連れて行く。

 第二場 聖杯城の大広間。騎士たちに続いてアンフォルタス王も食卓につく。先王ティトゥレルは息子に聖杯の覆いを取るように命じる。王は聖杯の光が命を永らえさせ、苦しみが続くので苦悩する(アンフォルタスの苦悩「ああ悲しいこと!」)。

 やっと開けられた聖杯が光り輝くと、再び清らかな愚か者を待てという予言の言葉が響き、パンとぶどう酒が配られて聖餐(せいさん)式が行われる。パルジファルはその様子をじっと見ていたが、パルジファルが何も理解できなかったのに失望したグルネマンツは、彼を追い出してしまう。

 

第二幕

 

 クリングゾルの魔法の城。クリングゾルはかつて聖杯の騎士団への参加を望みながらも信心不足で拒否された恨みから魔法の城を築き、魔性の花の乙女を集めて騎士たちを堕落させるようになっていた。

 クリングゾルはまずクントリーに魔法をかけ、パルジファルの誘惑を命じる。荒野を進むパルジファルの行く手は一瞬にして美しい花園に変り、美しい乙女たちが彼を誘惑しようとする。その時絶世の美女になったクントリーが「パルジファル!」と呼びかける。パルジファルは彼女が語って聞かせる物語に自分の母を思い出して、彼女の接吻を受け入れる(クントリーの語り「幼子のあなたが、母親の胸に抱かれているのを見た」)。

 しかし接吻は、彼にアンフォルタスの苦悩を理解させる契機となる。パルジファルはこの誘惑が罠であると悟ると、クントリーを退ける。クントリーの助けを求める声に応じて、クリングゾルは城壁の上からパルジファルめがけてを投げつけるが、不思議にも槍は彼の頭上で静止する。パルジファルはその槍をつかんで十字を切ると、魔法の城は崩れ落ち、花園は再び荒野に戻る。パルジファルはクントリーに、再び会うだろうと告げて立ち去る

 

第三幕

 

 第一場 第一幕第一場と同じ聖杯城に近い森の中。グルネマンツは、死んだように眠っているクントリーを助け起こす。そこに、今日は清らかな聖金曜日だというのに甲冑(かっちゅう)をつけた騎士が近づく。

 グルネマンツの求めで冑(かぶと)を外した騎士はパルジファルであり、彼の持つ聖槍に気がついたグルネマンツは深く感動する。パルジファルはグルネマンツに、自分がアンフォルタス救済のために遣わされた者であると告げると、王のもとへ案内を請う。クントリーがバルサムでパルジファルの足を洗い清め、グルネマンツも彼を祝福する。するとパルジファルは、初めての勤めだと言ってクントリーに洗礼を与える。そして聖金曜日の奇跡をたたえて三人は城へ向かう(聖金曜日の音楽)。

 第二場 聖杯城の広間。騎士たちが集まって、亡くなった先王ティトゥレルの葬儀が行われようとしている。担架に乗って運ばれて来たアンフォルタス王は先王の遺骸に向かって祈ると、もう傷の苦しみに生き永らえたくないと言い、またも聖杯の覆いを取るのを躊躇(ちゅうちょ)する。そして騎士に向って自分を殺してくれと言う。

 その時、グルネマンツとクントリーに伴われて城内に入って来たパルジファルが静かに進み出て、聖槍を王の傷口に触れる。すると傷はたちどころに治り、王の顔は歓喜にあふれる。パルジファルは皆の前を聖壇に上がって聖杯の覆いを取り、聖杯の儀式を執り行う。聖杯は輝きを増し、白鳩が舞い降りてパルジファルの頭上に止まる。クントリーは静かに息絶え、一同は救済の奇跡をたたえてパルジファルに恭順の意を示す。パルジファルは聖杯を高く掲げて皆に祝福を与える。

Reference Materials



初演
1882
年7月26日 バイロイト祝祭劇場

原作
クレティアン・ド・トロワ/「ペルシヴァル・ル・ガロワ、聖杯の物語」、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ/「パルツィファル」、
中世譚詩「マビノギオン」など

台本
リヒャルト・ワーグナー/ドイツ語

演奏時間
第1幕108分、第2幕69分、第3幕78分(カラヤン盤CDによる)

参考CD
●ヴェイソヴィチ、ホフマン、ファン・ダム、
モル/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(DG

参考DVD
●マイアー、エルミング、シュトルックマン、トムリンソン、ヘレ/バレンボイム指揮/
ベルリン・フィル、ベルリン国立歌劇場唱(Eur

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  


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