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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
ドイツオペラ
R. Wagner, Der Ring des Niebelungen
ニーベルングの指環 第三夜 神々のたそがれ[全4部]ワーグナー作曲
序 夜 ラインの黄金 1幕 Das Rheingold 1853~54
第一夜 ワルキューレ 全3幕 Die Walküre 1854~56
第二夜 ジークフリート 全3幕 Siegfried 1856~71
第三夜 神々のたそがれ プロローグと全3幕 Götterdämmerung 1869~74
❖登場人物❖
ジークフリート(T) グンター(Br) ハーゲン(B) アルベリヒ(Br) ブリュンヒルデ(S) グートルーネ(S) ワルトラウテ(Ms)他
プロローグ
ワルキューレの岩山。運命の女神である三人のノルンが運命の縄を編みながら、これまでに起こったできごとや未来に語っている。すると縄がぷっつり切れるので、三人はここで世の終わりだと叫び、母であるエルダのもとに去る。
夜が明けると、ジークフリートとブリュンヒルデが現れる。ブリュンヒルデはジークフリートに自分の馬を贈り、彼は自分の指から指環を抜いてブリュンヒルデの指にはめる。二人は愛を確かめると、ジークフリートは新天地を求めてしばしの旅に出る。
〈ジークフリートのラインへの旅〉
第一幕
ライン河畔のギービヒ家の館。ギービヒ家の当主グンターと妹のグートルーネは、アルベリヒの息子で異父弟のハーゲンと、それぞれの結婚について話し合っている。父同様奸智(かんち)にたけたハーゲンは、グンターにはブリュンヒルデを、グートルーネにはジークフリートを勧め、策は自分にまかせろと言う。
そこに角笛の音とともに、ライン河上に小舟に乗ったジークフリートがやって来て、忘れ薬が入っているとも知らずに勧められて酒を飲む。そして過去を忘れた彼は、美しいグートルーネに心を奪われて結婚を申し込む。グンターは、自分のために火に囲まれたブリュンヒルデを連れて来てくれれば妹を嫁にやろうと言うので、ジークフリートはそれを承諾してグンターと義兄弟の契りを結び、二人でライン河をのぼって行く。
岩山で指環を手に一人幸福に浸っているブリュンヒルデのところに妹のワルキューレのワルトラウテが来て、呪いから救われるために指環をラインの乙女たちに返すよう頼むが、ブリュンヒルデは大切な愛の品だからと断る。やがて隠れ頭巾でグンターの姿になったジークフリートが現れ、ブリュンヒルデに妻になるよう迫る。彼女は指環の力で貞操を守ろうとするが夫には効果がなく、ジークフリートは彼女から指環をもぎ取る。ジークフリートはブリュンヒルデとの間にノートゥングを突き立て、グンターとの信義を誓う。
第二幕
ギービヒの館の前。ハーゲンが寝ていると、夢の中に父アルベリヒが現れ、指環を手に入れろと迫る。朝になると元の姿に戻ったジークフリートが先に到着し、首尾は上々と伝えるので、ハーゲンは角笛を吹いて家臣を集め結婚式の準備をさせる(「ホイ・ホー、ギービヒ家の家来ども、ふるい立て」)。
そこに青ざめた顔のブリュンヒルデを連れたグンターが現れ、二組の結婚式が行われることになる。ブリュンヒルデは顔を上げると、グートルーネの手を取ったジークフリートの姿を認め、しかもその手に指環があるのに驚く。怒ったブリュンヒルデはグンターに指環のことを問うが、彼は指環については何も知らないし、忘れ薬を飲まされて記憶を失っているジークフリートは、槍(やり)を立てて潔白の誓いをする。
騒ぎが一段落してジークフリートたちが去った後、ハーゲンはブリュンヒルデに、復讐(ふくしゅう)に手を貸そうと話を持ちかけ、ジークフリートの弱点が背中にあることを聞き出す。グンターを加えた三人は、それぞれ復讐のためにジークフリート殺害を誓う。
第三幕
第一場 ライン河畔の低地。ラインの乙女たちが失われた黄金を嘆いているところに、狩りの獲物を追ったジークフリートが一人現れる。ラインの乙女たちは呪いがかかった指環を返してくれるように求めるが、恐れを知らないジークフリートは返さない。
そこに角笛の音がして、ハーゲン一行が現れて酒宴になる。今度は記憶を取り戻す薬を飲まされたジークフリートは、少しずつ過去の記憶を語り、ブリュンヒルデを抱きしめたところまで話した時、ハーゲンは彼の背中を槍で刺す。彼は最愛のブリュンヒルデへの別れを告げて息絶える。
〈ジークフリートの葬送行進曲〉
第二場 ギービヒ家の広間。グートルーネが不安そうにジークフリートを待っていると、彼の死体が運ばれて来る。彼女は犯人がハーゲンと知って兄を呪う。ハーゲンはジークフリートの指環の所有を巡ってグンターと争い、彼を一撃のもとに殺す。そしてジークフリートの遺体から指環を取ろうとすると、死んだジークフリートの手が高々と上がるので、思わずひるむ。
やがてブリュンヒルデが進み出て、自分がジークフリートの妻であると名乗るので、グートルーネは自分がハーゲンの奸計(かんけい)の犠牲者だと気づいて倒れ伏す。ブリュンヒルデは指環を自分の指にはめると、ライン河の岸辺に巻き(まき)を積み上げ、その上にジークフリートの遺骸を運ぶように命じる(ブリュンヒルデの自己犠牲「ラインの岸にたき木の山を積み上げよ」)。
ブリュンヒルデは薪に火を放つと、ジークフリートへの愛を歌い、愛馬に乗って燃え盛る炎の中に飛び込む。ライン河が増水して彼女は指環もろとも水の中に沈み、ついに指環はラインの乙女たちの手に戻る。指環を横取りしようとしたハーゲンも水の中に引き込まれる。
炎はワルハラ城に燃え移り、城はすっかり炎に包まれる。
Reference Materials
初演
「ラインの黄金」1869年9月22日 ミュンヘン宮廷劇場
「ワルキューレ」1870年6月26日 ミュンヘン宮廷劇場
「ニーベルングの指環」全曲上演 1876年8月13,14,16,17日 バイロイト祝祭劇場
原作
ドイツの英雄叙事詩「ニーベルングの歌」、ヤコプ・グリム/「ドイツ神話」、ジムロック/「ドイツの英雄譚」、古代北欧伝説「ヴェルズンク伝説」、古代北欧歌謡集「エッダ」など
台本
リヒャルト・ワーグナー/ドイツ語
演奏時間
「ラインの黄金」2時間16分、「ワルキューレ」3時間31分、「ジークフリート」3時間43分、「神々のたそがれ」4時間08分(ベーム盤CDによる)
参考CD
●ニルソン、リザネク、ブルマイスター、ソウクポヴァー、キング、ヴィントガッセン、アダム、タルヴェラ/ベーム指揮/バイロイト祝祭管・唱(D)
●フラグスタート、クレスパン、ニルソン、ルートヴィヒ、キング、ヴィントガッセン、ヴェヒター、ホッター/ショルティ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D)
●エヴァンス、セクンデ、ヨハンソン、エルミング、イェルザレム、トムリンソン、ヘレ/バレンボイム指揮/バイロイト祝祭管・唱(T)
参考DVD
●ベーレンス、ノーマン、ルートヴィヒ、イェルザレム、モリス、ヴラシハ、ローテリンク、モル/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
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