ニュルンベルクのマイスタージンガー[全3幕]ワーグナー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Wagner, Die Meistersinger von Nürnberg 1862~67

ニュルンベルクのマイスタージンガー[全3幕]ワーグナー作曲


登場人物

ハンス・ザックス(B) ファイト・ポーグナー(B) クンツ・フォーゲルゲザンク(T) コンラート・ナハティガル(B) ジクトゥス・ベックメッサー(B) フリッツ・コートナー(B) ワルター・フォン・シュトルツィング(T) ダヴィット(T) エヴァ(S) マグダレーネ(Ms)他

概説

 ワーグナーが参考にした物語はいろいろあるが、台本そのものはワーグナーの創作である。そして主人公ハンス・ザックスは十六世紀に実在した人物である。初期の「恋愛禁制」を除けばワーグナー唯一の喜劇であり、中世都市を舞台にした人間的な明るい抒情ドラマとして初演以来広く親しまれている。


第一幕

 

 ニュルンベルクのカタリーネ教会の内部。聖ヨハネ祭を明日に控えて、午後の礼拝が終わろうとしている(洗礼の合唱「救い主としてわれらに来たまえり」)。若い騎士ワルターが、柱の陰から金細工師ポーグナーの娘エヴァをずっと見詰めているのに彼女は気づく。ミサが終わって、乳母マグダレーネと立ち去ろうとするエヴァにワルターが声をかけると、エヴァは乳母に忘れ物を取りに行かせ、その間に二人は話し合う。ワルターは、戻って来た乳母から明日のマイスタージンガーの歌合戦の優勝者が彼女の婿になると聞いてがっかりする。ワルターは歌合戦についてもマイスタージンガーについても何も知らないからである。

 そこに乳母の恋人で靴屋の親方ザックスの徒弟ダヴィットが歌合戦の資格試験の準備にやって来るので、乳母は彼に歌合戦の要領をワルターに教えてやるように頼んで立ち去る。ダヴィットは熱心にワルターに親方になる資格や歌の規則を教えるが、あまりの煩雑さにワルターは困惑する。しかし気を取り直すと、エヴァの婿になる希望を抱いて資格試験を受けることにする。

 ポーグナーをはじめとする親方たちが入って来る。ワルターはポーグナーの推薦で試験を受けるが、記録係の市の書記ベックメッサーは、自分も歌合戦に出場してエヴァに求婚するつもりなので、恋敵の出現を警戒する。ワルターが自分の経歴を紹介してから試験が始まる(「冬の静かな炉ばたで」)。しかしベックメッサーはワルターの歌のいろいろな箇所で黒板に×印を書きつけて厳しい採点をするので、ワルターは失格を宣告される。ただ一人、靴屋の親方ザックスだけがワルターの資質を認める。


第二幕

  

 ザックスの家とポーグナーの家が向かい合う街角。徒弟たちが店じまいをしていると、乳母がダヴィットのところにこっそりやって来て、ワルターが試験に失敗したことを知る。父ポーグナーと一緒に散歩から戻ったエヴァは、乳母からワルターの失敗を聞くと、ザックスに相談に行くことにする。ザックスが仕事場に現れて、ダヴィットに仕事台の用意をさせる。ザックスは先ほどの騎士の歌の新鮮な感動を一人思い起こし、エヴァを気遣う(ザックスのモノローグ「にわとこの花が何とかぐわしく」)。そこにエヴァがそっと忍んで来て試験の結果を尋ねるが、密かに彼女を想うザックスは言葉を濁すので、彼女は落胆して家に戻る。その時、道路にワルターの姿が見えるので、エヴァは乳母を振り切って外に出てワルターに走り寄り、二人は駆け落ちを相談する。

 夜番が去った後、闇に紛れていざ駆け落ちしようとした時、先ほどから二人の話を聞いていたザックスは店の明かりで街路を照らすので、二人は夜逃げができない。そこにリュートを抱えたベックメッサーが現れ、ポーグナー家の窓の下でセレナードを歌おうとするが、ザックスが靴底を叩いて邪魔(じゃま)をするので歌にならず、怒り出す。靴音はエヴァとワルターの駆け落ちの牽制にもなり、そのうちダヴィットが出て来る。ダヴィットはベックメッサーが自分の恋人に言い寄っているのかと思って、彼に殴りかかる。近所の人々も起き出して騒ぎはますます大きくなる。ワルターとエヴァはこの騒ぎに紛れて駆け落ちしようとするが、ザックスはワルターの腕を取って自分の家に引き入れ、出て来た父親ポーグナーにエヴァを引き渡す。夜警の角笛の音に人々は家に入って、街はようやく静かになる。

 

第三幕

 

 第一場 ザックスの仕事場。ザックスは一人昨夜の騒ぎを思い出して、人の迷いについて独白する(「迷いだ、迷いだ!」)。ワルターが起きて来て、昨夜素晴らしい夢を見たと言うので、それを歌にするように勧め、ザックスがその詩を紙に書き留める。そこにベックメッサーがやって来て、てっきりザックスの詩と思い込んでその紙をもらうと、喜んで帰って行く。婚礼衣裳姿のエヴァが靴を直してもらいに来ると、ワルターが現れて先ほどの歌の続きを歌う。乳母もやって来るので、ザックスは皆を集めて新しい曲の誕生を宣言し、皆でそろって歌合戦の会場へ向かう。

 第二場 ニュルンベルク郊外の野原。さまざまな職人の組合の徒弟や娘たちが、次々にやって来て踊っている。やがてマイスタージンガーたちが入場する。ザックスが挨拶に立って今日の歌合戦の意義を述べ、優勝者はエヴァと結婚できると説明する。

 まずベックメッサーが進み出て歌うが、先ほどの詩をまだうろ覚えなので途中から調子が狂って失敗し、人々の嘲笑(ちょうしょう)を買う。憤然としたベックメッサーは、この詩の作者はザックスだと言うが、ザックスは真の作者はこの人だと言ってワルターを紹介する。ワルターは見事に歌って優勝し(優勝の歌「朝はばら色に輝いて」)、月桂冠を受ける。ポーグナーは彼に親方の資格を与えようとするが、ワルターは幸せだけ得られればよいと言う。しかし、ザックスがドイツの民衆芸術をたたえるよう語って彼を諭すので、ワルターもそれを受け入れ、エヴァと結ばれる。エヴァはワルターの頭から月桂冠を取ると、ザックスの頭に乗せる。ザックスとドイツの民衆芸術をたたえる人々の合唱で幕となる。


Reference Materials



初演
1868
年6月21日 ミュンヘン宮廷劇場

原作
ヤコプ・グリム/「古いドイツのマイスター歌唱について」、ヴァーゲンザイル/「マイスタージンガーの優雅な芸術、その発端、継続、裨益、教理」など

台本
リヒャルト・ワーグナー/ドイツ語

演奏時間
第1幕99分、第2幕43分、第3幕123分(カラヤン盤CDによる)

参考CD
●ドナート、ヘッセ、コロ、シュライアー、リッダーブッシュ、アダム/カラヤン指揮/ドレスデン国立歌劇場管・ライプツィヒ放送唱(EMI

参考DVD
●ヨハンソン、ウィンベルイ、ブレンデル、シュルテ、ハーレム、ペパー/デ・ブルゴス指揮/ベルリン・ドイツ・オペラ管・唱(Art

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  


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