ウィンザーの陽気な女房たち[全3幕]ニコライ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

O. Nicolai, Die lustigen Weiber von Windsor 1845~49
ウィンザーの陽気な女房たち[全3幕]ニコライ作曲


❖登場人物❖

サー・ジョン・ファルスタッフ(B) フルート氏(Br) ライヒ氏(B) フェントン(T) シュペールリヒ(T) カーユス博士(B)  フルート夫人(S) ライヒ夫人(Ms  アンナ・ライヒ(S)

概説

 ニコライは、ウェーバーとワーグナーの中間に位置するドイツのロマンティック・オペラの代表的な作曲家である。これは若くして死んだ彼の最後のオペラで、ヴェルディの「ファルスタッフ」と同じシェイクスピアの喜劇を題材にしている。

 

第一幕

 

 第一場 フルート家とライヒ家の間の庭。ファルスタッフからもらった恋文を手に、フルート夫人が彼の厚顔無礼な態度に憤慨している。やはりファルスタッフからまったく同文の恋文を受け取ったライヒ夫人と、彼に復讐(ふくしゅう)しようと怪気炎をあげる。入れ替わりにフルート、ライヒ、それに金持ちで少々頭が足りないシュペールリヒ、医師カーユス博士が登場する。カーユスとシュペールリヒはライヒの娘アンナに求婚している。ライヒはシュペールリヒを気に入っているが、夫人はカーユスの方が娘にふさわしいと思っている。そこに優しくて気がよいフェントンがやって来る。アンナは彼を愛しているが、ライヒは貧乏な彼を相手にしない。

 第二場 フルート家の一室。フルート夫人はファルスタッフを懲らしめるついでに嫉妬深い主人もやり込めようと、ファルスタッフの来訪を待っている(「さあ、早くここへ」)。ライヒ夫人が打ち合わせ通りにフルートにご注進の手紙を書いたと知らせに来るが、罠とも知らないファルスタッフが意気揚揚とやって来るので陰に隠れる。ファルスタッフはさっそくフルート夫人に言い寄るが、ライヒ夫人がドアを強く叩いて、嫉妬に狂ったフルートが男たちを引き連れて間男を殺しに戻って来ると告げるので驚く。そこでフルート夫人は洗濯籠の中にファルスタッフを押し詰め、下男たちに命じてテムズ川に投げ入れてしまう。家中探しても男が見つからずに怒るフルートに対して、夫人は夫の焼きもちをなじるので、一同フルートの妻に対する不当な仕打ちを非難する。

第二幕

  

 第一場 翌朝のガーター亭の酒場。川に投げ入れられたファルスタッフは、気を取り直そうと酒を注文する。つけが溜まっている彼に、給仕はしかたなしに一杯だけ持って来る。そしてフルート夫人からの置き手紙を渡す。手紙には昨夜の事件の詫びとともに再び来訪下さいと記されているので、ファルスタッフはたちまち元気を回復し、折から集まった市民たちと酒代を賭けて飲みくらべをして勝ってしまう(酒の唄「母に抱かれた幼時から」)。

そこにバッハという偽名でフルートが現れ、金を渡してファルスタッフにフルート夫人を口説き落として欲しいと申し入れる。それがフルートと知らないファルスタッフは、得意げに今日フルート夫人に会う約束があると言って引き受ける。今日こそファルスタッフを捕らえようと意気込むフルートは、本心を隠しながらともに喜びを歌って別れる

 第二場 ライヒ家の庭。アンナの散歩時間を狙ってやって来たシュペールリヒとカーユスはライバル意識を燃やすが、人の気配に植え込みの陰に隠れる。やって来たのはフェントンで、甘い歌声でセレナードを歌う(「きけ森でひばりが歌うのを」)。隠れている二人の歯軋(はぎし)りを尻目に、家から出て来たアンナはフェントンと愛を確かめ合う。

 第三場 フルート家の一室。ファルスタッフは上機嫌でフルート夫人に言い寄るが、またもライヒ夫人が現れ、昨日の件を知って怒り狂ったフルートが帰って来ると言う。そこで今度はファルスタッフを女中の叔母に変装させる。フルートは家中探しまわるが、間男は見つからない。ライヒ、シュペールリヒ、カーユスも駆けつけてフルートをからかう。その時ふとった老婆が奥の部屋から出てくるが、もともとふとった女中の伯母が嫌いなフルートは彼女(実はファルスタッフ)を家から叩き出してしまう。


第三幕

 

 第一場 ライヒ家の一室。フルート夫妻、ライヒ夫妻、アンナが揃って昼食を取っている。真相を明かされたフルートは、もう妻に頭が上がらない。一同力を合わせてファルスタッフを懲らしめようと、彼をウィンザーの森に誘い出すことにする。ライヒ夫人はウィンザーの森に伝わる狩人の伝説を物語る(「猟師ハーンの話」)。皆が妖精の姿に変装し、ファルスタッフにも猟師ハーンの姿に変装して来させることになる。アンナの両親は、この際それぞれ自分が婿にと思う男にアンナを森の教会に連れ出させようと、彼女にそれぞれ希望する衣装の色を指定する。ところがアンナは両親の希望を裏切って純白の妖精姿になり、フェントンと結婚することを決意する(「さあ、これで決心がついたわ」)。

 第二場 深夜のウィンザーの森。樫の木が立つ広場に月が上がる。猟師ハーンの姿をしたファルスタッフが現れ、フルート夫人とライヒ夫人に寄り添われてご満悦である。そこに妖精たちが現れるので、迷信深い彼は慌てて地面にうつ伏せる。純白の衣装を着た妖精の女王ティタニアに扮したアンナは、妖精の王オベロンに扮したフェントンと手を取り合って現れ、愛を歌って姿を消す。そこに猟師ハーンの姿をしたライヒが登場して角笛を鳴らそうとするが、誰か人間が近くにいるから音が出ないと言い、犯人として探し出したファルスタッフを妖精たちに針で痛めつけさせる。そして自分は実はフルートだと正体を明かすので、ファルスタッフも観念する。その騒ぎの間に緑の姿のカーユスと赤い姿のシュペールリヒは、互いに相手をアンナと思い込んで手を取り合って立ち去るが、騙されたとライヒ夫妻に食ってかかる。

 そこに教会で結婚式を済ませたアンナとフェントンが現れ、父母に赦しを請うので全員は仲直りし、ファルスタッフも二人の結婚を祝う。

 

Reference Materials



初演

1849年3月9日 ベルリン宮廷歌劇場

原作
ウィリアム・シェイクスピア/「ウィンザーの陽気な女房たち」

台本
ヘルマン・フォン・モゼンタール/ドイツ語

演奏時間
第1幕57分、第2幕51分、第3幕35分(下記CDによる)

参考CD
●マティス、ドナート、シュヴァルツ、シュライアー、ヴァイクル、モル、フォーゲル/クレー指揮/
ベルリン国立歌劇場管・唱(BC

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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