三人のピント[全3幕]ウェーバー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

C. M. v. Weber, Die Drei Pintos 1820~21, 1887~88

三人のピント[全3幕]ウェーバー作曲


❖登場人物❖

ドン・パンタレオーネ・ロイス・デ・パシェコ(B) ドン・ゴメス・デ・フレイロス(T) 

クラリッサ(S) ラウラ(Ms) ドン・ガストン・ヴィラトス(T) アンブロジオ(Br) 

ドン・ピント・デ・フォンセカ(B) イネス(S) 他


概説
「魔弾の射手」が完成に近づいた頃、ウェーバーは次のオペラの題材を探し始めた。オーソドックスな前作とは対照的にコミカルで軽い作品を意図し、ドレスデンの知識人グループ仲間の重鎮ヘルが新聞に発表した小説を取り上げることにして、ヘル自身がオペラ用の台本に書き直した。作曲を開始してからも他のオペラの委嘱を受けたり、健康上の理由などもあって作業はしばしば中断され、第二幕のはじめまでがスケッチとして残されたところでウェーバーは世を去った。 

 そこでウェーバーの未亡人カロリーネはこの曲を完成させてもらいたいと、ドレスデン宮廷歌劇場楽長の後継者ライシンガーやマイアベーアなどに依頼したが、いずれも不首尾に終わった。その後ウェーバーの孫のカールの代になって再び完成への努力が再開され、青年マーラーが作曲を引き受けることになった。

 マーラーは極力ウェーバーのスタイルを尊重してジングシュピールの形式にすることとし、カールの協力を得て作品を完成させ、マーラーの指揮によるライプツィヒ初演は大成功を収めた。



第一幕

 

 舞台はスペインのサラマンカとマドリードの間にあるペナランダの村の居酒屋。学生たちが、卒業して役人になるためにマドリードに赴くガストンの送別会を開いている。ガストンはマドリードで優しい心の持ち主の娘を見つけようと歌い、あまりにも高い居酒屋の勘定を払って無一文になる。そこに居酒屋の美人の娘イネスが姿を現し、すぐ立ち去る。

 そこに田舎貴族ピントが、父親同士の決めた結婚相手の花嫁クラリッサと会うために遠路はるばるやって来る。ガストンはピントに都会的な女性の扱い方を伝授する。ピントはお礼にイネスも同席した食事をガストンにおごるが、満腹になったピントは寝込んでしまう。ガストンと従者のアンブロジオは、その間にピントのチョッキから彼の父親フォンセカが花嫁の父親ドン・パンタレオーネに宛てた手紙を抜き取って、ピントよりも先に花嫁のところに到着しようと出発する。

 

第二幕

 

 マドリードのドン・パンタレオーネの家。召使や使用人とともに、娘のクラリッサや女中のラウラも集まっている。パンタレオーネは明日にも到着するピントがクラリッサの婿になると伝えるが、ドン・ゴメスという恋人がいるクラリッサは父親の意見に納得しない。そんなことは気にかけないパンタレオーネは祝宴の準備を命じる。ラウラはピントを追い返してしまうと言って、クラリッサを慰める。

 クラリッサは、ゴメスがご法度の決闘をしたので姿を隠していなければならず、彼を父親に紹介できないのを悩む。また、昔クラリッサの父親がピントの父親フォンセカの世話になった事情が語られる。ラウラはゴメスのところに相談に出かけ、クラリッサは「甘い喜びの希望に満ちた夢は」を歌う。連れられて来たゴメスは、何とかしてピントを追い返そうと言って思案する。

 

 

第三幕

 

 ドン・パンタレオーネ家の祝宴の大広間。ラウラは召使たちと飾り付けに忙しい。そこにピントになりすましたガストンが、アンブロジオを従えてやって来る。ゴメスとピントを装うガストンは自己紹介するが、クラリッサをめぐって対抗意識をむき出しにする。しかしゴメスの訴えを聞いたガストンは、身を引くことにする。ガストンはピントからかすめ取ったパンタレオーネ宛ての手紙をゴメスに渡し、ピントになりすましてクラリッサと結婚するように勧める。

 パンタレオーネ家の召使たちが入って来て、ゴメスとガストンを見比べながら、クラリッサの結婚を祝う。パンタレオーネが着飾ったクラリッサを連れて広間に入場する。ゴメスはガストンから受け取った手紙をパンタレオーネに見せるので、彼はすっかりゴメスをピントと思い込む。結婚の祝宴が始まったところに、本物のピントがやって来る。

 彼はクラリッサに対して、昨日ガストンから教わった求愛方法をぎこちなく披露するので、一同は嘲笑する。ピントは昨日演技を教わったガストンを見つけて、自分がピントであると証明してくれるよう頼むが、手紙の泥棒呼ばわりをしてしまうので、ガストンから決闘を迫られて逃げ出す。

 ガストンはパンタレオーネに逃げた彼が本物のピントだと明かし、ガストンとゴメスは自分の名を名乗る。パンタレオーネは呆れて怒り出すが、ガストンのとりなしによって、クラリッサが栄誉ある貴族出身のゴメスと結婚することを認める。

 

Reference Materials



初演
1888
年1月20日 ライプツィヒ市立劇場

原作
カール・ザイデル/小説「花嫁争奪戦」

台本
テオドール・ヘル/ドイツ語

演奏時間
第1幕43分、第2幕37分、第3幕35分(下記CDによる)

参考CD
●グルントヘーバー、クルーゼ、ポップ、モル、プライ/ベルティーニ指揮/ミュンヘン・フィル、ネーデルランド・ヴォーカル・アンサンブル(RCA

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



 

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