魔弾の射手[全3幕]ウェーバー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

C. M. v. Weber, Der Freischütz 1816~21

魔弾の射手[全3幕]ウェーバー作曲

 

❖登場人物❖

オットカール(Br) クーノ(B) アガーテ(S) エンヒェン(S) カスパール(B) マックス(T) 隠者(B) キリアン(Br)他

概説

 ドイツのロマン主義オペラの確立に決定的な役割を果たした不朽の名作。この成功を契機にして、ワーグナーに至るドイツの国民オペラは大きなうねりとなって拡がった。作曲者の指揮による初演は、序曲をはじめ何曲もアンコールされるという空前の大成功を収めた。


第一幕

 

 ボヘミアの森の中の酒場の前。明日の大切な御前射撃大会を前に、射撃の名手であるはずの狩人マックスは、農夫キリアンにも負けて農民たちにからかわれる。マックスは、明日の大会で優勝すれば恋仲の森林保護官クーノの娘アガーテと結婚できることになっている。そこに狩人の一団とともに通りかかったクーノは、御前射撃大会の由来を語って聞かせ、マックスを励まして立ち去る。農民たちは楽しそうに踊って酒場へ繰り出す。

 絶望的になったマックスは、アガーテへの恋と明日への不安な気持ちを歌って立ち去ろうとすると(「苦しみは希望を奪い森を抜け、野を越えて」)、狩人仲間で彼のライバルでもあるカスパールが現れる。彼はマックスに言葉巧みに酒を勧め、百発百中の魔弾を手に入れて明日の射撃大会に優勝するようす(「この悲しみの浮き世には」)。

 実はカスパールは悪魔ザミエルに魂を売って魔弾を手に入れたが、明日までに新しい犠牲者を差し出さなければ命を失うことになっている。はじめはカスパールの誘いにためらっていたマックスも、魔弾の試射の効力に驚嘆して、真夜中に狼谷へ魔弾の鋳造に行くことに同意する。カスパールは計略がうまく運び、これで明日は俺(おれ)の勝ちだとほくそ笑む(「黙っていなよ」)。


第二幕

 

 第一場 クーノの家の一室。アガーテは恋人マックスの来るのが遅いので心配している。そして、先祖の肖像画の額が壁から落ちたのを不吉がるので、傍らにいるいとこのエンヒェンが明るく元気づける(「やさしい姿の若者が」)。アガーテは、今朝森の隠者を訪れてお守りに白いばらの花をもらって来たと話すが、エンヒェンはあまり気に病まないようにと言って寝室に去る。一人残ったアガーテは、月に照らされたバルコニーに歩み出ると神に向かって祈り、恋人への想いを恍惚(こうこつ)として歌う(アガーテの祈り「まどろみが近寄るように静かに、清らかな」)。

 ようやくマックスがやって来てアガーテを固く抱き締めるが、彼の落ち着かない様子にアガーテは不安になる。マックスは狼谷の近くに仕留めた鹿が置いてあるので、取りに行かねばならないと言うと、アガーテが止めるのも聞かずにそそくさと出かけてしまう。

 第二場 狼谷。森の深い谷では見えない死霊が飛び交い、不気味な声をあげている。先に来ているカスパールは悪魔ザミエルを呼び出すと、彼に向かって、もうすぐ新しい犠牲者を連れて来るのですでに売り渡した命をもう三年間延ばしてくれるように頼む。ザミエルは、魔弾の六発までは射手の望むところに当たるが、七発目は自分の思うままで、その犠牲はマックスかお前だと言って消える。

 カスパールが魔弾の鋳造に取りかかると、ようやくマックスが岩山の上に姿を現わすのでカスパールは安心する。マックスは恐ろしい岩山を降りながら、母の亡霊が浮かんで彼を引き止めようとするので躊躇するが、カスパールはアガーテの幻影を見せて谷へ誘う。

 妖怪が飛び交い、犬の遠吠えや馬のいななきが不気味に聞こえる中を、カスパールとマックスが魔弾をひとつずつ数えながら鋳造する声が岩山にこだまする。嵐がだんだん強くなり、やっと七つ目を造り終えると、二人は夢中でザミエルの名を呼ぶ。すると黒い姿のザミエルが現れる。マックスは十字を切って地に倒れる。

 

第三幕

 

 第一場 森の中の射撃大会。狩人たちが魔弾の威力で好調な今日のマックスの腕前に感心していると、当のマックスがカスパールと現れる。七発の魔弾を分けあった二人は、あと一発ずつを残しているが、カスパールは自分の一発が最後の七発目にならないようにこっそり射ち果たしてしまう。

 第二場 アガーテの部屋。アガーテは祭壇に向かって祈る(「黒雲が陽を隠しても」)。彼女は現れたエンヒェンに、昨夜白い鳩になった自分がマックスに撃たれる悪い夢を見たと語るので、エンヒェンは陽気に笑い飛ばしてアガーテを慰める(「亡き伯母が見た夢に」)。そこに乙女たちが婚礼の花冠を持って来て歌うが(「花嫁のために冠を」)、箱を開けてみると葬式用の冠が入っている。驚いたアガーテは気を取り直すと、隠者から授かった白いばらで冠を編んでくれるように頼む。

 第三場 再び森の中の射撃大会。狩人たちが勇壮に狩りをたたえる(狩人の合唱「狩人の喜びは」)。いよいよ射撃大会も終わりに近づき、領主オットカールはマックスに、あの白い鳩を撃てと命令する。

 マックスが狙いを定めた時、アガーテは夢と同じ情景なので「射たないで」と叫ぶが間に合わない。アガーテは地面に倒れるが気を失っただけで、弾が当たったのは木陰に隠れていたカスパールだった。カスパールはザミエルを呪って死ぬ。領主に詰問されるままにマックスは一部始終を告白するので、怒った領主はマックスの追放を命じる。その時隠者が現れて彼の罪を取りなし、一年の猶予を与えるよう説くので、皆もこの隠者の意見を受け入れる。一同は領主の寛大なはからいをたたえて幕になる。

Reference Materials



初演
1821
年6月18日 ベルリン王立劇場

原作
ヨハン・アウグスト・アペル、フリードリヒ・ラウン/「怪談集」

台本
フリードリヒ・キント/ドイツ語

演奏時間
第1幕47分、第2幕42分、第3幕41分(カイルベルト盤CDによる)

参考CD
● グリュンマー、オットー、ショック、プライ、フリック/カイルベルト指揮/ベルリン・フィル、ベルリン市立歌劇場唱(EMI

● ヤノヴィッツ、マティス、シュライアー、ヴァイクル、アダム/クライバー指揮/ドレスデン国立歌劇場管、ライプツィヒ放送唱(DG

参考DVD
● マルジョーノ、リッターブッシュ、シルヴァスティ、ヴェラー、ラウヒ/メッツマッハー指揮/ハンブルク国立歌劇場管・唱(Art

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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