魔笛[全2幕]モーツァルト作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

W. A. Mozart, Die Zauberflöte 1791

魔笛[全2幕]モーツァルト作曲


❖登場人物❖

ザラストロ(B) タミーノ(T) 夜の女王(S) パミーナ(S) パパゲーノ(Br、B) 

パパゲーナ(S) モノスタートス(T) 弁者(B)他


❖概説❖

 友人の俳優兼歌手兼劇場興行師であるシカネーダーが書きおろした台本に作曲したモーツァルトの最晩年の傑作であると同時に、ドイツのジングシュピールの様式を確立した名作である。物語はおであるが、フリーメーソンの教義とも密接な関係を持っている。シカネーダー一座による初演以来ますます人気を高め、モーツァルトの生前に百回を越える公演が行われた。


第一幕

 

 第一場 岩山の中。大蛇に追われた王子タミーノが逃げて来て気を失う。すると夜の女王に仕える三人の侍女が現れて大蛇を退治し、夜の女王に報告に行く。

 正気づいた王子は、鳥刺しパパゲーノが陽気に歌いながらやって来るので(「おれは鳥刺し」)、彼が大蛇を退治してくれたものと思って礼を言う。パパゲーノも自分の手柄にして自慢するので、戻って来た三人の侍女に罰として口に鍵をかけられてしまう。侍女は王子に夜の女王の娘パミーナの肖像を見せて、その娘が悪者ザラストロに捕らわれていると言うので、王子は彼女を助け出そうと誓う(「何と美しい絵姿だろう」)。

 雷鳴とともに夜の女王が現れ、苦しみを切々と訴える(「若者よ、恐れるな私の運命は苦しみに満ちて」)。三人の侍女はパパゲーノの口鍵を外して王子のお供を命じ、護身用に王子には魔法の笛を、パパゲーノには銀の鈴を与える。王子とパパゲーノは、三人の童子に導かれてザラストロの住む城へ向かう。

 第二場 ザラストロの城内の豪華なエジプト風の広間。捕らわれのパミーナに奴隷頭のモノスタートスが言い寄っているところに、鳥の羽をつけたパパゲーノが忍び込んで、黒人のモノスタートスと鉢合わせをする。お互いに異様な風態なのに驚いて逃げ出すが、すぐに戻ったパパゲーノは、パミーナを夜の女王の娘と確認すると、もうすぐ王子が助けに来ると伝える。パミーナは喜び、パパゲーノと美しい二重唱を歌って(「恋を知るほどの殿方には」)、ザラストロの留守に逃げ出そうと立ち去る。

 第三場 神聖な森の中。三人の童子に導かれた王子が、ザラストロの神殿の前に到着する。中央の門から現れた弁者との問答から、ザラストロは悪者ではなくて徳の高い聖人で、パミーナが無事であるのを知る。喜んだ王子が魔法の笛を吹くと、森からさまざまな動物が出て来てその音に耳を傾ける。パパゲーノとパミーナは笛の音を頼りに逃げて来るが、モノスタートスらが追って来るので、魔法の鈴で彼らを追い払う。

 その時突然ザラストロが帰城するので、パミーナは逃亡の許しを請う。そこにモノスタートスに捕らえられた王子が引き出され、パミーナとひと目で恋に落ちる。ザラストロは邪恋のモノスタートスを罰し、王子とパミーナには、恋が成就する前に試練を受けなければならないと言い渡す。一同はザラストロをたたえる。

第二幕

 

 第一場 椰子の茂る森。ザラストロと僧侶たちは問答を交わし、王子は試練を受ける資格を認められる。ザラストロはイシスとオシリスの神をたたえる(「イシス、オシリスの神よ」)。

 第二場 神殿の中庭。沈黙の試練が始まる。王子は進んで試練を受けるが、パパゲーノは美しくて若い娘を得られると聞き、しぶしぶ試練に参加する。三人の侍女の誘惑にも負けず王子は見事試練に耐え、気絶したパパゲーノも僧侶に促されて次の試練に向かう。

 第三場 美しい庭園の中。パミーナがまどろんでいると、またもモノスタートスが忍び寄って来るが、突然現れた夜の女王に追い払われる。夜の女王は、目を覚ました娘に激しい調子でザラストロに対する復讐(ふくしゅう)心を歌い(「復讐の心は地獄のように」)、ザラストロを殺せと言って短剣を渡す。パミーナは思い悩むが、すべてを知るザラストロは彼女を許し(「この神聖な聖堂には」)、モノスタートスを追放する。

 第四場 大広間。王子とパパゲーノは沈黙の試練を続けている。パパゲーノは食物と飲物を与えられて大喜びする。そこへ奇妙な老婆が現れて、パパゲーナと名乗ると姿を消す。三人の童子がザラストロに取り上げられた魔法の笛と銀の鈴を返してくれるので、王子が笛を吹くと、その音を聞いたパミーナが現れる。だが何も答えない王子に、失恋したと思ったパミーナは寂しげに歌って立ち去る(「愛の喜びは露と消え」)。王子は次の試練に向かい、ライオンの出現に驚くパパゲーノは王子に助けを求める。

 第五場 神殿の地下。ザラストロは王子が第一の試練に合格したのを喜び、次の試練を告げる。王子の後を追うパパゲーノは雷鳴にびっくりするが、酒で陽気になって可愛い娘が欲しいと言うと(「可愛い娘か女房がいれば」)、再び老婆が現れて、ちらっと娘に変身する。

 第六場 小さな庭園。悲嘆にくれたパミーナは、母親がくれた短剣で自殺を図ろうとするが三人の童子に止められ、王子が彼女を愛していると伝えられる。

 第七場 大きな岩山。王子はパミーナに会うことを許される。そして魔法の笛の力で二人は無事に火の試練と水の試練をくぐり抜ける。

 第八場 再び小さな庭園。絶望したパパゲーノは首つり自殺をしようとしている。しかし現れた三人の童子に教えられた通り鈴を鳴らすと、パパゲーナが現れるので、二人は抱き合って喜ぶ(「パ、パ、パ、パパゲーナ」)。一方、モノスタートスに導かれた夜の女王と三人の侍女は最後の復讐を試みるが、雷鳴とともに地獄に落とされる。

 舞台は一転して太陽の世界となり、ザラストロはパミーナとタミーノを祝福し、一同もイシスとオシリスの神をたたえる。

Reference Materials



初演
1791
年9月30日 アン・デア・ウィーン劇場

原作
クリストフ・マルティン・ヴィーラント/童話集「ジンニスタン」中の「ルル、あるいは魔笛」など

台本
ヨハン・エマヌエル・シカネーダー/ドイツ語

演奏時間
第1幕70分、第2幕86分(ショルティ盤CDによる)

参考CD
●ローレンガー、ドイテコム、バロウズ、プライ、フィッシャー=ディースカウ/ショルティ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D

参考DVD
●ポップ、グルベローヴァ、アライサ、ブレンデル/サヴァリッシュ指揮/バイエルン国立歌劇場管・唱(PH

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



 

◀︎◀︎◀︎ コジ・ファン・トゥッテ          ティト王の慈悲 ▶︎▶︎▶︎



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