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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
ドイツオペラ
W. A. Mozart, Cosi fan tutte 1789~90
コジ・ファン・トゥッテ[全2幕]モーツァルト作曲
❖登場人物❖
フィオルディリージ(S) ドラベルラ(S、Ms) グリエルモ(Br) フェルランド(T)
デスピーナ(S) ドン・アルフォンソ(B)
❖概説❖
台本の内容が非道徳的であるという理由で、長い間モーツァルトのオペラとしてはあまり高い評価は得られなかったが、近年では均整の取れた美しさと優れた音楽によって、傑作のひとつに数えられている。歌はアリアよりもアンサンブルが重視される洗練されたオペラである。題名は「フィガロの結婚」の第一幕の三重唱の台詞からとられており、「女はみんなこうしたもの」という意味である。
第一幕
第一場 ナポリのカフェ。青年士官グリエルモとフェルランドが、おのおの恋人のフィオルディリージとドラベルラ姉妹の貞操を自慢していると、老哲学者アルフォンソは女の貞操なんか当てにならないと言う。そして姉妹には何も打ち明けないよう二人に誓わせて、自分の言う通りに行動すると約束させ、彼女らの貞操を試す賭けをする。
第二場 海辺の庭園。フィオルディリージとドラベルラ姉妹が恋人を待っていると、アルフォンソが悲しげに現れ、恋人たちは急に戦地へ行くことになったと告げる。軍服姿の青年士官はそれぞれ恋人に別れを告げ、軍隊に加わって戦地に向かう。一人アルフォンソは次の行動に取りかかろうとつぶやく。
第三場 フィオルディリージとドラベルラの家の一室。女中のデスピーナが朝食用のチョコレートを持って来るが、悲しみでヒステリックになった姉妹は取りつくしまもない。デスピーナは恋人がいないなら浮気をすればよいと言うので、姉妹は憤慨して出て行ってしまう。そこにアルフォンソがやって来てデスピーナを買収し、次の芝居を進める。
アルバニア人に変装したフェルランドとグリエルモがやって来る。デスピーナはすぐに二人の正体に気づくが、姉妹は気づかずに女中に早く彼らを追い払うように命じる。
現れたアルフォンソが彼らは自分の旧友だと紹介すると、図に乗った二人の男は大げさに愛を告白するので、怒ったフィオルディリージは自分の貞操は岩のように固いと言って妹と出て行く(「岩のように動かず」)。二人の若者は賭けに勝ったと大笑いするが、アルフォンソは勝負はまだこれからだと言う。フェルランドは満足そうに歌うが(「恋人の愛の息吹きは」)、アルフォンソはすぐに次の作戦を練る。
第四場 芝生のある庭園。恋人を思って嘆いている姉妹の前に二人のアルバニア人が駆け込んで来て、恋がかなわぬなら死んでしまうと毒を仰ぐ。さすがの姉妹も心配になって女中に医者を呼びに行かせる。
しばらくすると、デスピーナが医者に変装して登場する。彼女は磁石をかざして怪しげな治療を施すと、二人は息を吹き返し、姉妹に抱きついて口づけを求める。それをけしかけるアルフォンソとデスピーナと、怒る姉妹の混乱の中で幕になる。
第二幕
第一場 第一幕第三場と同じ部屋。デスピーナは女も浮気のひとつぐらいしてみればと浮気を勧めるので(「女も十五になれば」)、姉妹も次第にその気になってくる。そこにアルフォンソが現れて、姉妹を庭へ誘う。
第二場 海辺の庭園。船が接岸して、楽師たちが音楽を奏でている。二人のアルバニア人が遂げられない愛を嘆いていると、アルフォンソが姉妹を連れてくる。そしてドラベルラとグリエルモ、フィオルディリージとフェルランドというカップルを作って立ち去る。はじめはぎこちない二組の男女はだんだん打ち解けると、フェルランドとフィオルディリージは散歩のために姿を消す。
グリエルモが真剣にドラベルラを口説くと、彼女は簡単に陥落するので、彼はフェルランドを気の毒がる。二人が手を取り合って出て行った後、フィオルディリージが後悔して逃げて来る。追いかけて来たフェルランドの切々たる訴えに彼女の心は乱れ、良心の呵責(かしゃく)に苦しんで立ち去る(「恋人よ、どうぞ許して下さい」)。
姉妹が去ると、フェルランドはフィオルディリージの貞操の固さをほめるが、自分の恋人ドラベルラの変心に落胆し、グリエルモに慰められる(「女よ、君らはよく浮気する」)。グリエルモはアルフォンソに賭金の半分を要求するが、アルフォンソは勝負は明朝までだと言う。
第三場 部屋の中。フィオルディリージはドラベルラの変節を責めるが、彼女は恋は成り行きにまかせると言う(「恋はくせもの」)。フィオルディリージも自分の心が新しい恋に傾いて行くのに悩むが、気を取り直してデスピーナにグリエルモの軍服を持って来させると、戦場の恋人のもとに行こうとする。そこにフェルランドが来て、恋がかなわないなら自分を殺せと言うので、彼女もついにその恋を受け入れる。グリエルモは怒り狂うが、アルフォンソは“女はみんなこうしたもの”と言い、皆は唱和する。
第四場 大広間。フィオルディリージとフェルランド、ドラベルラとグリエルモの二組の結婚式が執り行われる。公証人に化けたデスピーナの立ち合いで結婚誓約書が交わされた時、軍隊の合唱が二人の士官の帰還を知らせる。二人のアルバニア人姿の若者は奥の部屋に隠れると、変装を取って現れ、姉妹を詰問するので姉妹はうろたえる。許しを請う姉妹に二人の青年は再びアルバニア人の姿になって種を明かす。事情を理解した姉妹はだまされたと怒るが、アルフォンソの取りなしで恋人たちは元のさやに収まり、めでたく幕となる。
Reference Materials
初演 1790年1月26日 ブルク劇場(ウィーン)
台本 ロレンツォ・ダ・ポンテ/イタリア語
演奏時間
第1幕85分、第2幕80分(ベーム盤CDによる)
参考CD
●シュヴァルツコップ、シュテフェック、ルートヴィヒ、クラウス、タッデイ、ベリー/ベーム指揮/フィルハーモニア管・唱(EMI)
●ジャンス、フィンク、オッドーネ、ギューラ、ボーネ、スパニョリ/ヤーコプス指揮/コンチェルト・ケルン、ケルン室内唱(HMF)
参考DVD
●マーシャル、マレー、バトル、アライサ/ムーティ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN)
●バルトリ、ニキテアヌ、バルツァ、サッカ、ヴィドマー、ショーソン/アーノンクール指揮/チューリヒ歌劇場管・唱(Art)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止