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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
ドイツオペラ
W. A. Mozart, Don Giovanni 1787
ドン・ジョヴァンニ[全2幕]モーツァルト作曲
❖登場人物❖
ドン・ジョヴァンニ(Br) ドンナ・アンナ(S) 騎士長(B) ドン・オッターヴィオ(T)
ドンナ・エルヴィラ(S) レポレロ(B) ツェルリーナ(S) マゼット(B)
❖概説❖
オペラ・ブッファという喜劇のスタイルで書かれてはいるが、内容そのものは悲劇である。
「フィガロの結婚」の大当たりで気をよくしたプラハ国立劇場の委嘱で作曲された。モーツァルト自身の指揮による初演は大成功を収め、プラハ市民を沸き立たせた。
第一幕
第一場 騎士長の邸宅の中庭。従者レポレロは、この家の娘のところに忍び込んだ主人ドン・ジョヴァンニを待ちながら愚痴をこぼしている(「夜も昼も休む間もなく」)。そこに騎士長の娘アンナに追われてドン・ジョヴァンニが逃げて来る。騒ぎを聞いて騎士長が駆けつけるが、ドン・ジョヴァンニは騎士長を刺し殺して逃走する。アンナは恋人オッターヴィオに復讐(ふくしゅう)を誓わせる。
第二場 街道の夜。ドン・ジョヴァンニが逃げて来ると、一人の女が嘆きながら通りかかる(「ああ!誰が私に告げてくれるのでしょう」)。ドン・ジョヴァンニは懲りもせずに女に声をかけると、それが以前捨てたエルヴィラなのにびっくりして、後をレポレロに任せて退散する。レポレロは、被害者はあなただけではないと言って主人の過去の恋人の名簿を彼女に見せる(カタログの歌「奥さん、これが恋人のカタログ」)。
第三場 村の広場。今宵結婚する村娘ツェルリーナと農夫マゼットを祝って村人たちが踊っているところに、ドン・ジョヴァンニとレポレロが通りかかる。ドン・ジョヴァンニはさっそくツェルリーナを口説きにかかるが(「互いに手を取り合って」)、再びエルヴィラが現れ、ドン・ジョヴァンニを非難してツェルリーナを連れ去ってしまう(「さあ、この裏切り者を避けて」)。
ドン・ジョヴァンニが、今日はついてないとぼやいていると、アンナがオッターヴィオを連れて現れ、ドン・ジョヴァンニが犯人であるとも知らずに、父親騎士長の仇討ちの加勢を彼に頼む。そこにまたエルヴィラが現れてドン・ジョヴァンニを非難するので、彼は、この女は頭がおかしいのだと言いつくろう。
しかしその声から、ドン・ジョヴァンニこそ父を殺した犯人であるのにアンナは気づく。オッターヴィオは一人彼女のために復讐を誓う(「彼女の幸せこそ私の願い」)。入れ違いにドン・ジョヴァンニが現れて、レポレロから村人たちをうまく館に連れ込み、酒をふるまったと言う報告を受ける。そこで上機嫌に「シャンパンの歌」を歌って息巻く(「酒がまわったら」)。
第四場 ドン・ジョヴァンニ邸の庭先。焼きもちを焼くマゼットに、ツェルリーナはわびて仲直りする(「ぶってよ、マゼット」)。そこにドン・ジョヴァンニがやって来てツェルリーナを口説こうとするが、マゼットに邪魔されて取りつくろう。夜になると、仮面をつけたオッターヴィオ、アンナ、エルヴィラがやって来て、ドン・ジョヴァンニの宴に招き入れられる。
第五場 ドン・ジョヴァンニ邸の大広間。人々が酒に酔っている間に、ドン・ジョヴァンニはツェルリーナを別室に連れ込む。しかし彼女に騒がれるので、レポレロを犯人に仕立てようとするが、人々は細工を見抜いてドン・ジョヴァンニに詰め寄る。彼は混乱に乗じてその場を逃げ出す。
第二幕
第一場 路上。主人に愛想をつかしたレポレロが暇を願い出るが、金に目がくらんでたちまち取り下げる。ドン・ジョヴァンニは今度はエルヴィラの女中に目をつけ、レポレロに自分の服を着せて邪魔なエルヴィラを呼び出し、遠くへ追いやる。
そしてドン・ジョヴァンニは一人窓辺でセレナードを歌うが(「おいで窓辺に、かわいい娘」)、そこにマゼットと村人がドン・ジョヴァンニを懲らしめようと現れる。レポレロ姿のドン・ジョヴァンニは、従者のふりをして村人たちを分散させて立ち去らせると(「半分はこちらへ」)、マゼットをぶちのめして逃げる。マゼットは駆けつけたツェルリーナに優しく介抱される(薬屋の歌「恋人よ、さあこの薬で」)。
第二場 アンナ邸の暗い中庭。主人に化けたレポレロとエルヴィラが逃げ込んでいると、アンナとオッターヴィオに見つかってしまう。エルヴィラはドン・ジョヴァンニと思い込んでレポレロをかばうが、皆に問い詰められたレポレロは正体を明かし、すきを見て逃げ出す。オッターヴィオはますますドン・ジョヴァンニが犯人であると確信し、恋人のために再び復讐を誓う(「私の恋人を慰めて」)。
第三場 前場に同じ。一人残ったエルヴィラは、ドン・ジョヴァンニが悪者とわかってもなお彼をすっかりあきらめきれない胸のうちを歌う(「何というふしだらな…あの恩知らずは約束を破り」)。
第四場 塀で囲まれた墓地。逃げて来たドン・ジョヴァンニとレポレロが落ち合い、戦果を語り合っていると、突然騎士長の石像の厳粛な声が響く。ドン・ジョヴァンニは、レポレロに石像を夕食に招待させる。
第五場 アンナ邸の暗い部屋。オッターヴィオは早くアンナと結婚したいと言うのに対して、彼女はもう少し待って欲しいと答える(「いいえ違います…私はあなたのもの」)。
第六場 ドン・ジョヴァンニ邸の広間。ドン・ジョヴァンニが食事を楽しんでいると、エルヴィラが現れて生活を改めるよう頼むが、彼は相手にしない。そこでエルヴィラは帰りかけるが、戸口から彼女の悲鳴が聞こえる。様子を見に行ったレポレロが、石像がやって来たと報告する。
現れた石像はドン・ジョヴァンニに改悛を迫るが、彼が拒否すると、床が割れてドン・ジョヴァンニは地獄の炎に飲み込まれる。駆けつけたアンナたち一同はレポレロから事の成り行きを聞くと、それぞれ今後の身の振り方を歌って幕になる。
Reference Materials
初演
1787年10月29日 プラハ国立劇場
原作
ジョヴァンニ・ベルターティ/「石の客」、ティルソ・デ・モリーナ/「セビリアの女たらしと石の客」、モリエール/「ドン・ジュアン」など
台本
ロレンツォ・ダ・ポンテ/イタリア語
演奏時間
第1幕93分、第2幕85分(カラヤン盤CDによる)
参考CD
●トモワ=シントウ、バルツァ、バトル、ウィンベルイ、レイミー/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(DG)
参考DVD
●グリュンマー、デラ・カーザ、ベルガー、デルモータ、シェピ、エーデルマン/フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
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