イドメネオ[全3幕]モーツァルト作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

W. A. Mozart, Idomeneo 1780~81

イドメネオ[全3幕]モーツァルト作曲


❖登場人物❖

イドメネオ(T) イダマンテ(T) イリア(S) エレットラ(S) アルバーチェ(T、Br) 高僧(T)他


❖概説❖

 正式には「クレタの王イドメネオ」といい、モーツァルトのオペラ・セリアの代表作である。初演はイドメネオとイダマンテの役に適した歌手がいなかったので、さしたる成功を収めることができなかった。その後長く忘れられてしまったが、一九三一年スイスのバーゼルで蘇演されて以来、広く上演されるようになった。

  

第一幕

 

 第一場 クレタの王宮のイリアの部屋。トロイの王女イリアは、ここクレタ島の王宮に捕らわれの身になっているうちに、敵方のクレタの王子イダマンテを恋するようになり思い悩んでいる(「父よ、兄よ、さようなら」)。イダマンテが現れ、父王イドメネオの艦隊が無事嵐を乗り切って海上に姿を現したので、その祝いにすべてのトロイ人を自由にすると言い、彼女への愛を告白する。イリアは敵同士だからと彼の求愛を拒むが、イダマンテはそれは自分のせいではないと言ってなおも求愛する(「僕には罪がなかろうと」)。

 トロイの捕虜たちは足枷(あしかせ)を外され、クレタの島民とともに平和と愛を喜ぶ。それを見たアルゴス王の王女エレットラは捕虜解放を非難する。その時イドメネオの親友アルバーチェがイドメネオの死の悲報を伝える。エレットラはイダマンテが心変わりしてイリアを愛してしまったのに激しく嫉妬(しっと)し、復讐(ふくしゅう)を誓う。

 第二場 断崖に囲まれた波の荒れ狂う海辺。海神ネプチューンを恐れる人々の声が聞こえる。実はイドメネオは死んでおらず、漂流の末に命からがらこの海辺に漂着した。彼はネプチューンの怒りを鎮めるために、陸に上がって最初に会った人をいけにえとして捧げると誓ったことを思い出して後悔する。

 そこに父の安否を探ろうとイダマンテがやって来て、漂着した男が父王なので驚き喜ぶ。しかしイドメネオは息子をいけにえに捧げねばならない皮肉な運命を呪い、急いで立ち去る。イダマンテは、せっかく会えた父がどこかへ姿を消してしまったと嘆く。帰還した兵士たちが上陸すると、クレタの女たちは喜び彼らに駆け寄る。人々はネプチューンに感謝の言葉を捧げる。

第二幕

 

 第一場 宮殿の中の一室。イドメネオは自分の息子をネプチューンのいけにえに捧げなければならなくなった事情をアルバーチェに打ち明け、王子を助けるための助言を求める。イドメネオは彼の忠告に従い、イダマンテをエレットラとともにアルゴスへ行かせて、ネプチューンの怒りが鎮まるのを待つことにする。イリアが現れ、イドメネオに向かって自分の悲しい運命を語り、これからはイドメネオを父と思ってすがると語るので(「たとえ実の父を失い」)、イドメネオは彼女が息子を愛しているのを知って胸を痛める(「胸のうちにある海は」)。

 一方、エレットラはイダマンテとともにクレタを離れて故国に戻れることを喜び、今度こそ恋仇に勝ってイダマンテを自分のものにしようと心をときめかせ(「愛しき人よ」)、船に向かう。

 第二場 シドンの港。エレットラは出港に際して希望に溢れた気持ちを表明する。船乗りたちも穏やかな海に出港しようと歌う。出港を見送りに来て息子の身を案じるイドメネオ、喜びにひたるエレットラ、密かにイリアとの別れに心残りを感じるイダマンテ、三者三様の気持ちが歌われてから、イダマンテは父に別れを告げる。

 その時天に異様な兆候があらわれるので、天に慈悲を祈って船に乗り込もうとする。すると急に嵐が巻き起こり、海が荒れ狂うので人々は恐れおののく。イドメネオが神託に背いてイダマンテを逃がそうとしたので、ネプチューンが怒って怪物を差し向けたのである。ネプチューンの怒りの原因を知っているイドメネオは自分の犯した罪に後悔するが、神が罪なき者を罰しないように願う。人々は恐怖に逃げまどう。

第三幕


 第一場 宮殿の庭。イリアがそよ風に託して、イダマンテへの憧れを歌っていると(「そよ吹く風」)、イダマンテの姿が見えるので、ここにいるべきか去るべきか思い悩む。

 彼女の前に現れたイダマンテは、死を覚悟して怪物と戦うと言うので、イリアは彼に死んではいけないと言い、二人は愛の喜びにひたる。そこにイドメネオとエレットラが現れて、その様子を見てしまう。イダマンテは父王に、なぜ自分を避けるのかと問い、エレットラは嫉妬に燃える。イリアはあくまでもイダマンテと行動をともにすると言い張るが、イドメネオは息子に一人で早く立ち去れと言う。四人がそれぞれの気持ちを歌うと、イダマンテは一人で出て行く。そこにアルバーチェが現れて、シドンの町がネプチューンによって破壊され、扇動された民衆が暴動に走っていると伝え、神々に祈る。

 第二場 宮殿前の広場。高僧が町の禍(わざわい)を取り除くためにはネプチューンへのいけにえが必要だと王に迫るので、イドメネオは、実はいけにえはイダマンテだと明かす。高僧は天に向かって、王子には罪がないと訴え、人々は恐怖におののく。

 第三場 ネプチューンの大神殿の前。イドメネオと祭司たちが、いけにえを捧げるから怒りを鎮めてほしいとネプチューンに祈っている。遠くからイダマンテが怪物を退治して勝利に湧く声が聞こえる。やがてイダマンテが現れ、父王に自分をいけにえに捧げるように迫り、父子二人は別れを惜しむ。

 その時イリアが駆け寄り、自分を犠牲にするよう申し出る。するとネプチューンの像が崩れ落ち、イドメネオは退位してイダマンテが即位し、イリアを妃にせよと言う神託の声が聞こえる。エレットラは怒りに震え、イドメネオは神託に従うと人々に告げる。一同は喜びに神をたたえる。


Reference Materials

初演
1781
年1月29日 ミュンヘン宮廷劇場(現在のキュヴィリエ劇場)

原作 アンドレ・カンプラの同名オペラ

台本
アッバーテ・ジャンバッティスタ・ヴァレスコ/イタリア語

演奏時間
第1幕62分、第2幕46分、第3幕87分(アーノンクール盤CDによる)

参考CD
●ヤカール、パーマー、シュミット、エクィルツ、ホルヴェーク、ティアー/アーノンクール指揮/チューリヒ歌劇場管・唱(T

参考DVD
●コトルバス、ベーレンス、パヴァロッティ、フォン・シュターデ、アレクサンダー/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  







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