アドリアーナ・ルクヴルール[全4幕]チレア作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

F. Cilea, Adriana Lecouvreur 1898~1902
アドリアーナ・ルクヴルール[全4幕] チレア作曲

 
❖登場人物❖

アドリアーナ・ルクヴルール(S) マウリツィオ(T) ブイヨン公爵(B)  ブイヨン公爵夫人(Ms) ミショネ(Br) ジャズイユの僧院長(T)  ジュヴノ嬢(S) ダンジュヴィル嬢(Ms)他


❖概説❖
 実在したコメディ・フランセーズの花形女優アドリエンヌ・ルクヴルールを主役にしたオペラで、他の登場人物もほとんどそのモデルが存在した。アドリエンヌはまた、サラ・ベルナールの当たり役としても知られている。

第一幕


 コメディ・フランセーズの控室。本番前の舞台裏はごった返している。なかでも老舞台監督のミショネは雑用にてんてこ舞いである。そこに女優デュクロのパトロンのブイヨン公爵が、伊達男のジャズイユ僧院長を連れて入って来る。舞台衣裳姿の女優アドリアーナが台詞を練習しながら現れる。ブイヨン公爵がその美しさをたたえると、彼女は謙虚に答える(「わたしは創造の神のつつましい従僕にすぎません」)。ブイヨン公爵はデュクロが楽屋で手紙を書いていると聞くと、僧院長に金を与えてその手紙を手に入れるよう命じて去る。
 後に残ったミショネは、密かに好意を抱いているアドリアーナに結婚をほのめかすが、彼女の方は自分の恋人のことを話し出す。開幕を知らせるベルの音がしてミショネが去ると、入れ違いに恋人のザクセン伯爵マウリツィオが平服で入って来る。アドリアーナはマウリツィオを伯爵の旗手と思い込んでいる。久しぶりの逢瀬に二人は固く抱き合い(「甘く優しいほほえみ」)、終演後に会うことを約束して、アドリアーナは彼の胸に小さなスミレの花束を刺して舞台に向かう。
 代わってブイヨン公爵と僧院長が召使を買収して入手したデュクロの手紙を持って現れる。こともあろうに自分の別荘を使って、今夜彼の愛人デュクロがマウリツィオと密会すると知って、ブイヨン公爵は嫉妬する。それなら自分も同じ別荘で同時にマウリツィオやアドリアーナや皆を集めてパーティを開き、密会を台なしにしてやろうと計画する。
 実はデュクロの手紙は、マウリツィオとブイヨン公爵夫人との政治的な仲立ちをするものだったのである。マウリツィオは約束が二つ重なってしまったので、アドリアーナとの約束よりも政治を優先させようとして、アドリアーナに断りのメモを人づてに渡して別荘に向かう。一方アドリアーナは、ブイヨン公爵にパーティでザクセン伯爵を紹介すると言われ、あることを考える。  


第二幕


 今はデュクロの別荘になっているブイヨン公爵の別荘。自らもマウリツィオに恋しているブイヨン公爵夫人が、苛立ちながら彼の到着を待っている(「苦い喜び、甘い苦しみ」)。現れたマウリツィオが胸にスミレの花束を刺しているのを見て公爵夫人が嫉妬するので、彼は花束を彼女にあげてしまう。
 マウリツィオはフランスによるザクセン援助の礼を言って立ち去ろうとするが、公爵夫人は女の直感から誰か女性ができたと想像して激しく彼に迫る。マウリツィオが困り果てているところに(「心身ともにくたくたで」)、ブイヨン公爵の馬車の音がするので、公爵夫人は隣の部屋に隠れる。 入って来たブイヨン公爵と僧院長は、マウリツィオがデュクロと密会していたものとばかり思っている。そこにアドリアーナも到着し、紹介されたマウリツィオが旗手ではなく、ザクセン伯爵本人と知って驚くが、彼の熱烈な愛の言葉に二人は変わらぬ愛を誓う。
 皆が去ると、マウリツィオはアドリアーナに、隣の部屋に隠れているのはブイヨン公爵たちが考えているデュクロではなく、事情のある大切な人なので逃がしてやって欲しいと打ち明ける。だが暗闇で会話を交わすうちに、アドリアーナは女性が恋仇のブイヨン公爵夫人であると知り、逃がしてやったのを悔しがる。ミショネは公爵夫人が慌てて落として行った腕輪を拾ってアドリアーナに渡す。


第三幕


 ブイヨン公爵邸の大広間。公爵夫人はマウリツィオの恋人は誰だろうと思案するが、夜会に現れたアドリアーナの声で彼女と知る。恋敵を確かめようと、マウリツィオは決闘で重傷を負ったと嘘をつくと、アドリアーナは失神してしまう。
 そこに当のマウリツィオが現れて、デマを笑い飛ばしてロシアでの戦勝の話をする。バレエが終わった後、公爵夫人がアドリアーナにスミレの花束を見せると、アドリアーナは公爵夫人に腕輪を見せ、互いにライバルであるのを確認する。公爵夫人がアドリアーナに「捨てられたアリアドネ」のモノローグを所望すると、彼女は当てこすりに、夫を裏切ってみだらな恋をささやく「フェードラ」の中の一節を激しい調子で朗唱するので、公爵夫人は憎悪のまなざしを送る。


第四幕


 アドリアーナの家の一室。アドリアーナはマウリツィオをめぐって公爵夫人と激しい恋の争いをして以来、体調がすぐれず病床に伏している。見舞いに訪れたミショネに、アドリアーナは嫉妬で苦しむより死にたいと漏らす。そこにコメディ・フランセーズのジュヴノ、ダンジュヴィルなど四人の仲間がアドリアーナの誕生祝いにプレゼントを持って訪れ、早く舞台に復帰するよう励ます。
 その時、マウリツィオを差し出し人とした小箱が届く。皆を別室に去らせてアドリアーナが箱を開くと、異様な匂いに彼女は倒れそうになる。中には彼女がかつてマウリツィオに贈ったスミレの花束が色褪せて入っている。ひどい仕打ちに打ちひしがれた彼女は、哀れな花を慈しんでから暖炉に投げ込む(「あわれな花よ」)。
 そこにマウリツィオが現れる。彼の心からわびる言葉にアドリアーナの誤解も解け、彼の求婚に二人の間には再び感動的な愛が取り戻される。それも束の間、アドリアーナは急に容態が悪くなる。実はスミレの小箱は公爵夫人のしわざで、毒ガスが仕込んであったのである。意識の薄れるアドリアーナは、必死にマウリツィオとミショネに取りすがりながら息を引き取る。






Reference Materials


初演

1902年11月6日 テアトロ・リリコ(ミラノ)

原作 
ウージェーヌ・スクリーブ、エルネスト・ウィルフリード・ルグーヴェ共作の同名戯曲

台本 
アルトゥーロ・コラウッティ/イタリア語

演奏時間 
第1幕35分、第2幕32分、第3幕26分、第4幕33分(カプア―ナ盤CDによる)

参考CD
● テバルディ、シミオナート、デル・モナコ/カプアーナ指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)

参考DVD
● デッシー、ボロディナ、ラリン/プリニョーリ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DEN)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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