アルルの女[全3幕]チレア作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

F. Cilea, L’Arlesiana 1897
アルルの女[全3幕] チレア作曲

 
❖登場人物❖

ローザ・ママイ(Ms) フェデリーコ(T) 白痴の少年(Ms) ヴィヴェッタ(S)  バルダッサーレ(Br) メティーフィオ(Br) マルコ(B)


❖概説❖
 フェデリーコが第二幕で歌うアリア「ありふれた話」だけが飛びぬけて有名だが、オペラ全体にも甘く美しい旋律が流れている。はじめ四幕物のオペラとして作曲されたが、翌年三幕版に圧縮されて上演、さらに十四年後に大改訂が加えられて現在の形になった。

第一幕


 カステレートにある大農場ママイ家の中庭。井戸端に腰を下ろしている老羊飼いバルダッサーレは口にパイプをくわえながら、この家の次男で皆に白痴と呼ばれている少年にお伽噺を聞かせている(バルダッサーレの物語「二つの火玉のように光る狼の目が」)。この地方では白痴がいる家には幸運が宿るという言い伝えがあるが、バルダッサーレはこの白痴がだんだんと物わかりのよい子供になりつつあるので不安がっている。
 そこに興奮した女農場主ローザが現れ、長男のフェデリーコがアルルの町の女にひと目ぼれしてしまったので、町に住む弟のマルコに彼女のことを調べてもらうのだと言う。フェデリーコに密かに思いを寄せる村娘ヴィヴェッタがやって来るが、彼が素性も知れないアルルの女と結婚しようとしていると聞いて驚く。
 その時アルルから帰ったフェデリーコが元気よくやって来て、アルルの女の素晴らしさをたたえる。一足遅れてマルコも到着し、すぐにでも身なりを整えてアルルの女の両親のもとに結婚の申し入れに行くように勧める。バルダッサーレは落ち込んでいるヴィヴェッタを慰める。
 一人バルダッサーレが残っていると、馬方のメティーフィオがローザへの面会を求めてやって来る。彼は、アルルの女は自分の情婦だが、彼女はローザの息子と知り合ってから自分をのけ者にしていると言い、彼女が自分を愛している証拠だと言って彼女がメティーフィオに宛てた二通の恋文を預けて立ち去る。驚いたローザは村人たちと陽気に騒いでいるフェデリーコを呼び、その手紙を見せる。愕然としたフェデリーコは、井戸端に座り込んで泣き崩れる。


第二幕


 ヴァカレス湖のほとり。傍らには暗い繁みがあり、反対側には羊小屋がある。夕暮れも近づき、ローザとヴィヴェッタは昨夜から姿を消してしまったフェデリーコを探しまわっている。ヴィヴェッタはローザを慰め、ローザはヴィヴェッタにもう少し着飾ってフェデリーコの気を惹いて彼を慰めてやって欲しいと言って着付けを直してやったりする。ヴィヴェッタは内心は喜びながらも恥ずかしそうに逃げ去るので、ローザはそのあとを追う。
 入れ代わりに白痴を連れたバルダッサーレが現れる。腹を空かせた白痴が何か食べものはないかと羊小屋を開けると、そこに悄然としたフェデリーコの姿を発見する。バルダッサーレは死んでしまいたいと言う彼を慰め、一緒に山へ行って働くことを勧めるが、フェデリーコはそこに残り、バルダッサーレは羊を集めるために山に登って行く。フェデリーコは胸にしまってあった恋文を取り出すと、恋人たちはみな恋文を持っているのに、自分にあるのは彼女の裏切りの証拠の手紙だと嘆く。そして傍らで草枕をして寝込んでしまった白痴の弟に優しくマントをかけてやりながら、自分もこのように心安く眠ればあの女のことを忘れられるだろうにと悲嘆にくれる(フェデリーコの嘆き「ありふれた話」)。
 そこにヴィヴェッタが忍び寄り、子供の時からずっと恋していたことを打ち明けてフェデリーコを慰めるが、彼の心は溶けようとしない。そして、お前だって誰にどんな恋文を書いているかわからないと叫んで繁みの中に姿を消す。やって来たローザにヴィヴェッタは彼の冷たい仕打ちを打ち明けるが、そこにフェデリーコが戻って来る。ローザは諄々として彼を諭すので、感動した彼はついにヴィヴェッタに「今でも僕の病気を治してくれると言った言葉に変わりはないね」と彼女の心を確かめると、彼は優しく彼女の手を取る。みなは二人の結婚を祝福して喜ぶ。


第三幕


 ママイ家の大広間。村娘たちが祝日と結婚式のための飾りつけの準備をしたり、楽しそうにダンスに興じたりしている。そして祝いに駆けつけたバルダッサーレとともに立ち去る。二人になると、まだフェデリーコの本心に不安を抱いているヴィヴェッタは、彼に改めて愛を確かめる。そして彼女は、なぜあの恋文をまだ持っているのかと訊ねる。彼がそれは今朝バルダッサーレに返したと言うので、彼女は喜んで彼の胸に抱かれる。バルダッサーレがその様子を満足げに眺めているところに、メティーフィオが例の恋文を返してくれと迫るので、彼はそれは君の父親に返したと答える。馬方はその件はわかったが、実は今夜アルルの女を誘拐して羊の群の中を走って行くのだと言う。
 この話を通りかかって聞いたフェデリーコは、奴が僕のライバルだったのかと、ヴィヴェッタが制止するのも聞かずに木槌を振り上げて彼に襲いかかる。それに気づいて駆けつけたローザが二人の中に入ったので馬方は逃げ、ローザとヴィヴェッタはフェデリーコを彼の部屋へ連れて行く。ローザは激しく懺悔して神に祈る(「母親であること、それは地獄」)。そこに白痴が入ってきて、僕はもう馬鹿ではないから何でもわかると言うので、ローザは喜ぶと同時に不安を覚える。その時フェデリーコは、一晩中戦い続けた羊は夜が明けるともう生きることはできないとつぶやきながら納屋の階段を駆け登る。恐怖に駆られたローザとヴィヴェッタが止めるのも聞かず、絶望に駆られたフェデリーコは上の裏窓から身を投げる。





Reference Materials


初演

1897年11月27日 テアトロ・リリコ(ミラノ)

原作 
アルフォンス・ドーデ/「風車小屋だより」の「アルルの女」

台本
レオポルド・マレンコ/イタリア語

演奏時間 
第1幕31分、第2幕33分、第3幕31分(下記CDによる)

参考CD
●ガッリ、タッシナーリ、タリアヴィーニ、シルヴェリ、カルマッシ/バジーレ指揮/RAIトリノ響・唱(WF)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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