アンドレア・シェニエ[全4幕]ジョルダーノ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

U. Giordano, Andrea Chénier 1895~96
アンドレア・シェニエ[全4幕] ジョルダーノ作曲

 
❖登場人物❖

アンドレア・シェニエ(T) マッダレーナ・ディ・コワニー(S) カルロ・ジェラール(Br) ベルシ(Ms) 密偵(T) ルーシェ(B) コワニー伯爵夫人(Ms) マデロン(Ms) フーキエ・タンヴィル(Br)他


概説

 ソンツォーニョ出版社のオペラ・コンクールに応募したジョルダーノは、マスカーニに一等を奪われたが、才能を認められて次々にオペラを発表し、ついに成功したのがこの作品である。アンドレア・シェニエはフランス革命当時に実在した革命詩人であり、この時代背景の上に繰り広げられる恋愛ロマンは美しい旋律に彩られた傑作である。


第一幕


 田舎にあるコワニー伯爵の家。1789年の冬の日の午後。召使たちが夜会の準備に忙しく立ち働いている。下僕(げぼく)のジェラールは貴族の派手な生活に批判的であるが、コワニー家の美しい令嬢マッダレーナをひそかに慕っている。コワニー伯爵夫人はジェラールに夜会の準備状態を尋ね、マッダレーナに衣裳の着替えを促す。
 やがて入って来た客人たちと、伯爵夫人は挨拶を交わす。小説家フレヴィルは、伯爵夫人に詩人アンドレア・シェニエを紹介する。パリから戻った修道院長はパリの政状不安を伝えるので、一同は不安を覚える。伯爵夫人はシェニエに即興詩を所望するが、彼は辞退する。
 そのやりとりを聞いていたマッダレーナはシェニエに話しかける。彼女が詩は恋のように気紛れで命令されてもできないと言う彼の言葉をからかうので、憤然としたシェニエは愛の尊さと自由体制を謳歌する詩を歌う(「ある日青空を」)。さらに教会などの旧体制を非難するので、修道院長や貴族は耳をそむけるが、マッダレーナは心を捉えられる。
 立ち聞きしていたジェラールも感動し、農民の一団を引き入れると、彼をなじる伯爵夫人の目の前で下僕の制服を脱ぎ捨てて出て行く。伯爵夫人はあまりのことにソファの上に倒れるが、すぐ気を取り直し、舞踏会はそのまま続けられる。


第二幕


 五年後の革命下のパリの街角。革命家同士の権力争いで、シェニエは密偵に監視されている。マッダレーナの侍女ベルシが密偵をまこうとしてからかう。友人のルーシェがシェニエに近づいて通行証を渡して、早くパリを去るよう忠告するが、シェニエは最近「希望」という名前で何度か手紙を寄こす謎の女性とここで密会するために踏みとどまると言う。
 そこに、密偵の通告を受けたロペスピエールと、彼の部下として革命の中堅リーダーになっているジェラールが、群集の歓呼の中にやって来る。ジェラールもマッダレーナに思いを寄せて彼女を探している。ベルシがシェニエにそっと近づいて、今夜「希望」という名の女に会えると伝えるのを、密偵がこっそり聞いている。
 夜になると、マッダレーナが現れてシェニエに話しかけ、シェニエもそれが誰であるかを認める。彼女は革命後身の危険も顧みずにずっとシェニエを頼りに生きてきたと言うので、彼も永遠に一緒だと答える。
 そこにジェラールと密偵が現れて、マッダレーナを捕らえようとするので、シェニエはルーシェの手助けで彼女を逃がすと、決闘でジェラールに傷を負わせる。間もなくジェラールは相手がシェニエだとわかると、五年前の夜会での詩人に対する敬意を思い出して、検察リストに乗っているから逃げるようにと忠告し、密偵には相手が誰だかわからなかったと言う。  


第三幕


 革命裁判の行われる大広間。革命家が民衆に向かって財政危機を訴えて寄付を募っている。ジェラールの番になると、彼の切々たる演説に皆こぞって寄付金を差し出す。
 密偵が、シェニエを逮捕してマッダレーナをおびき寄せるようジェラールに進言する。ジェラールはシェニエ告発状への署名をためらい、恋のために革命の正義を掲げる自分の卑劣な行為を自嘲するが(「国を裏切る者」)、ついに署名してしまう。そこにマッダレーナが現れて、かつての下僕ジェラールにシェニエの助命を嘆願する。ジェラールは自ら仕掛けた罠を明かした上で、彼女に対する愛を告白し、以前から思いを募らせていたと打ち明ける。
 マッダレーナは初め彼の求愛を拒否するが、シェニエの生命の代償ならと考え直す。そして母が死んで一人きりになって以来、愛を頼りにひっそりと生きて来た経緯を綿々と語る(「亡くなった母を」)。さすがのジェラールも彼女の純真な心に打たれて、シェニエ助命に努力すると約束し、革命議長宛ての嘆願書を書く。
 裁判が始まり、群集が騒ぐ中に次々と死刑が宣言される。シェニエの番になると、彼は祖国愛に燃える自分が裏切り者にさせられる理由はないと言い、ジェラールも告白状が偽りであると告げて彼を弁護するが、興奮した群集には何の役にも立たない。シェニエはマッダレーナの姿を見つけて、これで満足して死ねると言う。死刑の判決が下り、マッダレーナは絶望する。


第四幕


 サン・ラザーレ監獄の中庭。シェニエは何か書きものをしている。彼は夜ふけに訪れたルーシェに、今書いたばかりの辞世の詩を読み上げる(「五月の晴れた日のように」)。
 ルーシェと入れ替わりに、ジェラールの計らいでマッダレーナが面会を許されてやって来る。彼女は看守を買収して、翌日処刑される女死刑囚イディア・レグリエの身代わりになる。ジェラールは最後の助命嘆願にと、ロペスピエールのもとへ走る。シェニエとマッダレーナはともに死ねる喜びを歌い、愛の勝利をたたえて固く抱き合う(「あなたのそばで心は静まり」)。
 やがて夜が明けると、太鼓の音とともに囚人護送車が着き、処刑者の名前が読み上げられる。シェニエに続いて「イディア・レグリエ」という名が呼ばれると、マッダレーナは「私です」と答えて車に乗り、二人はそろってギロチンの処刑場へ送られて行く。







Reference Materials


初演

1896年3月28日 ミラノ・スカラ座

原作
ジュール・バルビエの同名小説

台本
ルイージ・イッリカ/イタリア語

演奏時間 
第1幕28分、第2幕26分、第3幕38分、第4幕16分(ガヴァツェーニ盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、コッソット、デル・モナコ、バスティアニーニ、マイオニカ/ガヴァッツェーニ指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)
●マルトン、タカーチュ、カレーラス、ザンカナロ/パターネ指揮/ハンガリー国立響、ハンガリー放送唱(SONY)

参考DVD
●ベニャチコヴァー、ドミンゴ、カプッチッリ、バルビエリ/サンティ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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