フェドーラ[全3幕]ジョルダーノ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

U. Giordano, Fedora 1898
フェドーラ[全3幕] ジョルダーノ作曲

 

❖登場人物

皇女フェドーラ・ロマゾフ(S) ロリス・イパノフ伯爵(T) ジョヴァンニ・デ・シリュウ(Br)   ロレック(B) オルガ・スカレフ伯爵夫人(S) 医師ポロフ(B) グレック(B)他


❖概説❖

 「アンドレア・シェニエ」で大成功を収めたジョルダーノがその次に書いたのがこの作品である。上演される機会も前作に次いで多く、この二作が彼の代表作になっている。これはヴェリスモ・オペラの作風によっていて、比較的コンパクトな構成の中にドラマが凝縮された名作である。


第一幕


 サンクトペテルブルクにある衛兵大尉ウラディーミロ・アンドレイヴィチ伯爵家の一室。明日金持ちの未亡人である皇女フェドーラ・ロマゾフとの結婚式を迎えることになっているウラディーミロ家では、大尉の帰りを待ちながら使用人たちがドミノ遊びに興じ、大尉が自由に羽を伸ばせるのも今夜限りだ、そして皇女の持参金で借金生活からも救われるだろうと噂をしている。そこに着飾ったフェドーラが訪ねて来るので、馬丁はクラブまで大尉を迎えに行く。フェドーラは大尉の机の上にある彼の写真を見つけると、その美しさをたたえる(「おお、誠実さに輝く大きな瞳」)。すると突然警官グレックが現れ、外交官のデ・シリュウらに抱えられて傷ついた大尉が運び込まれる。医者のポロフが呼ばれる。驚くフェドーラを前に、グレックは使用人たちに尋問を始める。
 彼らの話によると、大尉はどうやら暗殺者にピストルで狙われたようで、二発の銃声がした後、クラブの扉を開けて一人の男が飛び出し、雪の上に血を流しながら走り去って行ったので血の跡をつけて行ったところ、寂しい館の中で血にまみれた大尉を発見したと言う。そして今朝がた家を訪れて来た一人の紳士が容疑者として浮かび上がる。門番はそれが家の前に住むロリス・イパノフ伯爵であることを思い出すので、警官とその部下たちは伯爵の逮捕に向かう。その時医者が大尉の死を告げ、警官は犯人の逃亡を知らせるので、フェドーラは意識を失って崩れる。


第二幕


 パリにある皇女フェドーラ・ロマゾフ邸のサロン。パーティはたけなわである。フェドーラは集まった客たちに茶菓のサービスをしているが、その中にデ・シリュウを見つけると、彼にロシアの時からの古い友達だと言ってロリス伯爵を紹介する。フェドーラはロリス伯爵からウラディーミロ大尉の死の真相、つまり大尉殺害の自白を引き出そうとして彼に接近している。今夜ロシアに帰るポロフは、彼の身を案じて注意を与える。スカレフ伯爵夫人オルガは有名なピアニストであるボレスラオをフェドーラに紹介した後、デ・シリュウを避けてピアニストの腕を取るので、デ・シリュウは侮辱されたと腹を立てる(「ロシアの婦人は二つの顔をお持ち」)。一方ロリス伯爵はフェドーラの魅力の虜になっている(「愛さずにはいられぬこの思い」)。
 その時ポロフがフェドーラにロシアへ帰る別れの挨拶をするが、その対話から彼女も翌日帰国することが明らかになる。それを知ったロリス伯爵は、彼女と一緒にロシアへ帰れない不運を語る。理由を尋ねるフェドーラに対して、彼はある犯罪事件の嫌疑がかかっているからだと答える。ボレスラオのピアノ演奏を背景にして、フェドーラはなお彼にかけられている嫌疑の内容を追及すると、ついにウラディーミロ大尉殺害の罪を告白する。そしてその理由は一時間後に明かすと言って立ち去る。

〈間奏曲〉

 一人になったフェドーラは、グレックを呼ぶ。そしてサンクトペテルブルク宛ての手紙を書き終わってその発送を命じると、大尉殺害を告白したロリス伯爵逮捕の手はずを整える。やがて現れたロリス伯爵は、ウラディーミロ大尉を殺したのは女性関係のためだったと話し始める。それによれば、彼は自分の妻ワンダが大尉とねんごろになったことを知り、ちょうど大尉がフェドーラと結婚する前夜にその現場に踏み込んだ。そして撃ち合いの結果、彼を殺したと言うのである。その証拠として大尉がワンダに宛てた手紙も見せられ、ついにフェドーラもロリス伯爵の説明に納得し、大尉への愛は憎悪の感情に変わる。そしてロリス伯爵への愛を告白する。外ではグレックの警笛が聞こえる。フェドーラは帰ろうとするロリス伯爵を今夜は危険だからと引き止めると、二人はしっかりと抱き合う。


第三幕


 スイスにあるフェドーラの別荘。フェドーラとロリス伯爵は幸せな生活を送っている。一方ピアニストのボレスラオに捨てられたオルガは元気がない。ロリス伯爵が郵便局へ出かけた留守の間にデ・シリュウが現れ、ボレスラオは秘密警察のスパイかもしれないと話すので、気丈なオルガもさすがにショックを受ける。デ・シリュウは彼女をサイクリングに誘う。デ・シリュウは彼女が席を外した間に、ロリス伯爵の兄が秘密警察の手によって殺され、それを聞いた母親も悲しみのために死んだとフェドーラに伝える。
 フェドーラは彼らを殺したのは自分の責任だと言い、二人がサイクリングに出た後、ロリス伯爵が救われるよう祈る(「正義の神よ」)。そこに戻って来たロリス伯爵は、友人のポロフから「君は赦された」という電報を受け取って喜ぶが、それより前に書かれたポロフからの手紙には、パリのロシア婦人の密告により兄と母が死んだことが伝えられている。彼はその女への復讐を誓い、フェドーラの「その女を赦して」という必死の頼みも聞かずに馬車で急いで出かける。フェドーラはペンダントに忍ばせていた毒薬を紅茶に入れる。密告した女がフェドーラだと気がついて戻ったロリスは激しく彼女を責めるが、彼女は一気に毒入りの紅茶を飲み干す。彼はポロフに何とか彼女を助けてくれと言うが、すでに手遅れである。フェドーラはロリス伯爵に赦しを請い、彼もフェドーラをしっかりと抱きしめる。そして最後の口づけをしながら、フェドーラは息絶える。







Reference Materials


初演

1898年11月17日 テアトロ・リリコ(ミラノ)

原作 
ヴィクトリアン・サルドゥ/「フェドーラ」

台本 
アルトゥーロ・コラウッティ/イタリア語演奏時間 第1幕23分、第2幕36分、第3幕32分(パターネ盤CDによる)

参考CD
●オリヴェロ、カッペルリーノ、デル・モナコ、ゴッビ、モンレアーレ、マイオニカ/ガルデッリ指揮/モンテ・カルロ国立歌劇場管・唱(D)
●マルトン、キンチェス、カレーラス、ネーメト、コヴァーチ、グレゴール/パターネ指揮/ハンガリー放送響・唱(SONY)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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