三王の恋[全3幕]モンテメッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

I. Montemezzi, L’Amore dei Tre Re 1913
三王の恋[全3幕] モンテメッティ作曲

 
❖登場人物❖
アルキバルド(B) マンフレード(Br) フィオーラ(S)  アヴィート(T) フラミーニオ(T)他

概説
 モンテメッツィはヴェルディ以後のイタリアのオペラ作曲家として重要で、プッチーニの抒情性とヴェリスモなどの影響を受けながら、独自の路線を歩んだ。特にこの作品にはワーグナーの影が濃く、独立したアリアはなく一貫した音楽として書かれている。トスカニーニにも高く評価された名作である。 

 作曲家自身はイタリアのファシズムを逃れてアメリカに移住し、在米中に自らの指揮によってメトロポリタン歌劇場でこの作品を上演している。

三王の恋.png
「三王の恋」


第一幕


 中世イタリアのアルキバルドの城の大広間、夜明け。北方から侵入して、このアルトゥーラ王国を征服した盲目の老王アルキバルドは、召使フラミーニオに手を引かれて現れる。フラミーニオは、アルトゥーラ王国が老王に征服されなかったならば、フィオーラは王妃になっていただろうとつぶやき昔を偲ぶ。フィオーラは今では老王の息子マンフレードの妻になっているが、前王の息子アヴィートとは恋仲で、こっそりと愛の陶酔の時間を過ごしている。老王は四十年前にこの地を征服した頃を思い出す(「イタリアこそわが思いのすべて」)。老王が自室に戻ったのを見はからって、アヴィートはフィオーラの部屋から出て来る。盲目だがその分だけ勘の鋭いアルキバルドは、フィオーラが不倫しているのを察し、誰と話をしていたのかと彼女に問いただす。
 その時マンフレードが戦場から帰還する。老王に征服されたこの美しい地では、以前から住む人々によりしばしば反乱が起こっているのである。老王はフィオーラにすぐ部屋に戻るよう言う。マンフレードは愛する妻フィオーラが殊勝にも夫を待ちわびていたと言うので優しく彼女を抱える。老王は先ほどのできごとを話そうかと口にまで出かかったが、ひとまず胸に抑えて心の苦しみに耐える。


第二幕


 城の高い城壁の上のテラス。マンフレードとフィオーラがテラスに姿を現す。せっかく愛する妻のもとに戻って来たにもかかわらず、いっこうに心を開こうとしない妻の冷たい態度にマンフレードはその理由を尋ねる。フィオーラはまたすぐにマンフレードが発ってしまうので悲しいのだと答える。マンフレードは苛立つが、せめて自分の出陣にあたって塔の胸壁の上で姿が見えなくなるまでヴェールを振り続けてほしいと訴える(「出発の時は告げられる」)。ひたむきな彼の哀願にさすがのフィオーラも心を動かされ、約束を守るために胸壁の上に登って夫を見送る。
 そこにアヴィートが現れる。彼はフラミーニオの手助けで衛兵に扮している。フィオーラもはじめはそれがアヴィートだとはわからなかったが、いまさらアヴィートとの隠れた愛を続けようとは思っていない。フィオーラがすぐにこの場を去るように言うのでアヴィートはわが耳を疑い、悲しげに立ち去ろうとするが、フィオーラは我慢できずに彼の胸の中に飛び込んで情熱的に抱き合う。
 その時誰かがやって来る音が聞こえ、フラミーニオに手を引かれた老王が姿を現す。老王はアヴィートの逃げ去る音を察知してフィオーラを問い詰めるので、フィオーラはこらえ切れずにその名は「甘き死」だと答える。激怒した老王は、彼女の首を絞めて殺してしまう。
 そこにマンフレードが戻って来る。彼はふいに胸壁からフィオーラの姿が消えたので、何事が起こったのか心配して舞い戻ったのである。老王は経緯を物語り、自分が彼女を殺したが、盲目の老王には逃げた男が誰かはわからないと答える。マンフレードは慟哭(どうこく)してその場を立ち去り、老王は息子に従い城の中へ歩いて行く。


第三幕


 城内の礼拝堂の地下納骨堂。フィオーラの亡骸が安置された台を前に人々が悲しんでいる。そしてマンフレードの不在中に彼女を殺した老王への復讐を誓う。誰もいなくなった礼拝堂にアヴィートがやって来て永遠の別れを告げ(「フィオーラ、静かだ」)、彼女の亡骸にすがりつき、感きわまってその唇に接吻する。そこに現れたマンフレードは、それがアヴィートなのに気づいて驚く。アヴィートは不思議なめまいを覚えて気を失う。マンフレードは、老王がフィオーラの相手が誰なのか見つけ出すために、ひそかに彼女の亡骸の唇に猛毒を塗っておいたのだと言う。
 アヴィートはマンフレードの問いに対して、命にかけてフィオーラを愛していたと言って息を引き取る。すべての希望を失ったマンフレードも彼女の唇に接吻し、自ら死を選ぶ。そこに入って来た老王は、ついに憎むべき男を見つけたと言ってその腕をつかむと、それが自分の息子であったのを知って愕然とする。





Reference Materials


初演

1913年4月10日 ミラノ・スカラ座

原作
セム・ベネッリの同名戯曲台本 セム・ベネッリ/イタリア語

演奏時間 
第1幕31分、第2幕44分、第3幕22分(サンティ盤CDによる)

参考CD
●シェピ、エルヴィラ、モッフォ、ドミンゴ/サンティ指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(RCA)
●ブルスカンティーニ、カペッキ、ペトレッラ、ベルディーニ/バジーレ指揮/RAIミラノ管・唱(WF)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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