スザンナの秘密[1幕]ヴォルフ=フェラーリ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

E. Wolf-Ferrari, Il Segreto di Susanna 1909
スザンナの秘密[1幕] ヴォルフ=フェラーリ作曲

 
❖登場人物❖

ジル伯爵(Br) 伯爵夫人スザンナ(S) サンテ(黙役)


❖概説❖
 作曲者のヴォルフ=フェラーリはドイツ人の父親アウグスト・ヴォルフとイタリア人の母親エミーリア・フェラーリの間にイタリアで生まれた子供で、後に両方の姓を合成してヴォルフ=フェラーリと芸名を名乗るようになった。 

 15作にのぼる彼のオペラはイタリアを舞台にしたものが多いが、はじめの頃はイタリアよりもドイツで初演された作品が少なくなく、この作品もミュンヘン初演で成功を収めた後にイタリア各地で上演されるようになった。彼のコミック・オペラの代表作である。

スザンナの秘密.png
「スザンナの秘密」2011年7月オペラ研修所試演会「嘘・芝居・真実」より
写真提供:新国立劇場 撮影:小林由恵


 この曲が作曲された当時の、イタリア・ピエモンテ地方にあるジル伯爵の館。結婚したばかりのジル伯爵は、妻のスザンナに一人では外出しないように言ってあったのに、どうも外で彼女らしい姿を見かけたと言って家に帰って来る。伯爵が自分の別室に入るのと入れ違いにスザンナが慌てて家に戻って来て、マントと帽子と小さな包みを召使のサンテに渡して自室に入る。
 伯爵は自室から出て来て、スザンナが彼女の自室にいるのを見てひと安心するが、その時ふと煙草の匂いがするのに気づく。伯爵は家には誰も煙草を吸う人がいないのに煙草の匂いがするのは、誰かが彼女の部屋にいるからではないかと不審を抱く(モノローグ「僕はこのいやな匂いをよく知っている」)。サンテを呼んだ伯爵は、サンテに煙草を吸うかと尋ねるが、口が利けない彼は身ぶりでそれを否定する。
 その時、隣室からスザンナが弾くピアノの音が聞こえて来る。気を落ち着かせた伯爵はサンテにココアを持って来るよう言いつける。間もなくピアノを弾き終わったスザンナが部屋から出て来るので、伯爵は物陰に隠れる。現れた伯爵は後ろからスザンナに目隠しをして、今日彼女が町を歩いているのを見かけたと驚く彼女に優しく話しかけるが、スザンナはそんなことはないと強く否定する。そこにサンテがココアを持って戻って来て、伯爵に煙草の匂いを気づかれたことを身ぶりでスザンナに知らせる。
 伯爵はココアを飲みながら婚約時代の楽しかった思い出にふけり、二人で美しい愛の二重唱を歌う。そして伯爵がスザンナを抱擁しようとすると、彼は再び煙草の匂いに気づき、思わず彼女を突き放す。
 煙草の匂いを気づかれたのを知った彼女は、実はあなたのいない間の慰みに小さな秘密があるのだけれど、そっとしておいて欲しいと頼む。それを聞いた伯爵は、その秘密とはてっきり浮気であると勘違いして激怒し、家中の物を投げつけて壊す。泣き出したスザンナは自室に逃げ、伯爵は溜息をついてソファに座り込む。  


〈間奏曲〉


 間奏曲が奏されている間に、サンテは先ほど癇癪(かんしゃく)を起こした伯爵が壊した品物を片づける。

 スザンナがクラブに出かけようとする伯爵の手袋と帽子と傘を持って来て、彼に手渡す。伯爵はスザンナが自分を家から追い出そうとしているものと思って不機嫌になるが、彼女にしおらしい言葉を投げかけられ、機嫌を取り戻す。しかし出かける時にスザンナが、お戻りの時にはドアを大きくノックして下さらないとよく聞こえないと言うので、伯爵はやはり彼女が浮気をしているに違いないと疑いを深め、怒りながら家を出て行く。
 夫が出かけると、スザンナは自室に鍵をかけてほっと一息つく。彼女は煙草に火をつけ、傍ではサンテが嗅ぎ煙草を楽しんでいる。そこに伯爵が突然帰って来てドアをノックするので、スザンナは慌てて煙草の火を消してポケットに隠し、部屋のドアを開けて出て行く。またもや煙草の匂いに気がついた伯爵は、怒り狂って家中を探し回るが誰も見つからない。伯爵はしかたなしに、出先で傘を忘れて来たのに気がついたと言ってまた外に出かける。
 スザンナは再び煙草に火をつけてゆっくりと寛ぐ(「夢見心地になる快さよ」)。その時伯爵が突然窓を開けて外から入って来る。スザンナは慌てて煙草を後ろに隠すが、伯爵は目ざとく見咎めて何を隠したのかと詰問する。彼はスザンナの後ろに手をまわすと、煙草の火に触れてびっくりする。火傷を負った伯爵は、そこで初めて妻の秘密が浮気ではなくて煙草であったと知り、ほっとする。彼は謝るスザンナを赦し、自分も煙草に火をつける。やがて煙草の火が消えると、二人は揃って寝室に引き上げる。サンテが現れて、部屋の明かりを消す。




Reference Materials


初演

1909年12月4日 ホーフテアター(ミュンヘン)

台本
エンリコ・ゴリシアーニ/イタリア語演奏時間 46分(ガルデッリ盤CDによる)

参考CD
● リッツィエーリ、ヴァルデンゴ/クエスタ指揮/RAIトリノ響(W-F)
●キアーラ、ヴァイクル/ガルデッリ指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管(D) ●スコット、ブルゾン/プリッチャード指揮/フィルハーモニア管(SONY)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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