スライ[全3幕]ヴォルフ=フェラーリ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

E. Wolf-Ferrari, Sly 1927 スライ[全3幕]
ヴォルフ=フェラーリ作曲

 
❖登場人物❖
クリストファー・スライ(T) ウェストモーランド伯爵(Br) ドリー(S)  ジョン・プレイク(Br) 居酒屋ファルコンの女主人(Ms) スネア(B) 他


❖概説❖
 「四人の頑固者」や、間奏曲だけが飛びぬけて名高い「マドンナの宝石」などのオペラで知られるヴォルフ=フェラーリが、ミラノ・スカラ座の一九二七年/二八年のシーズン開幕を飾る目玉作品として委嘱された作品である。台本作家フォルツァーノは、当初プッチーニやフランケッティによってオペラ化されることを望んだが、結局それを引き受けたのがヴォルフ=フェラーリだった。主役に予定されていたソプラノ歌手の病気のために初演は三日延期されたが、初演の成功後、ドイツ各地でも上演されるようになったので、楽譜はイタリア語版に並行して正式なドイツ語版が出版されている。 

 なお、スライという言葉には「ずるい」とか「悪賢い」という意味があるが、このオペラでは実に人間的な性格を持つ人物に描かれている。


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第一幕


 時は1603年秋、場所はロンドン下町の貧相な居酒屋ファルコン。居酒屋は大勢の客でにぎわっているが、常連客で売れない俳優プレイクが金も払わずに一番上等な酒を飲もうとするので、居酒屋の女主人とひと悶着を起こす。
 そこにウェストモーランド伯爵の愛人ドリーが、場違いの高価なドレスを身に着けて気晴らしにやって来る。彼女は粗末な身なりの少女ロザリーナに指輪を与え、音楽を演奏するよう所望する。プレイクは、常連客で詩人のスライがここにいないのを残念がる。
 やがて、大勢の取り巻きを引き連れたウェストモーランド伯爵がドリーを探してやって来る。ドリーの言うままに、伯爵はしばしここで時間を過ごすこととする。
 やがて常連客で人気者のスライが入って来て、ようやく居酒屋は活気づく。そこに借金未払いの罪でスライを追って来た警官のスネアを伯爵が追い払う。危機を脱したスライは友人たちに促されて、陽気に歌って座を盛り上げる(「熊の歌」)。酔いつぶれたスライが寝込んでしまうと、その一部始終を見ていた伯爵は悪ふざけを思いつき、スライが気づかないうちに立派な衣装を着せて城に運び込む。


第二幕


 第一場 ウェストモーランド伯爵の豪華な寝室。伯爵や侍女たちは、道化師や異国情緒豊かな衣装をまとってスライが目を覚ますのを心待ちにしている。
 ようやく目覚めたスライは、あたりを眺め回すと見慣れない光景なので状況の判断がつかず、まだ夢を見ているのかと思う。伯爵の指示で侍女が水を持って来るので顔を洗う。そして夕べ間違ってここに来てしまったのだと思うが、金貨が一杯に詰まった箱を見せられたり、部屋の外から妻だと言うドリーの声が聞こえるので、スライは彼女に会いたくなる。
 第二場 伯爵の広間。すっかり殿様気分になったスライはドリーの美しさに魅せられ、ドリーもスライの純真な心に惹かれる。二人の感情が頂点に達した時、警官に扮した伯爵が現れる。スライがあの男は誰だと叫ぶと、貴族や召使たちが現れてスライを嘲笑する。我に返ったスライは皆に取り押さえられる。だまされたことに気づいたスライはいきり立つが、ドリーと引き離されて地下の酒蔵に閉じ込められる。それでもまだ夢から完全には覚めていないスライは自由を求めるが、ドリーは夢の中でスライが破滅していく様子を見る。


第三幕


 城のワインの貯蔵庫。召使たちに手荒に扱われたスライは、すっかり観念して暗闇の中に座り込んでいる。絶望の中で一人うち沈み、長いモノローグを歌う。ドリーがスライを探しに来て、自分は芝居ではなくて本気でスライを愛していると伝え、二人でここから逃亡することを夢見る。しかし辱められたスライにとってはもう将来の希望はなく、死ぬしかないと言う。スライはワインのボトルを割り、その破片で手首を切る。ドリーは城の人々を呪い、スライの亡骸に泣き伏す。



Reference Materials


初演

1927年12月29日 ミラノ・スカラ座

台本
ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ/イタリア語 ヴァルター・ダームス/ドイツ語

演奏時間 
第1幕44分、第2幕44分、第3幕21分(マキシム盤CDによる)

参考CD
●バーダー、ポラスキ、レー、ヘルテル、ディヴィアク/マキシム指揮/ニーダーザクセン歌劇場管・唱(ARTS)
●カレーラス、カバトゥ、ミルンズ、ゲルツォーニ/ヒメネス指揮/リセウ大劇場管・唱(KOCH)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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