トゥーランドット[全3幕] プッチーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Puccini, Turandot 1921~24
トゥーランドット[全3幕]プッチーニ

 
❖登場人物❖

 トゥーランドット姫(S) リュー(S) ティムール(B) カラフ(T)  皇帝アルトゥム(T) ピン(Br) ポン(T) パン(T)他

❖概説❖

 プッチーニの最後のオペラで、第三幕の〈リューの死〉まで作曲したところで病死し、未完に終わった。残り第三幕後半は友人のフランコ・アルファーノの手により、作曲家の草稿に従って完成された。初演初日、指揮者トスカニーニはプッチーニが作曲した箇所まで演奏すると、「作曲者はここでペンを置いて亡くなった」と述べて演奏を中止した。

 

第一幕


 北京の紫禁城の城門の前。役人が群集に向かって布告を読み上げている。王女トゥーランドット姫の花婿になる条件は、姫が出す三つの謎を解くことだが、解けない場合はその首をはねる。そして今日もペルシャの王子が処刑されるという。
 人々が処刑を見に行こうとひしめく中で、若い娘に手を取られた盲目の老人が倒れる。それは放浪の身のダッタン王ティムールと王子付きの奴隷リューであった。娘の悲鳴に一人の若者が助けに駆け寄るが、それは身分を隠して流浪の旅にあるダッタンの王子カラフだった。三人は再会を喜び合う。
 やがて刑の執行が近づき、人々は月の出を待つ。処刑される王子が刑場に引き立てられると、月明かりのバルコニーに美しいトゥーランドットが姿を現す。カラフはその美しさに魂を奪われ、ティムールやリューが止めるのも聞かずに、求婚の合図の銅鑼を叩こうとバルコニーの方に駆け寄る。
 するとピン、ポン、パンの三人の大臣が現れ、カラフに無謀な考えを翻すよう忠告する。首切り役人が今切り落とされたばかりのペルシャの王子の首を持って現れても、カラフの決意は強まるばかりである。老いたティムールは悲嘆に暮れ、密かにカラフを愛するリューも悲しい胸の内を訴えるが(「お聞きください、王子様」)、カラフは優しくリューを慰めると(「泣くな、リュー」)、人々の制止を振り切ってトゥーランドットの名を三回叫んで、バルコニーの下の銅鑼を叩く。


第二幕


 第一場 大きな天幕で仕切られた館。ピン、ポン、パンの三人の大臣が召使を従えて現れる。彼らはトゥーランドットのために死刑になった男の数を数え、今年はもう十三人目だと言う。首切り大臣の職に嫌気がさした三人は、故郷を懐かしがる。
 舞台裏から処刑を催促する群集の声が聞こえ、三人の大臣たちは首を切られたサマルカンダやインドの王子たちのことを話す。そして、もしトゥーランドットの恋が実ったら花嫁の寝室を整えるし、そうなればこの国にも平和がよみがえるだろうと語る。宮殿の中が騒がしくなり、現実に戻った三人はまた首が切られるのかと、おどけた様子で立ち去る。
 第二場 宮殿前の広場。広場に集まった人々は、正面の大階段の上の玉座に座っている皇帝アルトゥムをたたえる。皇帝はカラフにトゥーランドットへの求婚の挑戦を止めさせようとするが彼が応じないので、掟の厳正なことを宣言する。役人が現れて掟を読み上げるとトゥーランドットが現れ、昔ダッタン軍の攻勢で非業の死を遂げたローリン姫の恨みを晴らすためにこの残酷な方法を考え出したと言って、謎をかける(「この宮殿の中で」)。カラフは「希望」「血潮」「トゥーランドット」と次々に姫が出す謎を解いてしまうので、皇帝は感嘆し、人々も万歳を叫ぶ。
 しかしトゥーランドットだけは、誰にも自分を渡さないと皇帝に直訴するので、皇帝は彼女をたしなめる。この様子を見たカラフは、反対に自分の方から謎を出して、明朝までに自分の名を言い当てたら喜んで死のうと言う。皇帝は、明日はカラフをわが子と呼ぶだろうと言い、人々は皇帝の徳をたたえる。


第三幕


 第一場 宮殿の庭。北京の町には、不思議な若者の名前がわかるまで誰も寝てはならないという布告が出される。カラフは自分の勝利とトゥーランドットへの愛を確信して、役人の布告の言葉を繰り返す(「誰も寝てはならぬ」)。ピン、ポン、パンの三人の大臣が現れ、女や財宝でカラフの機嫌を取って名前を聞き出そうとしたり、町から出て行くよう懇願したり脅したりするが、カラフはまったく受けつけない。人々もそれに加わる。そこに一群の人々がティムールとリューを引き立てて来て、この二人は昨夜彼と話をしていたから名前を知っているはずだとリューを拷問にかける。リューは現れたトゥーランドットに向かって、自分だけが彼の名前を知っているが、明かすよりも胸に秘めておく方が喜びだと言い、冷たいその心もやがて溶けるだろうと告げると(「氷のような姫君の心も」)、かたわらの衛兵の短剣を奪って自分の胸に刺す。ティムールはリューの死体に取りすがり、人々はリューの死を悲しむ。トゥーランドットも不思議な力に心を動かされる。
 カラフとトゥーランドットだけが残され、カラフは彼女のヴェールをはぎとる。トゥーランドットは王子の無礼を激しく責め、なお堅い態度を崩さないが、カラフは情熱的に言い寄ると、彼女を腕の中に抱きしめて接吻する。トゥーランドットの心は次第に柔らいで、初めての涙を流す。それでもカラフに勝利者として立ち去るように言うが、今や彼女の心を征服したと信じたカラフは、自分はダッタンの王子カラフであると名乗り、命を彼女に預ける。トゥーランドットは若者の名前がわかったと叫び、人々の待つ広場に向かう。
 第二場 宮殿前の広場。朝日輝く広場には人々が集まっている。トゥーランドットは高い玉座の皇帝の前で「異邦人の名がわかった。その名前は『愛』」と叫ぶ。カラフはトゥーランドットめがけて階段を駆け上がり、二人は固く抱き合う。人々は歓呼の声をあげる。




Reference Materials


初演

1926年4月25日 ミラノ・スカラ座

原作
カルロ・ゴッツィの同名戯曲

台本
レナート・シモーニ、ジュゼッペ・アダミ/イタリア語

演奏時間 
第1幕31分、第2幕43分、第3幕37分(モリナーリ=プラデッリ盤CDによる)

参考CD
●ニルソン、スコット、コレッリ、ジャイオッティ/モリナーリ=プラデッリ指揮/ローマ歌劇場管・唱(EMI)

参考DVD
●マルトン、ミッチェル、ドミンゴ、プリシュカ/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)
● シュナウト、ガイヤルド=ドマス、ボータ、ブルチュラーゼ/ゲルギエフ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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