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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
G. Puccini, Gianni Schicchi 1916~18
ジャンニ・スキッキ[1幕]
❖登場人物❖
ジャンニ・スキッキ(Br) ラウレッタ(S) リヌッチョ(T) ツィータ(A) ゲラルド(T) ネッラ(S) ゲラルディーノ(A) ベット・ディ・シーニャ(B) シモーネ(B) マルコ(Br) チェスカ(Ms)他
❖概説❖
「外套」「修道女アンジェリカ」とともに“三部作”をなす一曲。ただしこの三部作は、おのおの性格をまったく異にしており、オペラ・ブッファとして書かれた「ジャンニ・スキッキ」は三作中もっとも評判が高い。今日でも三部作として一晩に上演される機会があるが、別々に上演されることも多い。
フィレンツェの大金持ちブオーソ・ドナティの寝室。たった今息を引き取ったばかりのブオーソの寝台を取り囲んで、親類の者たちが大げさに嘆き悲しんでいる。
だが彼らの本当の関心は、残された膨大な遺産にある。ベットが全遺産は修道院に寄進するという噂が町に流れていると伝えると、遺言状が公証人の手に渡らないうちに皆で探し出そうということになり、遺言目当ての親類一同は部屋中を片っぱしから探し始める。
やがてブオーソのいとこツィータの甥に当たる若い青年リヌッチョが遺言状を見つけ出し、伯母のツィータに自分が見つけた褒美に恋人のラウレッタとの結婚を認めるよう頼むが、皆に遺言状を取り上げられてしまう。
彼はその間に、少年ゲラルディーノにラウレッタとその父親ジャンニ・スキッキを呼びに行かせる。皆は遺言の皮算用をはじくが、ツィータが遺言状を開いてみると、やはり噂通り遺産はすべて修道院に寄進するよう書かれているので、皆は失望する。
そして、誰も見ていないのをよいことに遺言状を書き換える手だてはないかと相談を始める。リヌッチョがジャンニ・スキッキならそれができると言い、彼の人柄と抜け目ない性格をたたえるので(「フィレンツェは花咲く樹のように」)、皆はスキッキを迎えることにする。
その時、早くもスキッキがラウレッタとともに戸口に現れる。スキッキはお悔やみを述べるが、持参金なしの娘に甥はやれないとツィータが息巻くので、怒った彼は帰ろうとする。しかしリヌッチョの取りなしでスキッキに遺言状を見せて、妙案はないかと相談を持ちかける。
ラウレッタもリヌッチョと結婚できなければアルノ河に身を投げてしまうと訴えるので(「私の愛しいお父さん」)、スキッキはブオーソの死をまだ誰も知らないことを確認した上で、彼がブオーソになり替わって新たな遺言状を作る魂胆を思いつく。そしてブオーソの遺体を移し、スキッキが寝台に入る。その時医者が往診に来るが、スキッキはブオーソの声色を使って追い返す。
スキッキは遺言状偽造の計画を打ち明けると、皆は自分に有利に書き変えてくれるようスキッキに耳打ちをする。だがスキッキは有頂天になって喜ぶ一同に、遺言状偽造の共犯者は法律で手を切断されて追放になると言い、「さらばフィレンツェ」と歌って警告する。
スキッキが寝台に入って室内を暗くすると、間もなく公証人が到着するので、スキッキは遺言の口述を始める。以前の遺言状はすべて無効、葬式は簡素に、修道院への寄進はわずかになどと言うので皆は感心する。
そして、次々に皆の望みのものを遺言に述べて行くので、そのたびに皆は礼を言う。しかし最後に、一番値打ちのあるロバと家屋と粉ひき場になると、スキッキは無二の親友ジャンニ・スキッキに贈ると言うので皆は腹を立てる。しかし、スキッキは「さらばフィレンツェ」を歌って法律を思い出させるので、一同は黙らざるを得ない。
最後にスキッキはツィータに、過分の礼金を公証人に払うよう命じる。公証人が大喜びで帰った後、親類一同の怒りが爆発してスキッキに打ってかかるが、遺言でこの家を自分のものにしてしまったスキッキは、一同を追い出してしまう。
テラスに現れたリヌッチョとラウレッタは幸せに抱き合う。スキッキは観客に向かって、この財産処理の方法はいかがでしたかと問いかける。
Reference Materials
初演
1918年12月14日 メトロポリタン歌劇場
原作
ダンテ・アリギエリ/「神曲」地獄篇第30章
台本
ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ/イタリア語
演奏時間
53分(マゼール盤CDによる)
参考CD
●コトルバス、ディ・スタジオ、ドミンゴ、ゴッビ/マゼール指揮/ロンドン響(SONY)
●テバルディ、ダニエリ、ラッツァーリ、コレナ/ガルデッリ指揮/フィレンツェ5月音楽祭管(D)
●ロス・アンヘレス、カナリ、デル・モンテ、ゴッビ/サンティーニ指揮/ローマ歌劇場管(EMI)
●ゲオルギウ、パーマー、アラーニャ、ファン・ダム/パッパーノ指揮/ロンドン響(EMI)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止