メフィストーフェレ[プロローグ、エピローグと全4幕]ボーイト作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

A. Boito, Mefistofele 1862~68
メフィストーフェレ[プロローグ、エピローグと全4幕]ボーイト作曲

 
❖登場人物❖

メフィストーフェレ(B) ファウスト(T) マルゲリータ(S)  マルタ(Ms) エレナ(S)他

❖概説❖

 ヴェルディの「オテロ」「ファルスタッフ」などの台本作家として知られるボーイトは、元来作曲家であった。そのボーイトが自ら書いた台本に作曲したのがこの曲で、壮大な規模を誇っている。あまりにも長大なこともあって、作曲者自身の指揮による初演は賛否両論で場内騒然となった。 その後1875年のボローニャ上演に際して大改訂が行われ、さらに手直しを加えて、翌76年にヴェネツィアで上演されたのが現行版である。


■プロローグ「天上の世界」

 天使たちが歌い舞っていると、雲間から黒いマントをまとったメフィストーフェレが突然姿を現す。メフィストーフェレは挑発的な前口上を述べると、老哲学者ファウストを誘惑することの可否について神と賭けをする。再び天使の合唱が聞こえ、それに聖職者たちも加わって神をたたえる。
 

■第一部

第一幕


 第一場「復活祭の日曜日」 フランクフルトの街頭。街は祭りでにぎわい、人々は酒を飲んで騒いだりしている。そこにファウストが弟子のワグネルを伴って現れ、にぎやかな人の群れを眺めている。夕暮れが迫る頃、二人は灰色の僧衣を着て頭巾を深くかぶった不気味な修道僧が近寄って来るのに気づくが、あえて無視して家路につく。
 第二場「契約」 ファウストの書斎。ファウストが一人物思いにふけっていると(「野から牧場から」)、後をつけて来た先ほどの修道僧が入って来て、突然メフィストーフェレの姿に変わる。メフィストーフェレは口笛を吹きながら「私は悪魔の精」と名乗る。二人は問答をするうちに、ファウストは自分の魂と引き換えに青春を得る契約を交わす。ファウストはさっそくメフィストーフェレの空飛ぶマントに一緒に乗って快楽の旅へと出発する。


第二幕


 第一場「庭園」 ひなびた風情の庭。エンリーコと名乗る若者に身を変えたファウストが町娘マルゲリータを、また少し離れたところではメフィストーフェレが彼女の母親マルタを、散策しながらそれぞれ口説いている。マルゲリータはファウストの誠意ある言葉に心はすでに彼に傾いているが、母親を心配してなかなかふんぎりがつかないでいる。しかしついにファウストとメフィストーフェレは、それぞれの相手を陥落させてしまう。
 第二場「悪魔たちの饗宴の夜」 ブロッケン山のシルケの谷。メフィストーフェレとファウストが「鬼火たちの二重唱」を歌いながら風が吹きすさぶ山道を登って来る。集まって来た魔女や魔物たちが饗宴を始めると、メフィストーフェレはそれをかき分けて一段と高い岩山に上り、王としての威厳を示し(世界のバラード「これが世界か」)、魔女たちはいっそう踊り狂う。するとファウストは、マルゲリータの幻影を見て驚愕する。


第三幕「マルゲリータの死」


 牢獄。ファウストとの間に生まれた子供を海に投げ殺し、母親をも毒殺したマルゲリータは独房に繋がれて憔悴しきっている(「いつかの夜、暗い海の底に」)。そこにメフィストーフェレに案内されたファウストが現れ、彼女を救おうとする。錯乱状態のマルゲリータはすっかり怯えているが、愛する人の懇願にようやく逃亡の決意を固める(二重唱「はるかに、はるかに」)。やがて日が昇って来るので、メフィストーフェレが姿を現して二人をせかす。しかし聞き覚えのあるその声を耳にしたマルゲリータは再び激しく錯乱に陥り、ファウストの腕の中でついに息を引き取る。“彼女は救われた”と言う天使の声が聞こえ、メフィストーフェレはファウストを促して足早に立ち去る。


■第二部

第四幕「古典的な悪魔の饗宴の夜」



 ペネイオス川のほとり。美しい月夜の下、トロイの絶世の美女エレナがパンタリスを従えて川に浮かんだ真珠の舟の上で舟歌を口ずさんでいる。やがて十五世紀の騎士の衣裳に身を包んだファウストがメフィストーフェレに連れられて現れると、エレナの舟は消え去る。メフィストーフェレはこれが古代の悪魔の宴だと説明し、妖精たちは輪舞を舞う。飽き飽きしたメフィストーフェレは当惑して姿を消すが、代わりに牧師や水の精に伴われたエレナが再び姿を現す。ファウストはエレナの美しさに惹かれ、彼女の足下にひざまずいてその美しさをたたえる。その言葉はついに彼女の心を捉え、二人は情熱的な愛の陶酔に浸り、草の茂みの中で固く抱擁する。


■エピローグ「ファウストの死」

 ファウストの書斎。もとの自分の書斎に戻ったファウストは、頭が混乱して肘掛け椅子に座っている。メフィストーフェレはもう一度ファウストを誘惑しようと、黒いマントを床に広げて以前のエレナへの讃歌を思い出させようとするが、ファウストは自分の理想の夢を追い求めようとするばかりで、彼の甘い言葉の誘いには乗って来ない。天上から響く天使たちの福音の声が聞こえて来ると、ファウストは恍惚として永遠の美をたたえながら息を引き取る(「世の果てに近づいた」)。天上からは“ファウストは救われた”という声が聞こえ、天使たちがバラの花の雨をファウストの亡骸の上に降り注ぐ。メフィストーフェレは自分の敗北と神の勝利を認めると、口笛を吹いて悔しそうに立ち去る。天使たちの壮大な大合唱が神をたたえる。




Reference Materials


初演

1868年3月5日 ミラノ・スカラ座

原作
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/「ファウスト」

台本
アリーゴ・ボーイト/イタリア語

演奏時間 
プロローグ24分、第1幕29分、第2幕30分、第3幕20分、第4幕22分、エピローグ13分(セラフィン盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、ダニエリ、デル・モナコ、シェピ/セラフィン指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)

参考DVD
●テオドッシュウ、フィリアノ―ティ、フルラネット/ランザーニ指揮/パレルモ・マッシモ劇場管・唱(NMC)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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