ワリー[全4幕]カタラーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

A. Catalani, La Wally 1891
ワリー[全4幕] カタラーニ

 
❖登場人物❖

ワリー(S) シュトロミンガー(B) アフラ(Ms)  ワルター(S)  ハーゲンバッハ(T) ヴィンチェンツォ・ゲルナー(Br) 老兵士(B)

❖概説❖

 カタラーニはほぼ同世代のライバルであったプッチーニの陰に隠れてしまったが、イタリア・オペラの伝統を継承したロマンティックなオペラを作曲した。その重厚な作風はワーグナーの影響も受けている。「ワリー」はカタラーニが作曲した五番目のオペラであり、また彼の死の前年に書かれた最後のオペラでもある。
 カタラーニの熱烈な崇拝者であった名指揮者トスカニーニは、このオペラのヒロインの名を取って、自分の娘をワリーと名づけている。


第一幕


 スイス・チロル地方のホッホシュトッフ村の広場。村人たちが集まって、この村の裕福な地主シュトロミンガーの七十歳の誕生日を祝う宴会が開かれている。そこにツィター弾きの少年楽師ワルターが彼の娘ワリーを探しにやって来て、エーデルワイスの歌をお祝いに歌って気分を盛り上げる(「ある日、ムルツォルの峰に向かって」)。シュトロミンガーの執事ゲルナーは主人の娘ワリーを愛していて、シュトロミンガーも彼を娘の婿にふさわしいと思っている。
 そこに隣村ソルデンの猟師ハーゲンバッハが獲物の熊を持ってやって来て、自分の腕前を自慢する。シュトロミンガーはかつてハーゲンバッハの父親と敵対関係にあったので彼と口論となり、ハーゲンバッハはシュトロミンガーを突き倒す。事の成り行きに心配して仲裁に入ろうとしたワリーの美しさにハーゲンバッハは惹かれる。ワリーとハーゲンバッハとが恋仲になったことを知ったゲルナーは、そのことをシュトロミンガーに告げると、怒ったシュトロミンガーはワリーを呼び、今月中にゲルナーと結婚するよう言い渡す。だがワリーは必死になって愛を訴えるゲルナーの話に取り合おうとしないので、父親はワリーと親子の縁を切ると言う。一人になったワリーは家を出る決心をして立ち去ろうとすると(「さようなら、ふるさとの家よ」)、ワルターが駆け寄って来て、二人でエーデルワイスの歌を歌いながら去って行く。


第二幕


 ソルデンの広場。前幕から一年後の聖体祝日の祭りで、村人たちが皆集まっている。老兵士が着飾ってやって来たワルターに、父親が没して遺産を継いだワリーもやって来るだろうと言う。そこにハーゲンバッハがやって来て、高慢ちきなワリーに復讐して彼女の鼻を明かしてやろうと待ち構えている。ワリーはハーゲンバッハが居酒屋の女主人アフラと結婚すると聞いて、ソルデンの村に特別の関心を抱いてやって来たのである。アフラは恋を弄(もてあそ)ばないほうがよいとハーゲンバッハをいさめる。着飾ったワリーを見つけた人々は彼女に接吻踊りを申し込むが、彼女は受け付けようとしない。皆が教会に入るとゲルナーがワリーに近づいて、ハーゲンバッハがアフラと結婚するとあからさまに言うので、途端に不機嫌になったワリーは、こんなまずい酒は飲めないとアフラの前でテーブルの上のグラスを叩きつける。教会から出て来てそれを聞いたハーゲンバッハは、友達とワリーと接吻踊りをする賭けをして彼女に踊りを申し込む。二人は踊っている間にだんだんと愛の気持ちが高まり、ついに唇を合わせる。
 それを見た人々が、ついにアフラの復讐は叶ったとあざ笑うので、ワリーは彼に騙されたことを悟る。ワリーはゲルナーに、まだなお私を愛しているなら、ハーゲンバッハを殺してくれれば結婚してもよいと言う。


第三幕


 ホッホシュトッフ村のワリーの家。第二幕と同じ日の夜。悲しみに打ちひしがれたワリーをワルターが家の中まで送って来る。ワルターを帰したワリーは一人で涙を流す。遠くから老兵士の歌声が聞こえる。家の外で老兵士からハーゲンバッハがこちらにやって来るという話を聞いたゲルナーは、橋のたもとに身を潜める。ワリーは気持ちが落ち着いてくると、昼間激怒のあまり取った自分の行動を反省して、ハーゲンバッハを赦す気になって横になる(「安らかな気持ちではいられない」)。
 しかし時すでに遅く、ワリーに赦しを請うためにやって来たハーゲンバッハが橋にさしかかると、橋のたもとに隠れていたゲルナーに後ろから突き飛ばされ、叫び声をあげながら崖の下に転落する。ワリーはその声に起き上がると、ドアにノックの音がしてゲルナーが現れ、ハーゲンバッハを崖の下に突き落としたと言う。ワリーは急いで崖を下り谷底に救助に向かうと、幸いにも彼は命を落とさないで生きていた。ワリーは傷ついたハーゲンバッハを助け起こすと担いで上がって来る。そして彼の顔に接吻して奪われたキスを返したわと言い、彼の身をアフラに渡す。


第四幕



 ムルツォルの山の上。ワリーはワルターとともに死を求めて雪に覆われた山中に来る。ワリーはワルターを一人帰し、氷河を越える時にヨーデルを歌ってくれるよう頼む。一人になったワリーは降りしきる雪の中で天国を思い浮かべていると(「万年雪に囲まれて」)、遠くからワルターのヨーデルが聞こえる。その時ハーゲンバッハの呼ぶ声が聞こえ、彼が山を登って来る。彼は本当に愛しているのはワリーだけだと気づき、彼女の赦しを得ようと山中にやって来たのである。ハーゲンバッハは彼女に真の愛を告げ、ワリーも一度は彼を殺そうとした罪を告白して、赦し合った二人は固く抱き合う。
 しかし霧の中、帰り道を探そうとしたハーゲンバッハは突然の雪崩に襲われて谷の下に落ちる。大声で彼を呼ぶ声にも返事はなく、彼のあとを追ってワリーも谷底に身を投げる。





Reference Materials


初演

1892年1月20日 ミラノ・スカラ座

原作 
ウィルヘルミーネ・フォン・ヒレルン/「禿鷹のワリー」

台本
アルフレード・カタラーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕37分、第2幕34分、第3幕24分、第4幕29分(クレヴァ盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、デル・モナコ、カプッチルリ、ディアス/クレヴァ指揮/モンテ・カルロ国立歌劇場管・トリノ・リリコ唱(D)
●マルトン、アライサ、タイタス、ダルテーニャ/スタインバーグ指揮/ミュンヘン放送管・バイエルン放送唱(RCA)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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