運命の力[全4幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

 G. F. Verdi, La Forza del Destino 1861~62
運命の力[全4幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

ドンナ・レオノーラ(S) ドン・アルヴァーロ(T) ドン・カルロ(Br) プレチオシルラ(Ms)  グァルディアーノ神父(B) メリトーネ(Br) カラトラーヴァ侯爵(B)他

❖概説❖

 1862年初めの初演の予定は、秋に延期された。1868年に第四幕を中心に改訂が行われ、序曲も現行のものに書き改められた上、1869年2月20日にミラノ・スカラ座で上演された。

第一幕


 カラトラーヴァ侯爵邸。侯爵は娘レオノーラに優しく「お休み」と言葉をかけて去る。レオノーラはアルヴァーロを愛しているが、父が結婚を許さないので、今夜駆け落ちしようとしている。それでも実行を思い悩んでいるところにアルヴァーロが現れる(「父の家を離れた私は」)。
 彼の強い愛の言葉にようやく家を出ようとした時、物音に気づいた侯爵が剣を持って現れる。アルヴァーロも一瞬ピストルを身構えるものの、恭順を示すためにピストルを床に捨てる。ところがピストルが暴発して侯爵に当たる。侯爵は娘を呪いながら息絶え、レオノーラとアルヴァーロは逃げ去る。
 


第二幕


 第一場 村の旅篭の前の広場。村人が騒いでいるところに、侯爵の息子カルロが学生姿に変装して妹とアルヴァーロを追い求めて現れる。村人たちが彼を歓待しているところに男装したレオノーラが一人はぐれて現れ、兄の姿を見かけるので足早に旅篭の中に入る。皆が楽しく飲んでいると、ジプシー女プレチオシルラが陽気にイタリア戦線への参加を呼びかけ(「太鼓の響きに」)、カルロの手相を占って学生ではないことを見抜く。
 一方、カルロも先ほど宿に入った若者が気になり、女ではないかとロバ引きにしつこく尋ねるが、逆に村人たちから自分の素性を明かすよう迫られるので、自分はペレーダだと名乗り、自分の家の悲劇を友人の家のできごととして物語る。
 第二場 岩山の上の修道院の前。アルヴァーロに捨てられたと思い込んだレオノーラは、男装のまま月の光を頼りに修道院の前にたどり着く。聖母マリアに祈ってから入口の鈴を鳴らし(「哀れみ深い聖母さま」)、出て来た修道士メリトーネに修道院長への取り次ぎを頼む。現れた修道院長グァルディアーノ神父はレオノーラから事情を聞く。神父は一人山中で静かに神に祈りを捧げたいと言う彼女の願いを受け入れて、岩山の洞穴の庵にこもることを許す。そして何か起こった時は鈴を鳴らすように言う。神父は集まった修道士たちに、彼女の秘密を探ったり洞穴に近づくことを禁じる。   


第三幕


 第一場 イタリアの戦場。レオノーラとはぐれて一人逃げのびたアルヴァーロは、イタリア戦線の兵士になっている。レオノーラはすでに死んでしまったと思って彼女をしのんでいると(「天使のようなレオノーラ」)、賭けごとから口論で身が危うくなった戦友の助けを求める声が聞こえ、その友人(実はカルロ)を助ける。二人は互いに偽名を名乗っているので、仇敵とも知らずに友情を誓い合う。戦闘が始まって二人は飛び出して行く。一夜明けると、重傷を負ったアルヴァーロがテントに運ばれて来る。彼はカルロに小箱を渡し、自分が死んだらこれを焼いて欲しいと頼むので、カルロはその願いを守ると誓う(二重唱「最後の頼みだ」)。
 だが軍医がカラトラーヴァ勲章について話した時のアルヴァーロの異常な興奮ぶりに疑念を抱いたカルロは、良心の呵責に耐えながら約束を破って小箱を開ける。中にレオノーラの肖像を見つけた時、軍医がアルヴァーロが一命を取り止めたと伝える。カルロはこれで自分の手で仇討ちができると喜ぶ(「この中に私の運命がある」)。
 第二場 戦場の野営地。夜ふけ頃、巡羅兵が見回りに来る。全快したアルヴァーロにカルロはすべてを打ち明けて決闘を申し込む。アルヴァーロは彼が誓いを破ったのを怒るが、カルロの言葉からレオノーラが生きていると確信する。ついに決闘は始まるが、兵士に制止されてカルロは連行される。
 アルヴァーロは剣を捨てて修道院に入ろうと決意する。すっかり夜も明けて、陣営には物売りがやって来てにぎやかになり、プレチオシルラは華やかに歌う(「ラタプラン」)。従軍僧として通りかかったメリトーネもその騒ぎにあきれはて、説教しようとするが追い払われる。


第四幕


 第一場 岩山の上の修道院の中庭。貧民たちに食事を施しているメリトーネは、彼らの態度に悪態をついて追い立てる。グァルディアーノ神父はメリトーネに、彼らにもっと優しくするように言う。そこに、今はラファエル神父になっているアルヴァーロに面会を求めてカルロがやって来る。神父になってもう五年にもなるアルヴァーロは今さら剣は持たないと言うが、決闘を迫るカルロの侮辱に耐えかねて、ついに決闘のため裏山へ急ぐ。
 第二場 裏山の洞穴の前。どうしても苦悩から逃れられないレオノーラが、死によって平和が与えられるよう神に祈っていると(「神よ、平和を与えたまえ」)、人の気配がするので庵の中に身を隠す。剣の音がして、刺されたカルロの叫び声と共に血のついた剣を持ったアルヴァーロが庵の前に立って扉を叩く。レオノーラは鈴を鳴らしてから姿を現す。アルヴァーロは現れたのがレオノーラなので驚きの声を上げ、彼女の前でその兄を倒した苛酷な運命を嘆く。話を聞いて走り寄って来るレオノーラに向かって、カルロは最後の力を振り絞って剣を突き刺す。駆けつけたグァルディアーノ神父とアルヴァーロに対して、瀕死のレオノーラは、兄は私の血で恥辱に復讐したのだと言う。アルヴァーロは悲惨な運命を呪い、レオノーラは天上でアルヴァーロを待っていると言ってこと切れる。



Reference Materials


初演 

1862年11月10日 ペテルブルク帝室歌劇場

原作 ドン・アンヘル・デ・サーヴェドラ/
「ドン・アルヴァーロ、もしくは運命の力」

台本 
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、改訂アントニオ・ギスランツォーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕24分、第2幕51分、第3幕55分、第4幕35分
(モリナーリ=プラデッリ盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、シミオナート、デル・モナコ、バスティアニーニ、シェピ/モリナーリ=プラデッリ指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)

参考DVD
●プライス、ジョーンズ、ジャコミーニ、ヌッチ、ジャイオッティ/レヴァイン指揮/
メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)



ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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