ドン・カルロ[全5幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Don Carlo 1865~66
ドン・カルロ[全5幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

フィリッポ二世(B) ドン・カルロ(T) ロドリーゴ(Br) 宗教裁判長(B)  エリザベッタ・ディ・ヴァロア(S) エボリ公女(Ms) テバルド(S)他

❖概説❖

1867年のパリ・オペラ座の初演は五幕のフランス語版であったが、1884年ミラノ・スカラ座での初演に際して、第一幕をカットして四幕のイタリア語版に改訂された。その後もしばしば改訂が行われたが、現在はイタリア語での上演が一般的であり、改訂四幕版または五幕版が使われている。

第一幕


 フォンテンブローの森。今日は王室の狩りの日で、スペインの王子ドン・カルロは婚約者のフランスの王女エリザベッタをひと目見ようと内緒でやって来て、彼女に対する憧れを歌う(「フォンテンブロー!寂しい森よ」)。そこに道に迷った王女が現れる。カルロははじめ名を偽るが、王女は彼こそ王子カルロであると見抜いて偶然の出会いを喜ぶ。
 祝砲が聞こえて小姓が現れ、エリザベッタの結婚相手はカルロではなく、父王フィリッポ二世に変更されたことを彼女に伝える。二人は絶望に打ちひしがれ、苛酷な運命を呪う。


第二幕


 第一場 サン・ジュスト修道院の中。修道僧たちが祈りを捧げているところに、カルロは心の平和を求めてやって来る。一人の修道僧が近づいて「世の中の苦しみは修道院の中までついて来る」と言うが、それが亡き祖父カルロ五世の声にそっくりなので恐れおののく。
 親友のポーザ侯爵ロドリーゴが現れて、エリザベッタとの愛を忘れるためにもフランドルの民を救いに行くよう勧める。そして二人は友情を誓い合う(「われらの胸に友情を」)。
 第二場 サン・ジュスト修道院の前庭。女官たちが集まり、エボリ公女は「ヴェールの歌」を歌う(「美しいサラセンの宮殿の庭に」)。王妃となったエリザベッタが現れると、ロドリーゴが拝謁を求め、フランス王室の母からの手紙とカルロの手紙を渡す。ロドリーゴは恋に悩むカルロの気持ちを王妃に伝えるが、そばで聞いていたエボリは自分への愛と誤解する。王妃が一人になるとカルロが現れて、熱い愛を訴える。彼女は動揺するが、我に返ってカルロを振り切る。突然国王が現れて、王妃を一人にしていた罰として一人の女官を追放する。王妃はその女官を優しく慰める。
 国王がロドリーゴを呼び止めてフランドルの様子を尋ねるので、彼はその惨状を正直に報告する。国王はフランドルに同情するような考えは危険だと述べ、宗教裁判長に注意するよう言う。そしてカルロと王妃の仲が怪しいので探るように命じる。


第三幕


 第一場 噴水のある王妃の庭園。逢い引きの手紙をもらったカルロは、それが王妃からのものと思い込んで、ヴェールをかぶったエボリに情熱的な愛を訴える。喜びにヴェールを取るエボリを見てカルロは驚く。その様子からカルロが王妃を愛していると知って、エボリは激怒する。そこに現れたロドリーゴはエボリを殺そうとするが、カルロは制止する。復讐をほのめかしてエボリが退場した後、カルロとロドリーゴは改めて友情を誓い、カルロは密書をロドリーゴに預ける。
 第二場 ノストラ・ドンナ・ダトーチャ聖堂の前。民衆が力強く国王をたたえ、修道僧たちが異端の死刑囚を率いて行進する。国王が現れ、異端者処刑を宣言した時、喪服を着たフランドルの使者を従えてカルロが現れ、国王に慈悲を願う。しかし国王は彼らは反逆者だと言うので、怒ったカルロは国王に向かって剣を抜く。皆が尻込みしていると、ロドリーゴが進み出てカルロの剣を押さえるので、国王はロドリーゴに公爵の位を与える。


第四幕


 第一場 マドリードの国王の部屋。国王が孤独を嘆いているところに宗教裁判長が現れる(「彼女は私を愛していない…ひとり寂しく眠ろう」)。彼は、カルロは死刑だと言い、さらに真の異端者としてロドリーゴの処刑も要求するので、国王はそれはできないと答える。
 不気味な言葉を残して裁判長が去ると、大切な宝石箱が盗まれたと訴えて王妃が駆け込んで来る。国王が箱はここにあると言ってその中を開けると、カルロの肖像画が入っている。国王は王妃の不貞を責めるが、王妃を助けようとしてロドリーゴとエボリが入って来る。国王が去るとエボリは、宝石箱を盗んだのは自分で、国王と不倫の関係にあることも白状する。王妃はエボリに尼寺に入るよう勧める。一人残ったエボリは、このような結果になった自分の美貌を呪う(「むごい運命よ」)。
 第二場 カルロの牢獄。捕らわれのカルロをロドリーゴが訪ねて来る。彼はカルロを救うためにすべての罪は自分が負うように策をめぐらせて来たと言う。そしてフランドル救済をカルロに託して死を覚悟する(「私の最後の日」)。その時銃声がして、ロドリーゴは倒れる。ロドリーゴはすべての手はずは王妃に打ち明けてあるから明晩サン・ジュスト修道院で彼女に会うよう王子に告げると息絶える。国王が入って来てカルロを許し、民衆もカルロの釈放を求めてなだれ込んで来る。そのすきにエボリはカルロを救い出す。


第五幕


 サン・ジュスト修道院。カルロを待つ王妃は昔を懐かしんで、彼に新しい人生を歩ませようと願う(「世のむなしさを知る神よ」)。そして現れたカルロと、愛を秘めたままいつの日か天上で会うことを約束する。そこに国王と裁判長がやって来てカルロの逮捕を命じるが、その時カルロ五世の霊が現れて、カルロを墓の中に引きずり込む。一同の驚愕と修道僧の静かな祈りの中に幕となる。



Reference Materials


初演 

1867年3月11日 パリ・オペラ座

原作 
フリードリヒ・シラーの同名戯曲

台本 
フランソワ・ジョセフ・メリとカミーユ・デュ・ロークル/フランス語(イタリア語改訂版は、アキッレ・デ・ラウジェレスとアンジェロ・サナルディーニ)

演奏時間 
第1幕25分、第2幕57分、第3幕34分、第4幕48分、第5幕22分(アバド盤CDによる)

参考CD
●フレーニ、バルツァ、カレーラス、カプッチッリ、ギャウロフ/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(EMI)
●リッチャレッリ、ヴァレンティーニ=テラーニ、ドミンゴ、ヌッチ、ライモンディ/アバド指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)

参考DVD
●フレーニ、バンブリー、ドミンゴ、キリコ、ギャウロフ、フルラネット/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)
●マッティラ、マイアー、アラーニャ、ハンプソン/パッパーノ指揮/パリ管、パリ・シャトレ座唱(W)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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