仮面舞踏会[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Un Ballo in Maschera 1857~58
仮面舞踏会[全3幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

リッカルド(T) レナート(Br) アメリア(S) ウルリカ(Ms) オスカル(S)  シルヴァーノ(B) サムエル(B) トム(B)他

❖概説❖

 スウェーデン国王の暗殺事件に題材を取っているために、ナポレオン支配下にあったナポリ当局の検閲が通らず、ヴェルディは止むを得ず場所をアメリカのボストンに変更した。それに伴って登場人物名も変更してローマで初演した。近年はオリジナル通り場所をスウェーデンに戻した上演も行われる。


第一幕


 第一場 ボストンにあるイギリスの駐米総督リッカルド邸の広間。人々が総督リッカルドをたたえているが、サムエルとトムの一味は謀反の機会をうかがっている。リッカルドが現れ、小姓オスカルが仮面舞踏会の招待者名簿を持って来る。その中に腹心の秘書レナートの妻アメリアの名を見つけたリッカルドは、もう一度彼女に会える喜びに心をときめかせる(「再びあの人に会える」)。
 一同が立ち去り、入れ違いにやって来たレナートは、リッカルドが自分の妻との愛に悩んでいるとも知らずに、謀反を心配しているものと思い込む。そして命に気をつけるよう注進するが、リッカルドは一笑に付す。そこに占い女ウルリカの処刑を求めて判事がやって来る。オスカルは彼女の予言はよく当たると弁護するので、リッカルドは変装してウルリカのもとへ行ってみようと言う。一方謀反者たちは、これはよい機会だとささやき合う。
 第二場 ウルリカの家。燃えさかっている炉にかかる大釜の前で、ウルリカは不気味な呪文を唱えている(「地獄の王よ」)。リッカルドは漁師に変装してそっと入って来る。まずウルリカはやって来た水夫シルヴァーノの運勢を占って、金と名誉が手に入るだろうと言う。リッカルドは辞令と金を気づかれないようにシルヴァーノのポケットに入れると、予言が当たったとシルヴァーノは喜ぶ。
 そこに深くヴェールをかぶったアメリアが、道ならぬ恋を忘れる方法を教えてもらいにやって来るので、リッカルドは物陰に隠れて様子をうかがう。ウルリカはアメリアに、夜中に郊外の恐ろしい岩場で魔法の草を摘むよう助言するので、リッカルドもそこへ行こうと心に誓う。
 その時扉が開いて、サムエル、トムをはじめオスカルや貴族たちも入って来る。彼らの前でリッカルドは占いを求めると(「話してくれ、今度の航海は無事だろうか」)、ウルリカはあなたは身分の高い方で、今夜最初に握手する人に殺されると予言する。リッカルドは面白半分に手を差し出すが、誰も彼の手を握ろうとはしない。そこに遅れて到着したレナートは、何の事情も知らずに思わずリッカルドの無事を喜んで手を握る。リッカルドは忠実な部下が殺人者のはずはないと笑い飛ばして、ウルリカに金を与える。サムエルとトムは暗殺の機会を失って残念がる。


第二幕


 ボストン郊外の淋しい荒地。人目を忍んでやって来たアメリアは、恐ろしさの中で深い悩みを歌い、神に祈りを捧げていると(「あの草を摘みとって」)、リッカルドが追って来る。恋を押さえ切れなくなったアメリアは熱烈な愛に燃える。そこにリッカルドの身を案じるレナートが現れ、刺客が迫っているのでただちに帰るよう勧める。アメリアは夫に顔を見られないようヴェールを深くかぶる。リッカルドは、この婦人をヴェールをつけたまま町まで送るようレナートに命じて去る。
 入れ違いにサムエルとトムがやって来るが、リッカルドに逃げられた腹いせに、レナートと一緒の婦人の顔でも見ようとレナートと争う。それを制止しようとしたアメリアのヴェールが取れてしまい、レナートは妻の裏切りを知る。暗殺者たちは深夜こんなところで密会かとあざ笑うので、恥辱に腹の煮えくり返ったレナートはある決意を秘める。  


第三幕


 第一場 レナートの書斎。レナートは妻アメリアの不貞を責めて死を命じる。アメリアは死ぬ前にせめて息子に会わせて欲しいと言うので(「私の最後のお願い」)、彼はそれを許す。そしてリッカルドの肖像画をにらみつけて、彼に裏切られた恨みを告白する(「お前こそ心を汚すもの」)。
 サムエルとトムが訪ねて来る。レナートは彼らに謀反人の仲間に入れて欲しいと頼み、アメリアにクジを引かせて誰が暗殺を実行するかを決めようと言う。そしてアメリアが引き当てた名前はレナートであった。そこにオスカルが仮面舞踏会の招待状を届けに来る。この舞踏会を舞台に暗殺の作戦を練る三人、軽妙なオスカル、悩むアメリアが、それぞれの気持ちを歌うアンサンブルとなる。
 第二場 リッカルドの書斎。アメリアの幸福を願うリッカルドは、レナート夫妻を本国に栄転させる決意をしながら、アメリアへの想いを断ち難い気持ちでいる(「永久に君を失えば」)。そこにオスカルが仮面の婦人から預った手紙を持って来る。それには舞踏会で命が狙われると書いてあるが、彼はもう一度アメリアに会えると心を高鳴らせる。 第三場 豪華な舞踏会場。思い思いの仮面をつけた舞踏会が華やかに行われている。打ち合わせ通りのそろいのマントをつけた謀反者たちは、リッカルドの姿を求めている。折よくオスカルを見つけたレナートは、リッカルドの仮装を尋ねるが、彼は教えない(「どんな仮装か知りたいだろうが」)。しかし、急用という言葉にオスカルはつい漏らしてしまう。
 アメリアはリッカルドに、暗殺者から逃げるようそっと忠告するが、その時レナートに刺されて倒れる。騒然とする人々を制して、リッカルドはアメリアの潔白を告げ、レナートに栄転の辞令を取り出して与えた後息を引き取る。悔やむレナートを前に、一同がリッカルドの寛大さをたたえる。




Reference Materials


初演 

1859年2月17日 アポロ劇場(ローマ)

原作 
ウージェーヌ・スクリーブ/「グスタフ3世、または仮面舞踏会」

台本 
アントニオ・ソンマ/イタリア語

演奏時間 
第1幕49分、第2幕31分、第3幕47分(アバド盤CDによる)

参考CD
●リッチャレッリ、グルベローヴァ、オブラスツォワ、ドミンゴ、ブルゾン/アバド指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)
●リッチャレッリ、グルベローヴァ、オブラスツォワ、ドミンゴ、ブルゾン/アバド指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)
●バーストウ、ジョー、クィヴァー、ドミンゴ、ヌッチ/カラヤン指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場管・唱(DG)

参考DVD
●バーストウ、ジョー、クィヴァー、ドミンゴ、ヌッチ/ショルティ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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