シモン・ボッカネグラ[プロローグと全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Simon Boccanegra 1856~57
シモン・ボッカネグラ[プロローグと全3幕]ベルディ作曲

 
❖登場人物❖

シモン・ボッカネグラ(Br) アメリア・グリマルディ(マリア・ボッカネグラ)(S)  ガブリエレ・アドルノ(T) ヤコポ・フィエスコ(アンドレア)(B)  パオロ・アルビアーニ(B) ピエトロ(Br)他

❖概説❖

 従来のヴェルディの華やかな作風に比べると、心理的要素の強い渋い作品であるが、それだけに密度の高い内容を誇っている。初演は失敗であったが、大掛かりな改訂の後、1881年3月24日ミラノ・スカラ座での上演は圧倒的な成功を博した。


プロローグ


 ジェノヴァの広場。貴族政治に対抗している平民党の首領パオロとピエトロは、夜の暗がりの中で、総督選挙に平民党の代表として市民に人気の高いシモン・ボッカネグラを推挙しようと立ち話をしている。そこにシモンが心せいた様子でやって来て、ジェノヴァの船隊を率いて地中海で活躍している自分を突然呼び戻した理由をパオロに尋ねる。シモンはかつて貴族の娘マリア・フィエスコと愛し合って子供までもうけたため、父ヤコポ・フィエスコの怒りにふれて宮殿に幽閉されてしまったマリアを思い、総督になれば彼女との結婚も許されるかと思い、出馬を決意する。集まった市民もそれを了承して立ち去る。
 一方、宮殿から一人出て来たフィエスコは、娘マリアがたった今息を引き取ったのを嘆き、その恋人シモンを呪う(「悲しい胸の思いは」)。そこに戻ったシモンは、フィエスコにマリアとの結婚の許しを請うが、フィエスコはマリアの子供を自分に返すなら許すと言う。シモンがその娘は行方不明だと語ると、フィエスコはこれ以上の問答は無用と冷たく立ち去る。人の気配がないのを不思議に思ったシモンは、フィエスコの宮殿に足を踏み入れる。そして愛するマリアの死を知って絶望の叫びを発する。宮殿から出たシモンは、総督万歳という声に迎えられる。


第一幕


 第一場 ジェノヴァ近郊の海辺にあるグリマルディ家の庭園。プロローグから二十五年が経過している。アメリア・グリマルディは、自分の不幸な境遇を歌いながら恋人を待っている(「夕やみに星と海はほほえみ」)。
 恋人ガブリエレがやって来て、二人が愛の喜びにひたっているところに総督シモンの使者ピエトロが来て、間もなく総督自身が来訪することを伝える。総督の来訪目的が、自分と彼のお気に入りの家臣パオロとの結婚話なのを知っているアメリアは、すぐにでも恋人ガブリエレと結婚式を挙げてしまおうと考えて家に入る。養父の老人アンドレアはガブリエレにアメリアの素性を明かし、実は彼女はグリマルディ家の子ではなく病死した娘の代わりに拾われた孤児であると教える。ガブリエレがそれでもよいと言うので、老父は二人の結婚を許す。総督とパオロらの一行が到着する。総督はアメリアとの会話から、アメリアこそ幼い時に行方不明になった自分の娘であることを知り、父娘は驚喜する。そこに結婚話の首尾を聞きに現れたパオロに、シモンはこの結婚はあきらめろと命じるので、怒ったパオロは彼女を誘拐する決意をする。
 第二場 総督の宮殿の大会議室。平民党と貴族党の評議員たちが会議をしているところに暴動の騒ぎが聞こえ、ガブリエレが民衆の暴徒に追われて来る。パオロがそっと逃げようとするのを総督は見とがめる。民衆は貴族に死をと復讐を叫ぶ。総督の問いにガブリエレは、アメリアを誘拐した男を殺したために追われていると答える。まだ総督とアメリアとの間柄を知らない彼は、誘拐の真犯人は総督に違いないと言って、彼に剣を向ける。
 そこにアメリアが割って入り、誘拐された時の状況を物語る。総督は一同に剣を収めさせ、真犯人が誰であるかを知る。そしてパオロに向かって真犯人に呪いをかけろと命じるので、パオロは自分自身を呪うことになって恐れおののく。


第二幕


 宮殿内の総督の部屋。パオロはピエトロに牢からアンドレアとガブリエレを連れて来るよう命じ、シモンの水差しに遅効性の毒を入れる。アンドレアが実はフィエスコだと見抜いたパオロは、フィエスコに総督の暗殺を持ちかけるが、彼が断るので再び牢に戻す。
 次にパオロはガブリエレに、アメリアがここで総督の慰み者になっているとささやいて去る。この話を信じたガブリエレは烈火のごとく激怒する(「心に炎が燃える」)。そこに現れたアメリアに、ガブリエレは総督との関係を詰問するが、総督のやって来る気配に別室に隠れる。
 アメリアは現れた総督に、ガブリエレを愛していると告白するので彼は驚くが、ガブリエレがもし非を悔いるなら許そうと言い、水差しの水を飲んで眠り込む。この時ガブリエレが短剣で総督を刺そうと現れるが、アメリアに制止される。
 総督が目を覚まして、アメリアは自分の娘だと明かすので、後悔したガブリエレは総督に忠誠を誓う。折りから貴族たちの反乱の声が聞こえるので、彼らの説得に向かおうとするガブリエレに、総督はアメリアとの結婚を許す。


第三幕


 総督の宮殿の内部。反乱を起こしたパオロは捕らえられるが、自分が死刑になる前に毒薬で総督を死刑にしてやったと、特に許されて自由の身になったアンドレアに言い残す。
 毒が回ってよろめきながら現れた総督は海風に一息つくが、そこにそっと近づいたアンドレアは、自分こそフィエスコだと正体を告げる。驚く総督はこれで二人は和解できると喜び、アメリアは娘のマリアであることが判明したと打ち明ける。遅すぎた和解に二人は後悔して残忍な運命を呪う。そこに婚礼を終えたマリアとガブリエレが入って来る。
 マリアはここで初めてアンドレア老人が実の祖父フィエスコであることを知る。死期の迫った総督は、元老院の貴族たちに、自分の後継者にガブリエレを任命するよう遺言して息絶える。フィエスコはバルコニーから市民に向かって、総督シモンの死と新総督ガブリエレの誕生を告げる。





Reference Materials


初演 

1857年3月12日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作 
アントニオ・ガルシア・グティエレスの同名戯曲

台本 
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、改訂アリーゴ・ボイト/イタリア語

演奏時間 
プロローグ26分、第1幕52分、第2幕29分、第3幕28分(アバド盤CDによる)

参考CD
●フレーニ、カレーラス、カプッチッリ、ファン・ダム、ギャウロフ/アバド指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)

参考DVD
●ハルテロス、ドミンゴ、フルラネット/バレンボイム指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(Art)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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