海賊[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Macbeth 1846~47
海賊[全3幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

コルラード(T) セイド(Br) メドーラ(S) グルナーラ(S)  ジョヴァンニ(B) セリモ(T) 宦官(T)他

❖概説❖

 この作品はヴェルディがパリに長期滞在していた時代の初期のオペラで、通算13作目にあたる。彼は原作となるバイロンの作品には最初から強い関心を持っていたものの、契約によって紆余曲折の末にようやく書きあげた作品であり、成功作とはされていない。彼が初演に立ち会うことはなかった上、生涯自分でこのオペラの上演を観ることはなかった。全体の構成は弱いが、それぞれの部分の音楽はヴェルディらしく美しい。

第一幕


 第一場 19世紀初頭、エーゲ海に浮かぶ海賊の島。海賊たちが勇壮に歌っている。首領のコルラードはかつて恋に破れ、社会に復讐するために海賊に身をやつした自分を回想する。そこに部下のジョヴァンニが慌しく現れ、ギリシャに送り込まれていた偵察からの報告をもたらす。それを聞いたコルラードは自分自身が指揮をとって今夜出撃すると告げるので、海賊たちは勇み立つ。
 第二場 同じ島の古い塔の中のメドーラの部屋。コルラードの恋人メドーラがハープを弾きながら、彼の出撃中いつも留守を守る寂しさを歌っていると(「私の頭から暗い考えを」)、コルラードが入って来てすぐに出陣することになったと言う。彼女は必死になって彼にすがりつくが、出陣の合図を知らせる砲声が聞えるので、コルラードは彼女を振り切るようにして出て行く。彼女は悲しみのあまりその場に倒れる。


第二幕


 第一場 トルコの太守セイドの後宮の一室。ハーレムの女奴隷たちがセイドの寵愛を受けて美しく着飾ったグルナーラを誉めそやしている。しかし誘拐されてここにいるグルナーラは回教徒のセイドを憎んでいて、故国での自由に憧れている(「時には牢獄から離れて」)。そこに宦官がやって来て勝利の前祝いの祝宴に出席するようにという太守の命令を伝えるので、しかたなく彼女は出席すると答える。
 第二場 後宮から近いコロンの港の海辺にある豪華な東屋。港には灯りをともしたたくさんの船が見える。回教徒たちが勇ましく歌っていると、太守もやって来てアラーの神をたたえる。そこに一人の奴隷が、海賊から逃れてきたと言う回教徒の修行僧を連れて来る。実はそれは変装して敵陣に潜入したコルラードである。彼は牢獄につながれていたので海賊たちの様子はわからないと太守の問いに答え、海賊たちは回教徒の力を侮って油断しているようだと伝える。
 その時海岸のほうが明るくなって、海賊の放火によって港に停泊していた回教徒の船が一斉に燃え、後宮も類焼する。怒りをあらわにした太守の前でコルラードは僧衣を脱ぎ捨てて甲冑姿となり、彼に呼応してなだれ込んだ海賊たちと回教徒の間で激しい戦いとなる。海賊たちはトルコ人を追い散らし、後宮からグルナーラや女奴隷たちを救出する。しかし態勢を立て直したセイドたちの大軍の前に海賊たちは圧倒され、コルラードは捕らえられる。死をも厭わぬコルラードの勇ましい姿に感銘を受けたグルナーラは彼に愛情を抱く。彼女はセイドに海賊たちへの慈悲を懇願するにもかかわらず、セイドはコルラードに極刑を宣言する。グルナーラは密かにコルラードを救う決意を固める。  


第三幕 


 第一場 太守セイドの部屋。セイドはグルナーラが冷たい態度をとるのに悩み(「数多くの愛らしい乙女が」)、彼女がコルラードを愛しているのではないかとの疑念を深める。セイドはコルラードに復讐を誓い、グルナーラを呼び出して明日彼は処刑されると脅しの言葉を投げると、案の定、彼女はコルラードを生かしておいて身代金を請求したほうが得策ではないかと言う。それを聞いたセイドは、グルナーラがコルラードを愛していることを確信して激しく怒り、彼女の命も自分の心次第だと言って脅す。
 第二場 コルラードが捕らわれている城砦の塔の中の監獄。鎖につながれたコルラードは島に残してきたメドーラに想いを馳せて眠りこける。そこにグルナーラがそっと忍び込んで来る。彼女は召使や兵士たちを買収してコルラードを逃がす手配をしたと言い、護身用の短剣を渡して自分を連れて逃げてくれと強く懇願する。しかし名誉を重んじるコルラードは彼女の申し出を受け入れない。そこでグルナーラはその短剣をとって出て行く。やがて激しい雷鳴がして、彼女は寝ているセイドを殺して戻って来る。コルラードは、殺人まで犯して自分を助けようとしたグルナーラを救うことは自分の義務だと考える。
 第三場 第一幕第一場と同じ海賊の島の海岸。生き残った海賊たちは戻って来るが、コルラードの消息はわからない。彼の帰りを待ちわびるメドーラは、彼が死んでしまったと思い自殺を図る。その時コルラードの乗った船が見えるので、海賊たちは騒ぎ出す。メドーラはコルラードとの再会を喜んで抱き合い、早まった自殺を後悔する。グルナーラは憐れみよりも愛によって彼を助けたことを打ち明ける。メドーラは意識が薄れ、コルラードの腕の中で息絶える。絶望したコルラードは彼女を追って崖の上から海に身を投げ、グルナーラは悲鳴をあげて倒れる。




Reference Materials


初演

1848年10月25日 グランデ劇場(トリエステ)

原作
ジョージ・ゴードン・バイロン/「海賊」

台本
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ/イタリア語

演奏時間 
第1幕25分、第2幕27分、第3幕42分(ガルデッリ盤CDによる)

参考CD
●カレーラス、マストロメイ、ノーマン、カバリエ/ガルデッリ指揮/ニュー・フィルハーモニア管、アンブロジアン・オペラ唱(PH)

参考DVD
● ミハイロフ、ブルゾン、ズブルラーティ、ダマート/パルンボ指揮/パルマ王立劇場管・唱(DEN)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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