詳解オペラ名作217もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
G. Donizetti, Don Pasquale 1842
ドン・パスクァーレ[全3幕] ドニゼッティ作曲
❖登場人物❖
ドン・パスクァーレ(B) マラテスタ(Br) エルネスト(T) ノリーナ(S) 公証人(B)
❖概説❖
第一幕
第一場 ドン・パスクァーレ邸の広間。ドン・パスクァーレが時計を見ては友人の医者マラテスタの来訪を待っている。やっと現れたマラテスタは、彼に若くて美しい花嫁候補を紹介しようと言うので(「天使のように美しい」)、パスクァーレは喜ぶ。それも彼の妹だと言うので、一刻も早く会いたいと思う。
マラテスタと入れ違いに甥のエルネストがやって来る。老パスクァーレは前々から、自分が勧める女性と結婚すれば遺産を譲ると言っていたが、エルネストは若い未亡人ノリーナを愛しているので断る。パスクァーレは、それなら自分が嫁をもらって後継ぎを作るから財産は譲らないと宣言する。この老人がいまさら結婚なんてとあきれるエルネストだが、財産を相続してノリーナと結婚する夢をあきらめなくてはならないのでしょげ返る。しかも伯父の花嫁がマラテスタの妹(ノリーナ)と聞いてびっくりする。
第二場 ノリーナの部屋。ノリーナは夢中でロマンティックな小説を読んでいる(「騎士はあのまなざしを」)。そして兄のマラテスタが仕組んだロマンスの成り行きを気にしているところにエルネストからの手紙が届き、絶望した彼がローマの町を去ると書いてあるので驚く。
ノリーナは現れた兄のマラテスタにその手紙を見せて、もうおしまいだと嘆くので、マラテスタは新しい計略を打ち明ける。それはノリーナが修道院に入っている田舎娘の妹ソフロニアに化けて老パスクァーレと結婚し、彼の手を焼かせてあきらめさせようというもので、二人はさっそく芝居の練習を始める。
第二幕
ドン・パスクァーレ邸の居間。エルネストは愛するノリーナを失って町を離れる悲しみを歌い(「遥かな土地を求めて」)、しょんぼりと立ち去る。盛装のパスクァーレは召使たちを使って結婚の準備に忙しい。そこにヴェールで顔を隠しておずおずした様子のノリーナを連れたマラテスタがやって来て、彼女は修道院育ちなので家庭的な優しい娘だと言ってパスクァーレに引き合わせる。彼も貞淑そうな娘を一目で気に入り、急いで結婚式を挙げることにする。偽の公証人が呼ばれていざ結婚の署名という時、エルネストが伯父に別れを告げようと入って来る。何も知らないエルネストは花嫁がノリーナなので驚く。
マラテスタは怒るエルネストをなだめていわくありげに説得するので、彼も結婚の証人に加わって無事に結婚式は終わる。結婚証書に署名が終わって、パスクァーレがノリーナを抱こうとすると、彼女は突然態度を変えて冷たく彼を拒絶する。そしてあばずれ女に豹変して、パスクァーレの言うことを聞かないばかりか、召使の給料を勝手に上げたり、家具や衣裳を勝手にどんどん買い込んだりするので、パスクァーレは唖然とする。不運を嘆いたり怒ったりするパスクァーレと、喜んだりはしゃいだりするノリーナの対照的な二人の大騒ぎの中に幕となる。
第三幕
第一場 ドン・パスクァーレ邸の広間。部屋はノリーナが買い込んだ品物で足の踏み場もないほど散らかっていて、請求書が山のように来ている。召使たちがノリーナの命令で忙しそうに部屋を出入りしている。パスクァーレはこれでは家は破産してしまうと嘆き、美しく着飾ったノリーナが外出しようとするので文句を言うと、ノリーナはパスクァーレに平手打ちを食わせる。もう離婚だとわめくパスクァーレを残してノリーナは出かけるが、その際にエルネストとの逢い引きの手紙をわざと落として行く。それを読んで驚いたパスクァーレは、憤然としてマラテスタを呼びに行かせる。召使たちが忙しさに不平を言ったり、主人の噂話をしたりして立ち去る。入れ違いに現れたマラテスタとエルネストが手短に今夜の計画の手はずを相談し、エルネストは立ち去る。
そこに青ざめた顔をしたパスクァーレが現れる。老人はマラテスタに新妻の横暴ぶりを訴え、例の密会を示す手紙を見せる。マラテスタは大げさに驚いた振りをして見せると、パスクァーレは庭に出て密会の現場を取り押さえようと言うので、マラテスタはうまく取り計らうと約束する。パスクァーレはもうすぐ妻に復讐してやるぞと息巻き、マラテスタは自分から罠にかかろうとしているパスクァーレを哀れむ。
第二場 ドン・パスクァーレ邸の夜の庭。エルネストが木陰でセレナードを歌うと(「何と心地よい四月の宵」)、それを合図にノリーナがやって来て二人で甘い恋を語り合う。
そこにパスクァーレとマラテスタが入って来るので、パスクァーレが飛び出す前にエルネストはすばやく姿を隠してしまう。ノリーナは自分一人でここにいたと言い張るので、密会の現場を捕らえ損なったパスクァーレは逆上して離婚を宣言し、全財産をエルネストとその恋人に結婚祝いとして譲ると言う。マラテスタはエルネストを呼んで、パスクァーレが彼の結婚に賛成したと告げる。パスクァーレもエルネストに、早くノリーナのもとへ行ってやれと言うが、エルネストは、ノリーナはそこにいると言うのでびっくりする。マラテスタはすべてが自分の計略だったと白状するので、パスクァーレは一杯食わされたと知る。しかしこれが善意で行われたのを認めて二人の結婚を許し、めでたく幕になる。
Reference Materials
初演
1843年1月3日 イタリア劇場(パリ)
原作
アンジェロ・アネッリ、ステファノ・パヴェージのオペラ「マルク・アントニオ殿下」
台本
ジョヴァンニ・ルッフィーニ/イタリア語
演奏時間
第1幕43分、第2幕38分、第3幕38分(ケルテス盤CDによる)
参考CD
●シュッティ、オンシーナ、クラウゼ、コレナ/ケルテス指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D)
●フレーニ、ウィンベルイ、ヌッチ、ブルスカンティーニ/ムーティ指揮/フィルハーモニア管、アンブロジアン・オペラ唱(EMI)
参考DVD
●メイ、シラグーザ、デ・カンディア、コルベッリ/コルステン指揮/カリアリ歌劇場管・唱(DEN)