シャモニーのリンダ[全3幕]ドニゼッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Donizetti, Linda di Chamounix 1842
シャモニーのリンダ[全3幕] ドニゼッティ

 
❖登場人物❖

リンダ(S) カルロ(シルヴァ子爵)(T) ボアフレリー侯爵(Br) ピエロット(A)  アントニオ(Br) マッダレーナ(Ms) 司教(B)

❖概説❖

 作曲された当時イタリアでもてはやされていたベル・カント・オペラの代表作のひとつであるが、この作品はウィーンからの委嘱で作曲された。
 シャモニーというと有名なアルプスのリゾート地を連想させるが、オペラのタイトルのスペルは一字だけ違っているので、原作が実際の地名と関連があるのかは不明である。

第一幕「旅立ち」


 アントニオ一家が住む家。フランスのサヴォイ地方の山村シャモニーでは、冬の間貧しい収入を補うために村人はパリに出稼ぎに行くのが習慣になっている。村を去る人々が教会に祈りに行く姿が見える。リンダの両親のアントニオとマッダレーナは、地主の侯爵夫人が小作契約を更新してくれるかを心配している(「この山村に生まれて」)。しかし二人は侯爵夫人の兄にあたるボアフレリー侯爵に取り次ぎを頼んだので、何とかなるだろうと期待している。
 そこにリンダが洗礼を受ける時に親代わりになった侯爵が彼女を訪ねてやって来るが、両親は娘が不在なのを詫びるので、不満顔で帰って行く。侯爵はリンダに下心があるが、リンダはカルロという青年に恋していて、彼に会うために出かけていた。リンダはカルロが置いていった花束に愛の喜びを歌う(「私の心の光」)。
 旅芸人ピエロットが現れて、出稼ぎにパリに旅立つ人たちの心境を皆の前でバラードに託して物悲しく歌う。それを聴いたリンダは自分の恋の行く末に不安を覚えるが、突然カルロが現れて二人は愛を誓う(二重唱「君に会ったあの日から」)。
 カルロと入れ違いにアントニオと司教が入って来る。司教は、小作契約の更新契約成功と引き替えに侯爵がリンダをものにしようとする企みがあるらしいと話すので、アントニオは激怒する。
 リンダが小作契約書を手にして戻って来る。司教や両親の勧めもあって彼女は出稼ぎの村人に混じって村を離れることを決意し、ピエロットに付き添われて旅立つ。


第二幕「パリ」


 村を離れてから三ヶ月。リンダは大道芸人としてわずかな稼ぎを得ている。彼女を追ってやって来たカルロは、自分は実は侯爵夫人の息子のシルヴァ子爵であると身分を明かし、彼女は彼の庇護のもとに立派な家に住むことになる。通りからピエロットが弾くギロンダの音が聞こえるので、リンダは彼を家に招き入れ、二人は再会を喜んで故郷を懐しむ。
 しかしリンダは運悪く侯爵に発見される。彼は今以上の手当てを与えるからリンダに自分の妾になるようしきりに口説くので、彼女は激しくはねつける。侯爵と入れ替わりにカルロが現れる。悩みを隠せないリンダとの愛を確かめ合うと(「私たちの愛が人を怒らすなら」)、カルロは出て行く。
 そこにみすぼらしい農民の身なりをしたサヴォイ地方の村人がやって来て、シルヴァ子爵の召使だと名乗る。実は彼はリンダの父アントニオで、ボアフレリー侯爵との仲がうまくいかないので子爵の助けを求めにパリまでやって来たのだった。以前とは見違えるような豪奢な身なりの女性がリンダと名乗るのでアントニオは驚愕し、娘が金のために子爵の囲われ者になったものと勘違いして激しく怒る。そこにピエロットが現れ、子爵の結婚話を伝えるので、リンダは彼が別の女性と結婚するものと思い込んで正気を失い、悲しみのあまり発狂する(狂乱のアリア「嘘よ、そんなはずはないわ」)。ピエロットは哀れな彼女をシャモニーに連れて帰ることにする。


第三幕「帰郷」


 春のシャモニーの村は、出稼ぎから帰った人々を迎えて活気づいている。ピエロットはシルヴァ子爵に黙ってリンダを村に連れ戻したので、何も知らない子爵は司教にリンダの所在を尋ねる。司教はリンダを苦しめたのが子爵であることを知り、子爵も自分が彼女の不幸の原因であることを悔やむ。子爵は、母親の同意を得てリンダとの結婚を決意したと司教に伝える。そこにパリから戻った侯爵がやって来て、城で立派な結婚式の祝宴が行われるのをもったいぶって皆に告げる。
 広場にピエロットに付き添われ、長旅に疲れ切ったリンダがやって来る。狂気に錯乱したままのリンダは、愛の歌を繰り返し歌っている(「君に愛を告げたこの声」)。司教や村人がその様子を見て悲しんでいるところに新しい小作契約書を持ったカルロが現れて、リンダの前にひざまずいて赦しを乞い、自分を思い出してくれるよう必死に呼びかける。そしてカルロも「愛の歌」のささやきを繰り返すうちに、リンダは正気を取り戻す。彼女は子爵の詫びを快く受け入れ、リンダとカルロは堅く結ばれる。村人たちは喜びの声をあげ、二人を祝福する。




Reference Materials


初演

1842年5月15日 ケルントナートーア劇場(ウィーン)

原作 
アドルフ・フィリップ、デヌリ、ギュスタヴ・ルモワヌ共作のヴォードヴィル「神の恩寵」

台本
ガエタノ・ロッシ/イタリア語演奏時間 第1幕52分、第2幕50分、第3幕40分(下記DVDによる)

参考DVD
● グルベローヴァ、デル・ワールト、ウィル、カリッシュ/A.フィッシャー指揮/チューリヒ歌劇場管・唱(DEN)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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