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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
G. Donizetti, Maria Stuarda 1834
マリア・ストゥアルダ[全3幕] ドニゼッティ作曲
❖登場人物❖
マリア・ストゥアルダ(S) エリザベッタ(Ms) レスター伯爵(T) ジョルジョ・タルボ(B) グリエルモ・セシル卿(Br) アンナ・ケネディ(Ms)
❖概説❖
第一幕
ウェストミンスター宮殿の回廊。フランス使節歓迎の槍試合から戻った騎士や女官たちがエリザベッタ女王の帰りを待っている。現れた女王は臣下のレスター伯爵に想いを寄せているのに、フランス王に求婚されて迷っている(「ああ、清らかな愛が私を祭壇に導く時」)。
そこにエリザベッタの家臣タルボが、幽閉されているスコットランド女王マリアの赦免を願い出るが、セシル卿は英国女王の座を狙った反逆者としてマリアの処刑を強く進言するので、女王の心は迷う。
やがてレスター伯爵が遅れて現れると、女王は指輪を取って彼に渡し、フランス王との結婚を承諾したと使節に伝えるよう命じる。レスター伯爵の顔が少しも変わらないのに不服な女王は皆を連れて立ち去るが、タルボとレスター伯爵の二人が残ると、タルボはマリアからの手紙と肖像画をレスター伯爵に渡す。
レスター伯爵はマリアの肖像画を見ながら、きっと彼女を救い出そうと誓うが(「ああ、この美しい面影」)、その時戻って来た女王は、彼がタルボと何事か話し合っていたのをとがめる。
レスター伯爵は、しかたなくマリアから預った女王との会見を願う手紙を差し出し、マリアの願いを聞き入れるよう嘆願するので(「それはもう愛の女神の化身でした」)、女王も渋々マリアと会うことだけは承諾する。
第二幕
フォルテリンガ城の庭園。久しぶりに庭に出ることを許されたマリアは、侍女のアンナとともに外の気持ちよい空気を満喫している(「ごらん、麗しく美しい野原がひらけ」)。そこにレスター伯爵が現れ、女王との会見を恐れるマリアを優しく慰め、恭順の意を表して赦免を願い出るように勇気づける(「世界から見放され、王座から離れても」)。
やがて女王の一行が到着するので、マリアは低姿勢で赦免を願うが、マリアとレスター伯爵の関係に気づいて嫉妬に燃えた女王は、かえってマリアの罪状を暴き立てる。我慢し切れなくなったマリアは、自分こそ正当な王位継承者だと言って庶子のエリザベッタを激しく攻撃するので、怒った女王は衛兵にマリアの逮捕を命じ、一同混乱の中に幕となる。
第三幕
第一場 ウェストミンスター宮殿のエリザベッタの私室。女王はマリアの死刑執行書へのサインを躊躇しているが、セシル卿は署名を進言する。
そこにレスター伯爵が現れ、なおもマリアの赦免を願い出るので、嫉妬に燃えた女王は死刑執行書に署名し、レスター伯爵に死刑に立ち会うよう命じる。
第二場 フォルテリンガ城の牢獄。マリアが嘆いていると、セシル卿とタルボが死刑の判決文を持って入って来る。マリアはタルボ一人に残るように言うと、彼はカトリックの僧になったとマリアに告げる。
死を覚悟したマリアは彼の前で罪の懺悔をするが、イギリスで罪になるようなことは何もしていないと潔白を断言する。その上で、すべての苦悩から解放されるために死刑を受けると言う。
第三場 処刑室の次の間。マリアの友人たちが彼女の残酷な運命を嘆いていると、黒い喪服を着たマリアがタルボに伴われて現れ、最後の祈りを捧げる。死刑執行を伝える第一の大砲の音が聞こえ、セシル卿が姿を現す。
マリアは今まさに死のうとしながらも、自分を死に追いやった女王を許すと言う(「今死のうとしているこの心が」)。レスター伯爵が現れ、マリアは彼と別れの二重唱を歌うと、第二の砲声が聞こえ、マリアは死刑台を静かに上がって行く。
そして安らかな気持ちで神のおそばに旅立つことを高らかに歌う。第三の砲声が聞こえ、人々は涙にくれる。
Reference Materials
初演
1834年10月18日 ナポリ・サンカルロ劇場
原作
フリードリヒ・シラー/「マリア・シュトゥアルト」
台本
ジュゼッペ・バルダーリ/イタリア語
演奏時間
第1幕34分、第2幕35分、第3幕62分(パターネ盤CDによる)
参考CD
●グルベローヴァ、バルツァ、アライサ、ダルテーニャ/パターネ指揮/ミュンヘン放送管、バイエルン放送唱(PH)
参考DVD
●レミージョ、ガナッシ、カレヤ/カルミナーティ指揮/ベルガモ・ドニゼッティ財団管、ロンバルディア州立歌劇場唱(Dyn)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
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