ランメルモールのルチア[全3幕] ドニゼッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Donizetti, Lucia di Lammermoor 1835
ランメルモールのルチア[全3幕] ドニゼッティ作曲

 
登場人物

ルチア(S) エドガルド・ディ・レーヴェンスウッド(T) エンリーコ・アシュトン(Br)  ライモンド(B) アルトゥーロ(T) アリーサ(Ms) ノルマンノ(T)

概説

 ドニゼッティの代表作であり、“狂乱の場”は数多くのプリマ・ドンナ・オペラの中でも、名歌手の声と技巧の聴かせどころとして多くの名ソプラノの名唱を生み出して来た。原作は1669年にスコットランドで実際に起こった事件を、場所と背景を変えて物語にしたものである。

第一幕

 第一場 レーヴェンスウッド城内。城主エンリーコの腹心の隊長ノルマンノが男たちと周囲を警戒していると、浮かぬ顔をしたエンリーコが現れる。彼は恭順を示すノルマンノに、落ち目の家運を立て直すためには仇敵エドガルドを討ち、妹ルチアを政略結婚させねばならないが、彼女がなかなか承諾しないので困っていると愚痴をこぼす。ルチアの家庭教師ライモンドが、母の死を悲しんでいる時に結婚の話でもあるまいと取りなす。だがノルマンノが、ルチアは以前猛牛に襲われた時に救ってくれた男に夢中で、しかもその男がエドガルドらしいと告げるので、エンリーコは激昂し(「酷で不吉な苛立ちが」)、取り巻きの人々もそれに同調する。
 第二場 城内の泉のある庭園。ルチアは今夜も恋人エドガルドを待ちながら、侍女アリーサに泉にまつわる不吉な昔話を語って聞かせる(「あたりは沈黙に閉ざされ」)。ルチアは自分の恋も昔話と同じような運命に終わるのではないかと不安になり、アリーサも恐ろしい恋は止めるように忠告する。そこにエドガルドが現れて、夜明けには迫害を避けて一時フランスに亡命すると告げ、出発前にエンリーコと仲直りするつもりだと言う。二人は両家の対立について語るが、エドガルドはルチアに妻としての永遠の誓いを求めて彼女に指輪をはめる。そして固く愛を確かめ合うと、名残り惜しそうに立ち去る。

第二幕


 第一場 城内のエンリーコの居間。エンリーコは政略結婚の花婿アルトゥーロが到着するというのに、ルチアが結婚を承諾しないのでいらいらしている。ノルマンノは、エドガルドの心変わりを伝える偽の手紙を用意してあるから大丈夫だと言って、アルトゥーロを迎えに出て行く。
 入れ違いに傷心のルチアが入って来る。エンリーコは優しくルチアに語りかけるが、ルチアは非情な兄を強くなじる。エンリーコは怒ってルチアに偽の手紙を示し、アルトゥーロと結婚するように迫って立ち去る。驚き悲しむルチアの前にライモンドが現れ、優しくルチアを慰めて、家を救うために兄の言う通りにした方が良いと説得するので、ルチアもしぶしぶアルトゥーロとの結婚を承諾する。
 第二場 城内の大広間。アルトゥーロを迎えた結婚の祝宴がにぎやかに開かれている。ライモンドとアリーサに支えられて出て来たルチアに、アルトゥーロは優しく言葉をかける。彼女はエンリーコに強制されて無意識のうちに結婚契約書に署名して、そのまま倒れかかる。
 その時、激しい物音とともに黒いマントに身を包んだエドガルドが姿を現すので、人々は恐れおののき、ルチアも気を失う。エンリーコは妹のルチアを犠牲にしたことを後悔し、怒るエドガルドも苦悩するルチアに心を動かされる。ルチアはあまりのことに死を願う(六重唱「邪魔をするのは誰だ」)。
 アルトゥーロやエンリーコたちが剣を抜き、エドガルドと決闘しようとした時、ライモンドが威厳ある声で皆をいさめ、エドガルドに結婚契約書を見せる。エドガルドに問いつめられたルチアが自分で署名したと答えるので、彼は彼女の指から指輪を引き抜いて床に投げ捨てる。剣を捨てたエドガルドは自分を殺せと叫ぶが、一同に追い立てられて立ち去る。

第三幕

 第一場 ウルフラグの古い塔の広間。外は激しい嵐が吹き荒れている。レーヴェンスウッド城から脱出したエドガルドが自分の城に戻って物思いに沈んでいると、後を追って来たエンリーコが現れる。二人は激しく言い争い、夜明け前にエドガルドの祖先の墓の前での決闘を約束する。(この場面は省略されることが多い)
 第二場 城内の大広間。結婚の祝宴がなおも続いているところに、ライモンドがよろめきながら入って来て、発狂したルチアが新床でアルトゥーロを刺し殺してしまったと告げる。
 そこに真っ赤な血で染まった白いナイトガウンを着たルチアが、手を血まみれにして姿を現す。彼女は髪の毛を振り乱し、血の気が失せた顔はまるで亡霊のようである。人々の哀れみの声に続いて、幻覚にとらわれたルチアはエドガルドとの過ぎ去った愛の日々の想い出にふけり、天上の神に祝福される自分たちを喜ぶ(狂乱の場「優しいささやきが…香炉はくゆり」)。
 エドガルドとの決闘を約束して戻って来たエンリーコは、彼女が発狂して花婿を殺したことを聞き、そのむごたらしさに驚いて深く後悔するので、ライモンドたちも涙をこらえ切れない。ルチアはなおも歌い続けて息絶える。エンリーコはライモンドに妹のことを頼み、ノルマンノの悪計を知って彼を立ち去らせる。(この最後のシーンは省略され、ルチアのアリアで終わることが多い)
 第三場 エドガルドの祖先の墓の前。ルチアの死をまだ知らないエドガルドがエンリーコとの決闘を待ちながら、はかないこの世との決別を望んでいる(「わが先祖の墓よ」)。その時、城内から出て来た人々の悲しげな行列からルチアの悲惨な事件を知る。
 間もなくルチアの死を告げる鐘の音が聞こえる。たまらなくなったエドガルドは、せめてひと目だけでもルチアに会いに行こうとするが、現れたライモンドから彼女が昇天したことを告げられる。エドガルドは愛するルチアと天国で結ばれようと言うと、人々の制止を振り切って自分の胸に短剣を刺して息を引き取る。ライモンドたちは神に許しを請う。



Reference Materials


初演

1833年12月26日 ミラノ・スカラ座

原作 
ヴィクトル・ユーゴー/「リュクレース・ボルジア」

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
プロローグ41分、第1幕38分、第2幕45分(ボニング盤CDによる)

参考CD
●サザーランド、ホーン、アラガル/ボニング指揮/ナショナル・フィル、ロンドン・オペラ唱(D)
●カバリエ、ヴァーレット、クラウス/ペルレア指揮/イタリアRCA管・唱(RCA)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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