ルクレツィア・ボルジア[プロローグと全2幕] ドニゼッティ作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > ルクレツィア・ボルジア[プロローグと全2幕] ドニゼッティ作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

詳解オペラ名作217もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Donizetti, Lucrezia Borgia 1833
ルクレツィア・ボルジア[プロローグと全2幕] ドニゼッティ作曲

 
登場人物

ルクレツィア・ボルジア(S) ドン・アルフォンソ(B) ジェンナーロ(T)  マッフィオ・オルシーニ(A) ルスティゲッロ(T) グベッタ(B) 他

概説

 ドニゼッティが劇的な手法を取り入れ、美しい旋律を駆使してロマンティックな傾向を強めていった時期の名作である。当時ミラノにはボルジア家の子孫が実在していたために初演には厳しい検閲があったが、初演以来上演ごとに改訂が加えられ、当時としては「ルチア」に次ぐ人気があった。

プロローグ

 ヴェネツィアにあるグリマーニ館のテラス。仮面舞踏会が開かれていて、戦勝祝賀会のために明日フェラーラに赴くヴェネツィア大使に随行することになっている隊長ジェンナーロたちが、フェラーラ大公妃ルクレツィア・ボルジアの噂話をしている。士官のオルシーニは、彼が瀕死の重傷を負ってジェンナーロに助けられた時、黒衣の老人が現れて、邪悪なルクレツィアは死ぬだろうと予言したことを話す(「リミニの戦いで」)。
 一同が立ち去り、ジェンナーロがそのまま居眠りしていると、ゴンドラに乗って仮面をつけたルクレツィアがやって来て、ジェンナーロの寝顔に見入り歌う(「何と美しい」)。目覚めた彼は彼女に自分の不思議な身の上話をするが、その話からルクレツィアは彼こそ自分の息子であることを悟る。その時オルシーニたちが現れて彼女の仮面を剥ぎ、この女こそ不道徳な大公妃ルクレツィアだと侮辱の言葉を浴びせるので、取り乱した彼女は逃げ去り、ジェンナーロは驚愕する。

第一幕

 第一場 フェラーラの町の広場。腹心を伴い忍びの姿で現れたフェラーラ大公ドン・アルフォンソ公爵は、妻ルクレツィアがジェンナーロと不倫の関係にあると信じ込んでいる。そこにジェンナーロが仲間の士官たちとやって来る。ジェンナーロは仲間にからかわれ、ボルジア家の家紋を剥ぎ取ってボルジア家を侮辱するので、大公の部下たちによって捕らえられる。
 第二場 フェラーラ大公の宮殿の一室。大公の腹心ルスティゲッロは、大公にジェンナーロを捕らえたことを報告する。何も事情を知らないルクレツィアは、ボルジア家の家紋を傷つけた犯人を厳罰に処するよう大公に求める。それが捕らえられたジェンナーロであることを悟ったルクレツィアは、慌てて彼の助命を乞う。
 ルクレツィアとジェンナーロの間を疑う大公は、ルクレツィアに彼の処刑方法の選択を選ばせるので、彼女は毒殺することを選ぶ。呼び出されたジェンナーロは特赦を告げられるが、それはかつて戦場で大公の父親を救ったことがあるためだと思い、その労をねぎらうためと称して出された毒薬を飲まされる。彼が毒を飲むのを確かめて立ち去った大公と入れ替わりにルクレツィアが現れ、解毒薬を渡す。ジェンナーロはこちらのほうが毒薬ではないかと疑うが、彼女の真剣な様子に薬を飲み、秘密の扉から逃げる。


第二幕


 第一場 ジェンナーロ家の中庭。ジェンナーロがまだ生きていると知った大公の手下たちが彼を殺そうと囁き合っている。オルシーニが現れて、ネグローニ公爵夫人の館で開かれる夜会にジェンナーロを誘うが、彼は宮廷での一件があったので逃げるつもりだと言う。しかしオルシーニの誘いを断り切れないジェンナーロは、気の進まないままに夜会に出かける。彼を追って来た大公の部下たちは、もう罠にかかったも同然と言って喜ぶ。
 第二場 ネグローニ館の大広間。華やかな夜会が開かれているが、酔客たちが喧嘩を始めるので淑女たちは去り、ジェンナーロ、オルシーニら六人のヴェネツィア士官たちのグループと、ルクレツィアの腹心の部下のグベッタだけになる。グベッタは酒杯をジェンナーロに勧める。グベッタが自分の杯だけをこぼすのを見たジェンナーロは危険を感じるが、オルシーニは気にもかけずに陽気にバラータを歌う(「酒の歌」)。
 その時不気味な音と鐘の音と共にルクレツィアが武装した兵士を連れて現れ、ヴェネツィアでオルシーニたちから受けた恥辱の返礼としてヴェネツィア人たちの酒には毒が盛られていて、死体を包む敷物五枚が用意されていることを告げる。するとジェンナーロが進み出て六枚必要だというので、ルクレツィアは彼がいることに気づいて慌て驚く。
 衛兵たちに他の五人を連れ去らせると、ルクレツィアは解毒剤を飲むように勧める。しかし解毒薬が一人分しか用意されていないのを知ったジェンナーロは、服薬を拒否して仲間と一緒に死ぬ道を選ぶ。そして短剣でルクレツィアを刺そうとするので、思いあまった彼女はジェンナーロに対して、お前もボルジア家の人間で、自分が母親であると明かすが(「聴いてああ!」)、時すでに遅くジェンナーロは息絶える。現れた大公に対して、ルクレツィアはカバレッタを歌ってその場に倒れる(「この若者は私の息子でした」)。



Reference Materials


初演

1833年12月26日 ミラノ・スカラ座

原作 
ヴィクトル・ユーゴー/「リュクレース・ボルジア」

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
プロローグ41分、第1幕38分、第2幕45分(ボニング盤CDによる)

参考CD
●サザーランド、ホーン、アラガル/ボニング指揮/ナショナル・フィル、ロンドン・オペラ唱(D)
●カバリエ、ヴァーレット、クラウス/ペルレア指揮/イタリアRCA管・唱(RCA)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE