泥棒かささぎ[全2幕] ロッシーニ作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Rossini, La Gazza Ladra 1817
泥棒かささぎ[全2幕] ロッシーニ作曲

 
登場人物

ニネッタ(S) ジャンネット(T) 代官(B) ピッポ(S) ルチア(Ms)  フェルナンド(B) ファブリッツィオ(B) イザッコ(T) エルネスト(B)他

概説

 このオペラの序曲は、威勢のいい小太鼓の連打によってロッシーニのオペラの序曲の中でも有名な曲のひとつとして知られているが、オペラの本体にも序曲の中の旋律が生かされた美しい作品である。
 オペラ・セリアを基本としながらも、ブッファ的な要素も取り入れられていて、オペラ・セミセリアとも呼ぶべき性格の作品になっている。

第一幕

 第一場 ナポレオン戦争時代の19世紀はじめ、ファブリッツィオ家の前庭。同家の息子ジャンネットが兵役を解かれて戻って来るので、村人たちが陽気に踊っている。召使のピッポは、自分の名前を呼ぶ声がするので振り返るが誰もいない。実はそれがカササギの鳴き声とわかって皆が大笑いをする。女主人ルチアが久々の息子の帰りを喜び、主人のファブリッツィオも酒倉から手にいっぱいの酒を持って出て来る。
 二人は息子の結婚相手を見つけようと言っていると、今度はカササギがニネッタと叫ぶのでルチアは顔をしかめる。実は最近大切な銀のフォークがなくなったので、ルチアは女中のニネッタを疑っている。ニネッタはジャンネットに好意を持っていて、恋人の帰りを待ちわびている(「心は喜びで踊っている」)。戻って来たジャンネットは彼女を抱きしめる(「さあこの腕の中で」)。
 祝宴が終わったあと、ニネッタの父親フェルナンドがやって来る。彼も長く兵役に服していたが、ニネッタに会いたいばかりに帰還許可をめぐって隊長と刃傷沙汰を起こし、軍法会議で死刑を宣告されたと言う。しかしここまで逃げのびて来たと言い、自分の持っている銀食器を売ってお金にしてほしいとニネッタに話す。そこに運悪く代官がやって来る。代官は眼鏡がないからと彼女に脱走兵の手配書を代読させるので、ニネッタは実際の手配書とは違う内容を読む。ところが代官はニネッタに言い寄るので、怒って物陰から出て来たフェルナンドは代官を非難する。
 ニネッタは通りかかった古道具屋イザッコに父親の銀食器を売るが、ファブリッツィオ夫妻は今日も銀食器がなくなったといって騒ぐ。それを聞いた代官は、ニネッタが脱走兵フェルナンドの娘であることを見抜き、家庭内の窃盗犯は死刑だと言う。たまたまカササギまでニネッタと鳴く。そこでジャンネットはイザッコを呼ぶ。彼は、ニネッタから買った銀食器はもう売ってしまった、そしてファブリッツィオ家と同じF・Vというイニシャルが入っていたと言うので、ジャンネットまでニネッタを疑う。彼女は引き立てられ、代官はほくそ笑む。

第二幕

 第一場 ニネッタが拘留されている代官の館の監獄。看守のアントニオが彼女に同情している。一度はニネッタを疑ったジャンネットだが、やはり彼女の無実を信じて面会にやって来て慰める(二重唱「いつの日かわかってくれるでしょう」)。代官が来るので彼は立ち去る。代官は自分の言う通りにするならば助けてあげようと言うので(「君のためなら愛する可愛い子ちゃん」)、ニネッタはそれならば死刑になったほうがよいと怒る。代官と入れ替わりにピッポがやって来るので、ニネッタは隠し持っていたお金をピッポに渡して、栗の木の下の穴にそっと置いてくれるよう最後の頼みをする。
 第二場 ファブリッツィオ家の一階の部屋。ルチアは一度はニネッタを疑ってみたものの、やはり彼女の身が心配になって考え直す。そこにその後娘から何の連絡も来ないことを心配したフェルナンドがやって来る。彼はルチアからニネッタの事情を知らされ、彼女が死刑になりそうだと聞いて驚き、娘を救おうと監獄に走る。
 第三場 代官の館の中の法廷。ジャンネット、ファブリッツィオをはじめ大勢が傍聴している中、裁判官がニネッタの罪状を読み上げて死刑の判決文を読み上げる。たまりかねたジャンネットが裁判官の前に進み出て、彼女には何か秘密があるに違いないと弁護するが、ニネッタは何も抗弁しない。そこにフェルナンドが駆け込んで来るのでニネッタは驚く。だがフェルナンドも脱走兵として逮捕され、別々に引き立てられて行く。  
 第四場 村の広場。フェルナンドの戦友エルネストが村を訪れ、国王がフェルナンドの恩赦に署名した文書を届ける。ピッポがポケットの有り金を数えていると、突然カササギが飛んで来て銀貨をくわえて教会の鐘楼の上に飛び去るので、ピッポはエルネストとその後を追いかける。
 ニネッタが兵士に引かれて死刑台へ連行されて行くので、一同は悲嘆にくれる。その時鐘楼に登ったピッポは、カササギが隠したスプーンやフォークなど数々の銀食器を発見して、大声で盗んだ犯人はカササギであることを告げる。ニネッタの無実は証明され、恩赦を受けたフェルナンドとの再会を喜ぶ。ニネッタは愛するジャンネットと晴れて結ばれ、皆はそれを祝福する。




Reference Materials


初演

1817年5月31日 ミラノ・スカラ座1817年5月31日 ミラノ・スカラ座

原作
T. B. ドービニー、ルイ・シャルル・ケーニエ共作の劇

台本
ジョヴァンニ・ゲラルディーニ/イタリア語

演奏時間
第1幕99分、第2幕93分(ジェルメッティ盤CDによる)

参考CD
●リッチャレッリ、マッテウッツィ、レイミー、フルラネット/ジェルメッティ指揮/RAIトリノ響、プラハ・フィル唱(SONY)
●シニョール、コンド、ボッタッツォ、ピッツォ、ロメロ/ゼッダ指揮/ロンドン・フィル、アンブロジアン・オペラ唱(WF)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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