ランスへの旅[1幕] ロッシーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Rossini, Il Viaggio a Reims 1825
ランスへの旅[1幕] ロッシーニ作曲

 
登場人物

コリンナ(S) メリベーア侯爵夫人(A) フォルヴィル伯爵夫人(S)  コルテーゼ夫人(S) 騎士ベルフィオーレ(T) リーベンスコフ伯爵(T) シドニー卿(B)  ドン・プロフォンド(B) トロンボノク男爵(B) ドン・アルヴァーロ(Br)  ドン・プルデンツィオ(B) マッダレーナ(Ms)他

概説

 フランス国王シャルル十世戴冠式の祝賀行事の一環として作曲されたオペラであり、ロッシーニがパリで活躍するスタートとなった記念作である。機会音楽であるこの作品は四回の公演によって目的を達した後楽譜が散逸してしまい、半分ほどは「オリー伯爵」に再利用された。
 その後各地の図書館から資料が発見され、ようやく1984年に至ってペーザロのロッシーニ・フェスティヴァルにおいて蘇演された。10人以上のソリスト級の歌手を必要とするために上演の機会は少ないが、近年作品に対する評価は高まっている。

第一幕

 時はフランス国王シャルル十世の戴冠式が行われる前日の1825年5月25日、場所はフランスの湯治場プロンビエールの「黄金の百合亭」という温泉宿。翌日ランスで行われる戴冠式に向かうため、ヨーロッパ各地から名士たちが集まっている。女中頭のマッダレーナは張り切って使用人たちにあれこれと指図をして、彼らの出発の準備を急がせている。
 宿泊客の健康を管理する医者ドン・プルデンツィオが登場して、彼らの健康状態は十分ではないが出発の許可は与えようと言い、宿の番頭アントニオが用意した食事を検査する。チロル出身の女将のコルテーゼ夫人は、宿泊客それぞれの好みの品物や話題をそろえて話を合わせるよう使用人たちに指示している(「うるわしい光に輝いて」)。彼女も戴冠式のあるランスに行きたいが、夫が留守なので見に行けないと残念がる。
 最初にやって来た客は、パリからのお洒落な未亡人フォルヴィル伯爵夫人である。続いて、従兄弟のドン・ルイジーノがやって来て、彼女の身の回りの品を積んだ馬車が転覆したと伝えるので、ショックのあまり嘆いて卒倒する(「私、出発したいのです」)。
 音楽好きのドイツ人トロンボノク男爵は、彼女が死んでしまったのかと思うが、医者が手当てをしているうちに息を吹き返す。そして小間使いのモデスティーナが、倒れた馬車から美しい帽子を持って来るので驚喜する。トロンボノク男爵はその愚かな様子に呆れる。
 続いて骨董品収集家のドン・プロフォンド、スペインの海軍提督ドン・アルヴァーロとポーランド生まれの若い未亡人メリベーア侯爵夫人がやって来る。続いて彼女に横恋慕するロシアの将軍リーベンスコフ伯爵も現れて、ドン・アルヴァーロに決闘を迫る。一方、女将は馬車の手配に気を取られていらいらしている。この時、ハープの音に導かれてローマの女流即興詩人コリンナが現れて歌うので、皆の心はなごむ(「やさしい竪琴よ」)。
 今度はイギリス軍人シドニー卿が現れる。密かにコリンナを愛する彼は、彼女の気を惹こうとして百合の花を捧げる(「ああ、なぜ彼女と知り合ってしまったのか」)。ドン・プロフォンドがしつこくシドニー卿に話しかけるので彼が立ち去ると、入れ替わりに若いフランス人騎士ベルフィオーレがやって来る。彼はフォルヴィル伯爵夫人という愛人がありながら厚かましくもコリンナに言い寄るので、驚いたコリンナは彼を軽蔑する。ベルフィオーレが彼女から振られたのを知ったドン・プロフォンドは満足して、人々を皮肉る。
 出発の時間が近づき、ドン・プロフォンドは宿の使用人の手を借りて皆の荷物の整理に取りかかる。フォルヴィル伯爵夫人がベルフィオーレを探しにやって来るので、ドン・プロフォンドは手を休めて、ベルフィオーレがコリンナと一緒にいると言うと、事の次第を知った彼女は腹を立てる。
 いよいよ出発準備も整ったところに、トロンボノク男爵とドン・ルイジーノが慌てた様子でやって来て、プロンビエールの馬はすべて予約済みで、馬車は一台も調達できないと伝える。思いがけない成り行きに一同は驚き慌てる。
 そこに女将が一通の手紙を持って現れる。その手紙はパリにいる夫からのもので、ドン・プロフォンドが読み上げる。それによると、ランスの戴冠式に来られなかった人々のために国王がすぐに帰還してパリでも華やかに行事が繰り広げられるということなので、フォルヴィル伯爵夫人は、パリの自分の家に皆を招待すると申し出る。一同のランス行きは取り止めになり、定期便の馬車でパリに行くことにする。それならランスに行くために用意していた費用を使って、「黄金の百合亭」で華やかな宴会を開こうということで意見が一致する。
 女将も大賛成で、マッダレーナや他の使用人たちに宴会の準備をさせる。メリベーア侯爵夫人をめぐるリーベンスコフ伯爵とドン・アルヴァーロのいさかいは、トロンボノク男爵のとりなしで丸く収まり、メリベーア侯爵夫人もリーベンスコフ伯爵を受け入れる(二重唱「汚れない炎に燃える」)。
 盛大な宴会が開かれ、トロンボノク男爵は乾杯の音頭に続いてドイツ讃歌を歌う。さらにメリベーア侯爵夫人がポーランドのポロネーズ、ドン・アルヴァーロはスペイン民謡など、お国自慢の歌が披露される。シドニー卿もトロンボノク男爵から歌を所望されるが、彼は一曲しか知らないと言ってイギリス国歌を歌う。ベルフィオーレとフォルヴィル伯爵夫人は二人でフランス民謡を、女将とドン・プロフォンドはチロル民謡を楽しそうに歌う。最後に即興詩を求められたコリンナは、皆から選ばれた主題「フランス国王、シャルル十世」を吟じ、全員で国王万歳を唱えてフランスの栄光をたたえる。



Reference Materials


初演

初演 1825年6月19日 イタリア劇場(パリ)初演 1825年6月19日 イタリア劇場(パリ)

台本
ルイージ・バロッキ/イタリア語

演奏時間
135分(アバド/ベルリン・フィル盤CDによる)

参考CD
●マクネアー、ヴァレンティーニ=テラーニ、セッラ、レイミー、ライモンディ/アバド指揮/ベルリン・フィル、ベルリン放送唱(SONY)
●ガスディア、ヴァレンティーニ=テラーニ、クベルリ、アライサ、レイミー/アバド指揮/ヨーロッパ室内管、プラハ・フィル唱(DG)

参考DVD
●ギゴラシヴィリ、キクナーゼ、ベリャーエワ、ウスペンスキー、シトーダ/ゲルギエフ指揮/マリインスキー劇場管・唱(DEN)
●メルセド、ラスマッセン、バーヨ、ブロス、ターヴァー/ロペス=コボス指揮/リセウ大劇場管・唱(DEN)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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